花澤香菜が明かす“仕事人としての心得”「誰も想像しない選択肢を提示できるように」

一見普通の女子高生で、正体は殺し屋。普段はズボラだけど、仕事だけはきっちりこなす。2025年4月から放送がスタートしたアニメ『忍者と殺し屋のふたりぐらし』で花澤香菜が演じる主人公のひとりは、そんな“仕事人”。
同作で主題歌「やれんの?エンドレス」も担当している花澤に、“仕事”について話してもらったインタビューをお届けする。
花澤香菜
(はなざわ・かな)東京都出身。声優、歌手。主な出演作に『鬼滅の刃』甘露寺蜜璃役、『五等分の花嫁』中野一花役など
目次
お仕事もの要素をピックアップした主題歌
──シングル『やれんの?エンドレス』は、古賀このは役として出演されるアニメ『忍者と殺し屋のふたりぐらし』(以下、『にんころ』)のオープニング主題歌が表題曲となっています。そもそも花澤さんはキャラクター名義で歌われる主題歌とご自身の名義で歌われる主題歌とでは、取り組む上で意識の違いはありますか?
花澤 キャラソンだと、「このキャラクターならどう思うかな、どう歌うかな」と気持ちを考えながら歌うことが多いです。対して自分の曲の場合は、自分の経験やこういう表現をしたいなという欲をそのまま表すようにしているので、取り組み方は異なる気がしますね。なので「やれんの?エンドレス」は声優としての出演作の主題歌ではありますけど、『にんころ』という作品のお仕事もの要素をピックアップして、自分の経験とともに歌っています。まあ、単体で聴いたら「葉っぱ」ってなんだろうとか疑問が出てきたり、不穏さを感じたりするかもしれないんですけど(笑)。
──たしかに(笑)。とはいえ、「やれんの?エンドレス」は花澤さんの仕事観もかなり乗っかった曲になっていると。
花澤 そうですね。『にんころ』だと、このはちゃんは殺し屋、(草隠)さとこちゃんは忍者として仕事をしているわけですけど、淡々と物事をこなして、自分の中では仕事をエンタテインメントとして前のめりに取り組んでいる……そんなところを自分と重ねながら歌っていきました。個人的には、これまで自分名義ではジャジーな楽曲が多かったこともあって、ここまでテンションを上げて歌える楽曲が楽しい!という思いもありましたね。
作詞ケンモチヒデフミ、作曲TAKU INOUEという布陣の理由
──「やれんの?エンドレス」は作詞がケンモチヒデフミさん、作曲がTAKU INOUEさん。「テンションを上げて歌える楽曲」というのも、この布陣だからこそといいますか。
花澤 もともと新曲は『にんころ』の主題歌になると決まっていたのですが、原作を拝読したとき、とにかくヘンテコなギャグ感に病みつきになったんです。そのヘンテコさをストレートに曲へアウトプットできる人がいいなと考えたとき、おふたりの名前が浮かんだんですよね。
ケンモチさんは水曜日のカンパネラさんやanoちゃんの楽曲のように、言葉遊びもしながら物語性もある素晴らしい歌詞を上げてくださる方。今回も「ほら こっそり すっかり ちゃっかり」「同情してよ 道場破り」と、歌っていて楽しいフレーズがいっぱい上がってきて、思わず引き込まれてしまいました。
INOUEさんはどの曲も一回聴いたら頭にめちゃくちゃ残ってしまう、独特のリズムが素晴らしくてご依頼したのですが……自分がいざ歌ってみる側になるととても難しい! 息継ぎが難しくて、レコーディングではとても苦しみました(笑)。
──これまで数々の“電波ソング”をキャラクター名義で歌ってきた、花澤さんでも大変だったのですね。
花澤 電波ソングだと勢いやセリフのように読むかたちで乗りきれるんですけど、今回はそういうノリが求められている楽曲でもないので(笑)。それだけに「やれんの?エンドレス」は、自分名義の楽曲の中でも新鮮な一曲になりました。特に2番の「はじめはいいが 行き当たりばったり」の部分は「Yeah! めっちゃホリディ」の混沌なパートを思い浮かべながらレコーディングに臨んだので(笑)、ぜひそこは注目して聴いていただきたいですね。
──一方、カップリング曲の「クレマティスをあなたに」は作詞が宮川弾さん、作曲・編曲が北川勝利さんと、花澤さんの楽曲ではおなじみの布陣ですね。
花澤 Zeppツアーをやりながら、北川さんがずっと「やれんの?エンドレス」のカップリングはどんな曲がいいのか悩んでくださって。ツアーではさまざまな出会いがあったのですが、そこから新たに歩き出すイメージと、ライブの締めに歌える明るい楽曲にしたい私の想いが組み合わさって、これだ!と北川さんが作ってくださったのが「クレマティスをあなたに」でした。
そんな経緯だったので、どうしてもレコーディングではライブを見据えてどう歌おうか悩んでしまいましたね。宮川さんの歌詞もその経緯を踏まえてくださっていて、みんなとの思い出を大切にしまいつつ新たな道へ進んでいく……私の活動をずっと支えてくださっていたからこそ書いていただけた内容だなと感じました。

