舞台上で見せる洗練された美しいパフォーマンスに、バラエティで見せるチャーミングな立ち居振る舞い。鈴木愛理はその多面的な表情と表現で活躍の幅を広げている。10月23日公開の映画『昨夜は殺れたかも』では吉野北人とともにダブル主演を務め、二面性のある役として予測不能なラブサスペンスを演じきった。自分で道を切り拓き新しい挑戦を続ける彼女。その背景には自身のキャリアの「破壊」と「創造」の歴史があるという。
裏表なく生きてきちゃったもので……(笑)

──今回、鈴木さんが演じた藤堂咲奈は、若くして起業した敏腕社長でありながら、夫にはそのことを隠して専業主婦を演じているというトリッキーなキャラクターでしたね。最初にオファーを受けたときの心境はいかがでしたか?
鈴木 そうですね、まずは原作の小説がある題材だったので、映像化することによってどうおもしろく仕上がるのか楽しみな部分が大きかったです。最初は、役に対して戸惑いもありました。咲奈は帰国子女の設定ですが、アメリカ訛(なま)りの英語をかなりオーバーめに会話に挟み込むキャラクターで。台本を読んでいるときは「恥ずかしいかも……」と思って(笑)。でも英語の先生にも指導してもらいながらわかりやすく二面性を出すことができたので、演じていてすごく楽しい現場でしたね。見てくださる人が笑ってくれたらいいなと思って、コメディに振った演技をやりきりました。
──思わず笑ってしまう場面が多かったです。
鈴木 うれしいです! でも、欲をいえばもう一回やりたいと思うこともあります……。撮影の直後にロンドンへ1カ月間、ミュージカルの仕事で行っていたので、その後に撮影をしていたらもっと手振りとかをつけて見せられたなとか……。帰国直後はかなり海外に染まっていたので(笑)。でも、逆に海外へ行く前だったから演じられた部分もあったと思うので、楽しんでもらえたらうれしいですね。

──リアルな会話のシーンと振り切ったコメディのシーン、どちらも鈴木さんの魅力が炸裂していて、楽しそうに演じているのが画面から伝わってきました。演じ分ける上で難しさはなかったですか。
鈴木 とはいえひとりの人間としての軸はあるので、人格の演じ分けという意味ではあまり難しいと感じることはなかったかもしれません。専業主婦として家にいるときと社長として会社にいるときは衣装とメイクがまったく異なるので、それが自分の中のスイッチを切り替えてくれていました。
──咲奈に対して、自分と似ていると感じる部分はありましたか?
鈴木 うーん、どこですかね。私自身は裏表なく生きてきちゃったもので……(笑)。でも、キャリアウーマンとして働いている咲奈には、自分にもそういう瞬間ってあるなと思いました。パソコンと向き合ったりとか、机で事務作業をしたりする時間って私も意外と多くて。“仕事を愛している女”みたいなところは、深く考えずにできたと思います。
いつか死ぬとき、どういう最期を迎えられるか?
──裏表がないというお話でしたが、鈴木さんは舞台上で歌を歌っているときや役を演じているとき、別人格に切り替わるというよりは「自分自身の延長にある」という感覚なのでしょうか。
鈴木 お芝居に対してはいろんなアプローチの仕方があると思うんですけど、私の場合は自分の生きてきた人生の引き出しの中から、演じる役とすり合わせられるところを見つけて歩み寄っていくのが合っていると思っています。自分に引きつけて考えるというよりは、自分と共鳴するところを探して役を作ることが多いですね。だから、できるだけ豊かな人生を送って引き出しを増やすことをモットーにしていて。
──歌手、モデル、タレント、俳優など、ジャンルをまたいで今も新しいことに挑戦し続けていますね。
鈴木 ハロー!プロジェクトのアイドルを卒業したときに、映像作品の芝居を生業にしているOGの先輩やひとりで歌を歌い続けている先輩が少なくて。自分でレールを作っていくしかない、作っていこう、ってマネージャーさんと決めたんですよね。そうすると自分の足で仕事を取ってきたぞ!っていう実感もすごくあって、一つひとつのチャンスのありがたさを感じる場面が増えたなって思います。

