「テレビってつまんなくなったよなあ」。
もう何年も耳にする言葉だが、本当にそうだろうか? おもしろい番組は常にあって、ハッとするような発言もまだまだテレビの中にある。
TVerやABEMAやHuluなど、テレビ以外でバラエティ番組を観られる手段が増えた今、改めてテレビから聞こえてきた金言について考えていきたい。
連載「ぱいぱいでか美のテレビの金言」記念すべき第1回はこちら。
「山奥でひとりで暮らしたかった化け物」
『しくじり先生 俺みたいになるな!!』のスピンオフ的企画『しくじり学園 お笑い研究部』から。6月28日放送のゲストはオズワルド。
『M-1グランプリ』2年連続ファイナリスト、レギュラーラジオも4本と順風満帆に見えるオズワルド。しかしツッコミの伊藤(俊介)さんに比べて畠中(悠)さんの認知度が低過ぎる。
そんな悩みを解決すべく企画されたのが「オズワルド畠中を考える」だ。
確かに、いつのころからかオズワルドって当たり前におもしろくて、テレビに出ていたら無意識にチャンネルを合わせる存在ではあるものの、畠中さんが何者なのかは未だにわからない。
伊藤さんは、特徴的な声だとか、天才女優・伊藤沙莉さんの兄であるとか、元キャバクラのボーイだとか、少し考えるだけでいろんな要素が浮かんでくるのに。
「畠中」というワードを浮かべるときも、本人より先に伊藤さんの声で「はぁたぁなぁかぁ~!」が脳内で再生された。
番組独自に畠中さんの認知度を調査した結果「知らない」が97%……なぜか観ている私までショックを受ける数値を叩き出していた。
だって、あのオズワルドだよ? そんなことある?
予想を遥かに上回る数値に、出演者たちも皆「えーーー!?」と驚いている。
しかし今回のスーパー当事者、畠中さんはどうだろう。97%という数字を見ても「そうでしょうね」という顔をしているだけだ。甘んじて受け入れている。
普通の芸人ならここで少し立ち上がって「ちょっと! どこで統計取ってきたんですか!」くらいは大声で言いそうなもんである。
少しだけ笑みを浮かべてその場から少しも動かずグラフを眺める畠中さん。なんなんだマジで。
伊藤さん曰く、畠中さんには欲がない。それが一番いいところでありネックだ、と。
収録前に「やりたくねぇなぁ」と呟いていたり、芸人とは思えないようなレベルの人見知りだったり。「お前、こういうとこあるんだよな?」と言われて初めて「そうなんですよ」と答える畠中さん。
エピソードと共に徐々に見えてくる畠中悠という人間の輪郭。そんな畠中さんを伊藤さんはひと言でこう表した。
「山奥でひとりで暮らしたかった化け物」。
すべてが腑に落ちる例えだった。
そうか、畠中さんはわざわざ人里に降りてきて、私たちを笑わせてくれているのか。そう思うとなんだか愛おしいというか、ありがたい存在に思えてくる。
畠中さんという人を表すひと言ですら、伊藤さんから出てきているこの構図。いかに丁寧に保護しなければならないかがわかる。
山から降りてきた生き物は、未知で当たり前なのだ。畠中さんをまとう不思議な雰囲気は、山奥で暮らしていたからなのか。
オズワルド畠中が“魔人モード”になる瞬間
収録が進み、だいぶこの「しくじり学園」という人里に慣れてきたらしい。畠中さん自身から語られるエピソードも増えてきた。
「人見知りだけどナンパはできる。一瞬“魔人”を降ろせばいいだけだから」。
ナンパという行為の是非はさておき、淡々と語る様子を見る限り、人に声をかけるたびに魔人を降ろしている異常性にはまったく気づいていないようだ。
じゃあ、その魔人モードのまま暮らしていけば生きやすくなるのではないか?という当然の疑問をぶつけられると「自分が自分じゃいられなくなる」という恐ろしいひと言で返す。
畠中さんにとって魔人を扱うのはスイッチをオン・オフするような簡単なものではなく、もっと危険で繊細な儀式なのだ。
だから魔人はそう簡単に使えないし、使わせない。
しかしその根底には、ありのままの姿で生きていくための覚悟がある。時には魔人も降ろすけれど、山奥で暮らしていた化け物のまま生きていく覚悟だ。
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