押田岳「横浜流星くんも中村隼人くんも、かっこいいお兄ちゃん」舞台『巌流島』で知った“作品作り”の本質

2026.8.31

文=於 ありさ 撮影=野口花梨 編集=高橋千里


ジュノンボーイ、仮面ライダー、そして主演作──。華々しいキャリアの裏で、俳優・押田岳はずっと“自分の足りなさ”と向き合ってきた。

2016年、第29回『ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト』でグランプリを獲得。『仮面ライダージオウ』(テレビ朝日)の仮面ライダーゲイツ役で大きな注目を集め、その後も映像・舞台を問わず幅広く活躍してきた。2026年9月にはBLドラマ『お前のほうからキスしてくれよ』(FOD、フジテレビCX関東ローカル)で主演を務める。

今年でデビュー10周年を迎え、20代最後の1年を過ごす押田。“王道ルート”を歩んでいるようにも映るが、本人は「登竜門のところで止まってしまっている」と本音を口にする。

転機となった出演作を振り返る全4回のインタビューを通して、押田岳の胸の内に迫る。

舞台『巌流島』で学んだ、みんなで作品を作る楽しさ

──前回の『仮面ライダージオウ』の話に続いて、今回は2023年に出演された舞台『巌流島』についてお聞かせください。どんな思い出がありますか?

押田 観客キャパ1500人規模の舞台に出たのは初めてだったので、すごく思い出に残っている作品のひとつです。主演が横浜流星くんと中村隼人くん、演出家が堤幸彦さん。最前線を走っているふたりと共演し、僕が子供のころから夢中になっていたドラマ・映画作品の監督に演出をつけていただけるということで、オファーをいただいたときは「やります」って即答でした。

プレッシャーはもちろんありましたけど、やるしかないので強気で臨みました。でも、楽しみのほうが大きかったかな。稽古が始まってみたら、スタッフさんもキャストさんもみんないい方で、どんどん楽しくなっていって。「あ、これが作品を作るってことか」ということも学びましたね。

押田岳(おしだ・がく)1997年4月9日生まれ、神奈川県出身。『仮面ライダージオウ』ゲイツ役、舞台『巌流島』捨吉役、『コスメティック・プレイラバー』(フジテレビ)佐橋天真役、『グラぱらっ!』(ABCテレビ)隅田忍役、『お前のほうからキスしてくれよ』神田役など

──作品を作ることも学んだ、というのはどういうことでしょう?

押田 それまでの僕は、“演者”という意識が強かったんです。ファンがいるのは自分がカッコいいからで、観てくれる人がいて、使ってくれる人がいて……。とにかく自分のことを見てほしいし、そうあらなければいけないと思っていました。もっというと、20代前半なのにスタッフのみなさんから「押田さん」って呼ばれるから、気をつけてはいたけど「“押田さん”って呼ばれるんだ」ってちょっといい気になっていたんです。

でも、この作品をきっかけに、自分の仕事は作品作りの一部なんだと気づきました。演出部が作り込みをしてくれて、撮影部が僕らの芝居をカメラで押さえてくれて、照明部がカッコよく見えるように照らしてくれて……。ちゃんと人間として“仕事をする”というイメージで作品に臨めるようになったんです。

けっして誰かがすごいからというわけではなく、みんなが素晴らしい仕事をするからこうやって素敵な作品ができるんだなって、それまでの自分を反省して考えを改めました。

中村隼人の演技を目の当たりにして「“見せる”ってこういうことか」

──それまでは映像作品のほうが多かったかと思いますが、舞台ならではの学びもありましたか?

押田 そうですね、映像と舞台の違いを教えていただきました。本当に初歩的なところですが、声の飛ばし方とか、面(つら)の構え方とかを聞くことで、映像のほうにも活かすことができるようになりましたね。

それまでの僕は、セリフを相手に向けてぶつけるというよりも、うまく聞こえるようなトーンでしゃべり続けてしまっていたので、そこはうまく使い分けないとちゃんと伝わらないんだなと。

舞台は、相手にぶつけるのにプラスして、お客さんのほうにも向けることを考えなきゃいけない。そういう初歩の初歩、芝居をやっていくにあたって大事な技術を教わった作品でした。

──押田さんは捨吉(すてきち)役を演じました。宮本武蔵に憧れる百姓のキャラクターでしたが、役作りに関してはいかがでしたか?

押田 僕は役作りですぐ悩んじゃうタイプだったんですけど、共演者の山口馬木也さんに相談したら、「役作りって、自分で作ることも大事なんだけど、大部分はほかの役との関係性で成り立っていくものだから、そんなに深く受け止めすぎないほうがいい。自分で作り込みすぎても変なバランスになっちゃうから、ちゃんと相手と会話しな」と言ってもらえて。今でも支えになっている言葉のひとつですね。

まだまだよけいなことをしちゃいそうになるんですけど、そのたびに馬木也さんの言葉を思い出して「もっとフラットでいい」って自分に言い聞かせるようにしています。それから、中村隼人くんがやっぱりすごかった!

──どんなところがすごかったのでしょう?

押田 初めて歌舞伎役者さんと共演したんですけど、最初に隼人くんの演技を見たときは自分の中で違和感があったんです。でも、舞台に立つときの見せ方を知っているし、角度も完璧で、声も通るし、「“見せる”ってこういうことか」と学びました。

それに人間性もすごくかっこよくて、観客の目線に立って演技をすることを教えてくれたのは隼人くんですね。流星くんも隼人くんも、かっこいいお兄ちゃんです。

次回は、2025年に出演したドラマ『グラぱらっ!』を振り返ります。9月公開予定!

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於 ありさ

(おき・ありさ)ライター・インタビュアー。金融機関、編プロでの勤務を経て2018年よりフリーランスに。サンリオ・男性アイドル・テレビ・ラジオ・お笑い・サッカーが好き。マイメロディや推しに囲まれて暮らしている。