シャフトとベストマッチングな『にんころ』
──そんな「やれんの?エンドレス」がオープニング主題歌になっている『にんころ』についてもお伺いします。これまで『〈物語〉シリーズ』をはじめ、さまざまな作品で出演されている制作スタジオ「シャフト」の新作ですが、花澤さんはどのような印象を受けましたか?
花澤 このギャグ感をアニメにできるのはシャフトさんしかいない!と思うくらい、ベストマッチングだなって。さとこちゃんの突拍子もない行動やこのはちゃんの鋭すぎるツッコミが本当におもしろくて、どんどん先が気になる作品になっていると思います。
──花澤さんがギャグアニメに出られるときは、かなり突き抜けたお芝居をされている印象があるので、放送が今から楽しみです。
花澤 自分もギャグ作品に出演するのはとても楽しいので、この作品も思いきって演じることができました。あと『にんころ』にはいろんな刺客が出てくるんですけど、彼女たちを演じるキャストがとても豪華なので、そこにも注目してほしいですね。それになんといっても『にんころ』の軸は、このはちゃんとさとこちゃんの関係性です。ふたりがいろんなキャラクターに掻き乱される様子をぜひお楽しみに!
声優仕事で真っ先に思い出す『ゼーガペイン』
──“仕事”をテーマにした『にんころ』の内容にちなんで、花澤さんが声優のお仕事で手応えを感じた作品を教えていただけますか?
花澤 『PSYCHO-PASS サイコパス』かな。役柄的にも新人でしたし、共演者も先輩ばかりでしたので。二重の意味で、未熟ながらも自分で考えて行動していく必要があるという刺激的な現場でした。物語も凄惨な内容だったので、台本を読んで心が持っていかれて……。そこで先輩のお芝居を受けて、どう自分が返していくのか。あの収録期間はとても考えることが多くて、充実していたなと思います。ただ、自分の仕事を振り返ったとき、真っ先に思い出すのは『ゼーガペイン』という作品で……。
──花澤さんが初めてヒロインを務められた作品ですね。
花澤 『ゼーガペイン』の前には、『LAST EXILE』という作品で子役が体験するようなかたちで声優を務めたことがありました。でも、『ゼーガペイン』はそういうわけにもいかず、どうにかスタッフのみなさんに助けていただきながら演じきった印象が強いです。そのときはもう、声優をずっとやっていけるなんて微塵も思っていなかったんですよ。
ようやく「あ、自分って声優ができるんだ」とか思えるようになったのは、『化物語』に出演したときでした。西尾維新先生の独特な言い回しをたくさんしゃべったことで、ちょっと自信がついたというか。
『ゼーガペイン』から『化物語』までが3年、そこから『PSYCHO-PASS サイコパス』までが3年なので、あの6年はとても濃密でしたね。その経験を踏まえて、そこからはスタッフさんに求められたことに全力で応えつつ、その誰もが思ってもいなかった選択肢を提示できるようがんばっています。

