【俳優・日穏(STARGLOW)論】ゆっくり歩き、ゆったり考えること

2026.6.24
【日穏(STARGLOW)俳優論】ゆっくり歩き、ゆったり考えること

ヘアメイク=伊澤明日花(MASTER LIGHTS) スタイリスト=佐久間歩夢

文=相田冬二 撮影=野口花梨 編集=森田真規


桜井日奈子とともに日穏(カノン/KANON)が主演を務める映画『死神バーバー』(6月26日(金)公開)。

その公開を記念して、2026年6月24日発売の『Quick Japan』vol.184で“俳優・日穏”の現在地を多角的に映し出す12ページ特集「ただひとり、きみに届く。」を実施。SPECIAL EDITION 日穏(STARGLOW)特別カバー版として、表紙&バックカバーを飾った。

ここでは本誌の特集に掲載した「俳優・日穏論」を、本誌未掲載の撮り下ろし写真とともに特別にお届けする。

【QJストア限定】『Quick Japan』vol.184 SPECIAL EDITION 日穏(STARGLOW)特別カバー版

この死神は時々、奇妙なステップを踏む

日穏は、私たちのソウルメイトである。

映画『死神バーバー』は、彼が「アサー!」と死者に呼びかけるところから始まる。死者は目覚め、美容室で髪を整え(頭髪のない者はヒゲを剃るなどして)もう一度だけ逢いたい人に逢いに行く。死神は死者の現世への未練を少しだけ緩和する役割を担っている。日穏が演じる死神は1020歳だが、死神界ではまだまだ下っ端で、割り切って仕事ができているようには思えない。

この死神は時々、奇妙なステップを踏む。それは職務に対する想いのズレ(これは人間が日々抱えているものと同質なのではないだろうか)をどうにか整えるためのサプリのような行為にも思えるし、生まじめな者が己を鼓舞するための儀式的なポーズにも映る。いずれにせよ、短いダンスによって死神は自身の行く末にリズムを刻んでいる。

日穏、本誌未掲載のアザーカット
日穏、本誌未掲載のアザーカット

観る者に余白を与える芝居

思慮と歩行。日穏の俳優としての才能は、特にこの2点に顕(あらわ)れている。歩きながら考える。私たちにも身に覚えのあることを、日穏はその演技表現によってすこやかに体感させてくれる。ままならない日常を少しでも上向きにするためにはどうしたらよいか。

映画の中の日穏を見ていると、彼も一緒に考えてくれているような錯覚に陥る。日穏の芝居は、観る者に余白を与える。静かで優しい余地がある。彼が付与するものは、ささやかだが贅沢な潤いだ。

日穏、本誌未掲載のアザーカット
日穏、本誌未掲載のアザーカット

死神は物事をデジタルに考えているようだ。だから、死者たちの最期の旅に同行するとき、人間たちが本音だけでは生きられていない有様を目の当たりにして、感じた疑問をストレートにぶつける。そして、それに対する返答をその都度、咀嚼(そしゃく)して考え込むのだ。

日穏が沈思黙考する姿は本当に美しく、映画も立ち止まるし、私たちも立ち止まる。かけがえのない時間。たとえば、それはAIに何か尋ねて答えを待っているときにも似ているし、猫や犬など人間の言葉を解しているのかいないのかわからない家族にそれでも愚痴やら何やらを語りかけたときにも似ている。

日穏、本誌未掲載のアザーカット
日穏、本誌未掲載のアザーカット

考えるということが、これほどまでに豊穣な一瞬であった真実に遭遇し、たじろぎながらも感動してしまう。そのような瞬間が『死神バーバー』には無数に埋め込まれている。日穏の沈黙を見つめていると、大切な友達に答えの出ない相談をしているような気持ちにもなる。

日穏は前作『代々木ジョニーの憂鬱な放課後』でも、歩くことと考えることの尊いリレーションシップを、観客の乾いた皮膚に水分が浸透するように体現していた。ゆっくり歩き、ゆったり考えることが、私たちには必要なのだ。

今日という“日”に近づき、“穏”やかに伝えてくれる日穏は、すぐそばにいるメッセンジャーであり、此処ではない何処かにいるソウルメイトなのである。

日穏、本誌未掲載のアザーカット
日穏、本誌未掲載のアザーカット

『Quick Japan』vol.184 SPECIAL EDITION 日穏(STARGLOW)特別カバー版

『Quick Japan』vol.184 SPECIAL EDITION 日穏(STARGLOW)特別カバー版
『Quick Japan』vol.184 SPECIAL EDITION 日穏(STARGLOW)特別カバー版 表紙/撮影=野口花梨
『Quick Japan』vol.184 掲載、「ただひとり、きみに届く。」特集トビラ
『Quick Japan』vol.184 日穏(STARGLOW)特集トビラ

『Quick Japan』vol.184 SPECIAL EDITION 日穏(STARGLOW)特別カバー版
2026年6月24日(水)発売 
サイズ:A5/並製/144ページ
価格:1,650円(税込)
※内容は予告なく変更する場合があります

【QJストア限定】『Quick Japan』vol.184 SPECIAL EDITION 日穏(STARGLOW)特別カバー版

映画『死神バーバー』

映画『死神バーバー』ポスタービジュアル (C)『死神バーバー』製作委員会

公開:2026年6月26日(金)より、新宿武蔵野館ほか全国順次公開
監督:いまおかしんじ
原案:梅木陽一
脚本:谷口恒平
主題歌:Furui Riho「太陽になれたら」(LOA MUSIC/PONY CANYON)
出演:桜井日奈子、日穏、岡部大、平井亜門、猪塚健太、工藤遥、宇野祥平、美保純
配給・宣伝:SPOTTED PRODUCTIONS
公式HP:https://shinigami-bb.com/
(C)『死神バーバー』製作委員会


STARGLOW

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BE:FIRST(ビーファースト)、MAZZEL(マーゼル)に次ぐ3つ目のボーイズグループとして、SKY-HIが主宰するマネジメント/レーベル「BMSG」から誕生した5人組ダンス&ボーカルグループ「STARGLOW(スターグロウ)」。 2025年9月19日、オーディションプログラム『THE LAST PIECE(ラストピース/通称:ラスピ)』の最終回で発表されたSTARGLOWのメンバーは、RUI(ルイ)、TAIKI(タイキ)、KANON(カノン)、GOICHI(ゴイチ)、ADAM(アダム)の5名。同日がSTARGLOWの結成日となった。
2025年9月22日、プレデビュー曲「Moonchaser」でプレデビューを果たした。

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相田冬二

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相田冬二

(あいだ・とうじ)ライター、ノベライザー、映画批評家。2020年4月30日、Zoomトークイベント『相田冬二、映画×俳優を語る。』をスタート。国内の稀有な演じ手を毎回ひとりずつ取り上げ、縦横無尽に語っている。ジャズ的な即興による言葉のセッションは6時間以上に及ぶことも。2020年10月、著作『舞台上..