遅く起きた日曜日に、近所の喫茶店に初めて行ってみる(スズキナオ)

2020.7.5

スズキナオ「遅く起きた日曜日に」第5回

文・写真=スズキナオ 編集=森山裕之


初の著書『深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと』が現在5刷のロングセラーとなり、 テレビ、雑誌、SNSなどでも話題の「チェアリング」の開祖としても知られるスズキナオさん。
「なんでもない日々を少しぐらいは楽しいものにする」アイデアを提案する、誰にもできる遅く起きた日曜日の楽しみ方。
「疲れた肝臓にはコーヒーがいい」「コーヒーを1日に最低でも5杯は飲みなさい」というウェブ記事を読み、「コーヒーの味はまったくわからない」が毎日コーヒーを飲み始める。コロナ騒動の日々で、自分の住む町の個人店のことが急に気になり出し、いつも酒場にばかり通っていたスズキナオが、「喫茶店にでも行ってみようか」と思いついた遅く起きた日曜日の朝――。

「コーヒーを1日に最低でも5杯は飲みなさい」

自堕落な生活を送っている自覚があるので、年に一度、健康診断に行くことにしている。しばらくして郵送されてくる結果を見ると、だいたいいつも肝臓に関する数値がよくなくて「よくないです。再検査してください」というようなことが書いてある。

改めて病院に行くと、診断結果の書類に目を通した医師に「酒を控えることですね」というようなことを言われる。これもいつものことである。「20代、30代のような生活をつづけることはできないんです。年齢に応じて体は変わっていくんです」と。体のどこかに穴が開いて、そこから空気が少しずつ漏れていくような心細い気持ちになって家に帰り、ネットで検索してみれば、だいたい怖いことばかり書いてある。

「このままいくとこんなに怖いことが起こりますよ」「油断していると手遅れになります。いや、もうすでに手遅れかもしれません」みたいな。よくも人をそんなに怯えさせるような言葉を書き連ねられるものだ。まあ、「気にしないで大丈夫! そんな数値関係ないから!」と書いてあるサイトがあったらそれはそれで信用しないけど。自分から怖がりたくて調べているようなところもある。

気持ちはすっかりくじけつつも、せめてもう少し前向きな情報はないかと探しつづけていると、「疲れた肝臓にはコーヒーがいい」と書いてあるサイトがいくつかあった。なかには「コーヒーを1日に最低でも5杯は飲みなさい」と提案するサイトまである。そんなに飲んだら今度は胃に悪いんじゃないか。

とにかく、「毎日ジョギングするべし」と言われてもできないが、コーヒーを飲むぐらいならそれほど苦ではない。早速その日からコーヒー三昧だ。味などわからぬまま「とにかくコーヒーならいいんだろう」と、苦い薬を飲む気分でインスタントコーヒーをすすっている。

そうやって急にコーヒーに親しみ出したからか、「喫茶店にでも行ってみようか」と考え始めた。これまでの自分の生活のなかに、喫茶店で過ごす時間はほとんどなかった。ひとりで店に入るならいつも居酒屋だ。「どうせ400円とか500円とかを一杯の飲み物に使うならコーヒーよりもアルコールだろ!」と思ってしまっていた。

ちょうど、ということもないが、コロナ騒動の日々で、自分の住む町の個人店のことが急に気になり出したところでもある。「外出自粛」「休業要請」といった言葉がこだまするなか、シャッターを閉め、そのままそこに閉店の知らせが貼られる店もある。近所を散歩して目に入る店がどこもそのうち閉まってしまうのではないかと不安になってくる。

これまで幾度となく目の前を歩きながら、一度も足を踏み入れたことのない近所の喫茶店へ行ってみよう。コーヒーを1杯飲んで、サッと出てこよう。そう思った。

コーヒーをグッと飲み切ってしまうと、もうすることがない

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スズキナオ

大阪在住のフリーライター。「デイリーポータルZ」「メシ通」等のWEBメディアで記事を書いている。酒とラーメンが好き。パリッコとの飲酒ユニット「酒の穴」としても活動中。著書に『深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと』(スタンド・ブックス)など。

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