4月20日(月)スタートのドラマ『銀河の一票』(カンテレ・フジテレビ系)で、10クール連続でドラマ出演。さらに『箱の中の羊』等出演映画も多数控え、ますます俳優としての存在を確かなものにしている野呂佳代。なぜ今、野呂はこれほど求められているのか。
4月14日に発売された『Quick Japan』vol.183では、「私はわりと間違える」と題して特集を実施。ここでは、2023年公開の『怪物』に続いて、最新作『箱の中の羊』でも野呂を起用した是枝裕和監督のインタビューを掲載。多くの実力派俳優たちの演技を見てきた是枝監督が思う、野呂佳代の俳優としての魅力。
是枝裕和
(これえだ・ひろかず)映画監督。1995年に『幻の光』で監督デビュー。『誰も知らない』、『そして父になる』、『万引き家族』等を世に送り出す
求めている役者の能力を持っている
映画『怪物』で演じてもらったのは、安藤サクラさん演じる主人公・麦野里織のママ友役でしたね。冒頭に、サクラさんが働くクリーニング店へ野呂さんがやってくる場面がありましたが、そこでの芝居を見てひと目で魅了されたのを覚えています。洋服を袋から出して汚れやシミとかを気にしながら、大事な会話とどうでもいい会話を両方まぶしながら演じてくれた。
脚本には書いてなかったんだけど、直前で子供服のポケットの中にティッシュとかいろんなものを入れてたんですよ。それに対してもとても自然に言及しながら、そしてサクラさんのお芝居もちゃんと受けながらセリフを発していて。その場での急な要望に臨機応変に対応するのって、中には嫌がる人もいるんですよ。でも野呂さんは芝居の間にちょっとしたひと言を吹き込んでくれるから、僕としてはとてもうれしいんですよね。運動神経のいい芝居をするなと。
実はこの役のキャスティングはけっこう難航してたんです。キャラクター的に普通の女優さんじゃない方にお願いしたいという流れで、バラエティ番組で観ていた野呂さんに白羽の矢が立った。お芝居をできるかどうかは実際に見てみないとわからないものですが、じゅうぶんに期待に応えてくれたし、なによりも「芝居をもっと上手になりたい」と彼女が真摯に口にしていたのがいいなと思いました。謙虚で、向上心があって、スタッフと一丸となって映画を作ろうとする意識があるから、現場にいてとても気持ちいい人なんですよね。
『箱の中の羊』で演じてもらった羽野佳澄という役に関しては、もう完全に野呂さんへの当て書きです。夫役の東京03・角田晃広さんとの相性やかけ合いを意識しながら脚本を書きました。この映画の少し重たいストーリーの中で、この夫婦が出てくるとふっと息が抜けるようなシーンになっていると思います。

野呂さんの魅力は、脚本に書かれたことを「書かれたもの」として言わないのがうまいということ。「今思いついた」かのように言えるし、実際に今思いついて言ってることも時々あるんですよ。それは僕が求めている役者の能力でもあって。
たとえば、この夫婦が新しい家を建てようと、主人公で建築家役の綾瀬はるかさんと相談するシーンがある。そこで角田さんが、「母が病気になって……」っていう話をいきなり始めるんです。母と同居することになるから、新しい家には和室が欲しいという彼の思惑があるんですが、その話を始めた瞬間に野呂さんが、また始まった……っていう感じでふと意識を逸らして家の模型に目を向けるんです。一瞬の芝居なんですけど、それだけで彼女の気持ちがわかるような気がして、素晴らしかったですね。
そうした目の動きとかって脚本には書いてないんだけど、「家を建てるときに、夫は今まで生きてきた人生の集大成として向き合おうとする、要するに過去を見ていて、妻は子供が大きくなったら何が必要かとか未来を見て間取りを考えてるから思惑がずれてくる」といった話は事前にしていた。その話を聞いたときの解釈が早いし的確だから、そんなに出番が多いわけではないけどワンシーンでこの夫婦に対しての想像がふくらむように演じることができているんです。

脇にいる存在でも、ある役割のセリフを言って消えるような消費のされ方をしない。セリフとセリフの隙間に放り込んでくる感じはYOUさんなんかにとても似てると思います。目の前にいる役者の芝居が脚本とは違う方向に変わったときに自分も変えて一緒に作っていく意識があるし、それにスキルが伴っている。樹木希林さんがいたら、野呂さんのことはすごく気に入るだろうな。だんだんと僕の映画に出てもらう時間が増えていますが、ハマる役があれば野呂さんでまた脚本を書けるとうれしいですね。
映画『箱の中の羊』
5月29日(金)全国ロードショー
監督・脚本・編集:是枝裕和
出演:綾瀬はるか、大悟(千鳥)、桒木里夢、清野菜名、寛一郎、柊木陽太、角田晃広、野呂佳代、星野真里、中島歩、余貴美子、田中泯
音楽:坂東祐大
製作:フジテレビジョン、ギャガ、東宝、AOI Pro.
製作プロダクション:AOI Pro.
配給:東宝 ギャガ
(C)2026フジテレビジョン・ギャガ・東宝・AOI Pro.
野呂佳代が『Quick Japan』vol.183のバックカバー&特集に登場!

特集では本人の言葉だけでなく、野呂と作品を作ってきたスタッフ陣にもインタビューを実施。『銀河の一票』プロデューサーの佐野亜裕美や、『ゴッドタン』(テレビ東京)プロデューサーの佐久間宣行、2023年公開の映画『怪物』で監督を務めた是枝裕和らが「野呂佳代と働きたくなる理由」を語る。
『Quick Japan』vol.183は、全国の書店やネット書店、太田出版のECサイト「QJストア」などで予約受付中。なお、本号は甲斐田晴 ver./ローレン・イロアス ver./3SKM ver.の3種類を同時発売。各バージョン約40ページの巻頭特集を収録しており、表紙と巻頭特集のみ各バージョンで異なる(それ以外のページは共通内容)。
野呂佳代の特集はすべてのバージョンに収録されているが、バックカバーは「甲斐田晴 ver.」のみの掲載となる。
『Quick Japan』vol.183(甲斐田晴 表紙&特集ver.)
発売中
サイズ:A5/並製/144ページ
価格:1,650円(税込)
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