ぼる塾・田辺さんと新しいラジオ番組をやってみたい
──『PSYCHO-PASS サイコパス』以降の花澤さんのお仕事の変化を見ると、声優業のほかにもアーティスト活動やバラエティ番組への出演が増えていきましたよね。その際に意識していることはなんですか?
花澤 アーティスト活動としては、自分が何を考えているのか、お客さんにどう感じてほしいのかをちゃんと伝えられることに尽きますね。私がライブを楽しんでいたらお客さんも自然と楽しんでくださるはずですから、そこをしっかり表現できるように意識しています。スタッフさんに求められたものに応える声優業と違って、アーティスト活動では自分もスタッフさんの中に入ってものづくりをする立場になります。だから、自分が何を考えているのかは積極的に表に出すようにしています。バラエティ番組への出演については、いまだに必死すぎて何を意識しているのか、自分でも整理がついていません!(笑)
──『ぽかぽか』への出演もすでに2年以上経ちますけど、まだ方法論はつかめてないですか?
花澤 はい(笑)。ハライチのおふたりや神田(愛花)さんを毎週間近で見ているお客さん気分です。ただ、何か振られたときには全力で期待に応えられるようにがんばることは意識しています。モノボケ企画があると事前に伺っていたら、あらかじめ何をやるか考えて行きますし。全然しゃべれなかったという回は、収録後に反省して帰ります。「声優だからいいじゃん」ではなく、ちゃんとできることはやっていきたいなって思う日々です。
──ちなみに、花澤さんが今やってみたいお仕事はなんですか?
花澤 そうですね……いろいろありますけど、ラジオを聴くことが好きなので新しいラジオ番組をやってみたいです。今はひとりしゃべりの番組を担当しているので、新しく始めるなら誰かと組んでみたいな。以前はふたりしゃべりの番組もあったんですけど、最近はやれていないので……。
──ちなみに、どなたとどんな番組をやってみたいと考えていますか?
花澤 完全に妄想ですけど、ぼる塾の田辺(智加)さんと食べ物の話をする番組とか(笑)。あわよくば地上波で何かやりたいですね。普段いっぱい話せないような人たちと定期的に会って話をするのって、刺激になりそうですし、楽しそうだなと思っています。

花澤香菜 最新シングル『やれんの?エンドレス』
花澤香菜、最新シングルはTVアニメ『忍者と殺し屋のふたりぐらし』オープニングテーマ!
声優デビュー20周年を記念した通算7枚目となる待望のアルバム『追憶と指先』のリリース後、自身初となるZeppツアー、そしてアジアツアーと精力的にアーティスト活動を展開してきた花澤香菜の最新シングル『やれんの?エンドレス』が2025年5月14日に発売が決定!
表題曲「やれんの?エンドレス」は、花澤自身が主役・古賀このは役を務める2025年4月から放送開始のTVアニメ『忍者と殺し屋のふたりぐらし』のオープニングテーマで、花澤香菜の新機軸をストロングに提示するダンスチューン!
発売日:2025年5月14日(水)

【きゃにめ限定盤(CD+Blu-ray+アクリルスタンド)】
価格:4,950円(税込)

【初回限定盤(CD+Blu-ray)】
価格:2,200円(税込)

【通常盤(CD Only)】
価格:1,500円(税込)
TVアニメ『忍者と殺し屋のふたりぐらし』

<イントロダクション>
忍びの里から抜け出したくノ一さとこは、
街で行き倒れていたところを通りすがりの女子高生このはに救われる。
だがそれも束の間、さとこは里からの追手に見つかってしまう。
しかしそんな追手をあっさりと返り討ちにするこのは。
…なんと彼女の正体は殺し屋だったのだ!
世間知らずのくノ一と殺し屋女子高生の危ない共同生活がスタート!
<スタッフ>
原作:ハンバーガー(『コミック電撃だいおうじ』連載/KADOKAWA刊)
監督:宮本幸裕
シリーズ構成:東冨耶子
アニメーションキャラクターデザイン・総作画監督:潮月一也
美術監督:飯島寿治
色彩設計:渡辺康子
撮影監督:藤田和意
編集:松原理恵
音響監督:亀山俊樹
音響制作:ビットグルーヴプロモーション
音楽:葛西竜之介
音楽プロデューサー:斎藤 滋、タノウエマモル
音楽制作:ハートカンパニー
アニメーション制作:シャフト
(C)ハンバーガー/KADOKAWA/にんころ製作委員会
<キャスト>
草隠さとこ:三川華月
古賀このは:花澤香菜
イヅツミマリン:芹澤 優
黒:喜多村英梨
百合子:大久保瑠美
ロボ子:三川華月
<放送情報>
TOKYO MX:4月10日より毎週木曜22:30~
カンテレ:4月10日より毎週木曜25:45~
BS11:4月10日より毎週木曜24:30~
AT-X:4月10日より毎週木曜21:30~
三重テレビ放送:4月16日より毎週水曜24:20~
※放送は変更になる場合がございます
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