──そうした新たな挑戦によって、自分自身が変わり続けることも肯定しているような印象を受けます。
鈴木 そうですね。これで自分は完成したと思ってしまうと、そこで本当に終わってしまうと思うんです。人間って、死ぬときにどういうふうに最期を迎えられるかが重要なのかなと思っていて。病気を持っていたとしても、健康であったとしてもきっと人は変わり続ける。その限界を自分で決めたくないなって思います。
この世界にい続けることには安心感がありながら、やっぱり自分は好奇心旺盛なので、海外にふらっと行ってみたりとか、知らない世界に飛び込みたいっていう感情がたまに出てきます。変わりたいというより、変化を恐れたくない。時には壊すぐらいの勢いで、破壊と創造を繰り返して今まで生きてきたと思っているので。
──「破壊」もしてきたんですね。
鈴木 こっそり壊しています(笑)。それこそ℃-uteを解散したときは、大学卒業のタイミングでもあったので、自分として誇れるものをすべて失ってしまったなと思いました。今までで一番大きな破壊ですね。でもその破壊は、自分自身を粉々にするというよりは、外側の分厚い壁を壊して外に出るみたいな感じで。逆マトリョーシカみたいな……?
どんどん大きくなっていくために壊しているので、自分的にはすごくポジティブに受け取っているんです。人生、もうちょっとおもしろいことをやりたいなと思うときに、自分の生活の流れを変えてみたりすることはよくありますね。
──今、新たに挑戦したいと思っていることはありますか?
鈴木 俳優としてはまだまだ経験が足りないので、もっといろんな作品に出てみたいなと思います。2026年は映画の単独主演も経験させていただきましたが、『冬のなんかさ、春のなんかね』(日本テレビ)や『クロスロード』(テレビ朝日)といったドラマでゲスト出演をさせてもらう機会があって。いろんな現場で俳優さんとお芝居させてもらうことに重きを置いていた年だったので、新しく得るものがありました。
あと、自分が一番好きなラインの、キラキラ王道ラブストーリーのヒロインとかをまだ演じたことがないんですよ! そういうド直球な芝居にも挑戦したいです。一度母親役と教師役を経験してしまったので、学生役はコスプレになっちゃうかな……。でもまだまだやってみたいですし、想像できない範疇(はんちゅう)に自分にとってのチャンスが眠っているかなといつも思っているので、そのチャンスをつかみ取れるように、常に心身ともに健康でいたいなって思います。

鈴木愛理
(すずき・あいり)8歳のときに約3万名の応募からハロー!プロジェクト・キッズに選ばれ、2003年にハロー!プロジェクト内のユニット「あぁ!」のメンバーとしてCDデビュー。その後アイドルグループ「℃-ute(キュート)」やユニット「Buono!」として活動し、2017年にハロー!プロジェクトを卒業。現在はソロヴォーカリストとして公演を行うほか、俳優業、MC業など多岐にわたって活動の場を広げている
映画『昨夜は殺れたかも』出演情報

ハロウィンの夜、運命的な出会いを果たした光弘(吉野北人)と咲奈(鈴木愛理)。永遠の愛を誓い、晴れて夫婦となったふたり。しかし、その幸せな新婚生活の裏には、互いにけっして明かせない“秘密”を抱えていた──
映画『昨夜は殺れたかも』
公開:10⽉23⽇(⾦)公開
原作:藤⽯波⽮・辻堂ゆめ『昨夜は殺れたかも』(講談社タイガ)
監督:松⽊ 創
脚本:ブラジリィー・アン・⼭⽥
出演:吉野北⼈、鈴⽊愛理、⼯藤阿須加、王林、佐津川愛美、ISSEI、⽥中美久、オラキオ、河本準⼀(次⻑課⻑)、菅⽥俊、本宮泰⾵
配給:ポニーキャニオン
(C)2026 映画『昨夜は殺れたかも』製作委員会
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