「私はTWICE」TBSアナウンサー田村真子のちょっと変わった就活エピソード【明日の朝はどんな朝?】

TBS『ラヴィット!』でおなじみの田村真子アナウンサーが日々の悩みや心の動きを徒然なるままに語るエッセイ連載。大好評だった「『ラヴィット!』日誌」からおよそ2年、田村アナが『Quick Japan』に帰ってきました。入社7年目、中堅会社員として大奮闘する田村アナの日常をお届けします!
今回は田村さんの就活の思い出エピソード。アナウンススクール勢や芸能事務所所属セミプロ勢など就活の猛者たちが集うアナウンサー試験で、完全アウェー状態の田村さんが編み出した“秘策”とは……?
今回は『Quick Japan』vol.177からの転載です。本連載はQJ&QJWebで毎月連載中! 次回はQJWebで2025年5月中旬に配信します。

この季節といえば新生活が始まるころですね。新社会人のみなさん、おめでとうございます。
そして就活生のみなさんは6月の解禁に向けて、説明会などでスケジュールが埋まり始めるころではないでしょうか。でも今は夏のインターン、冬のインターンなどもあり、ずいぶん就活も早まってきていますよね。
私はメディア系の学科ということもあり、テレビ局のインターンに参加しましたし、他業界のインターンに応募したりもしていました。まず、エントリーシートを書くのが難しいんですよね。ちなみに他局のアナウンサーのインターンも落ちましたし、大手航空会社の総合職インターンも落ちております。今考えればエントリーシートをもっとちゃんと書かなきゃ無理だよなーと思いますし、エントリーシートも面接も数を重ねることでうまくなっていくものだと思います。何事も経験がないうちは手探りで、求められるものが何かもわからない状態ですからね。
そう思うと就活対策というのは大事で、敵ではないのですが「敵を知る」ことはとても大切。私はもともと記者になりたくて、大学3年生の夏に学科のプログラムで、テレビ朝日のインターンに参加しました。そして朝の情報番組で2週間AD業務を手伝うなか、現場で活躍するアナウンサーの仕事ぶりを間近で見たことをきっかけに、アナウンサー試験を受けることを決めました。それから「採用試験までもう時間がない!」と3日間だけアナウンススクールの試験対策講座に行き、必死にその「敵」を学びました。
実際に就活前のころを思い出すと、なんとなく働いてみたい業界はあるけどふわっとしていたり、どういうスキルが必要なのか、自分の何を活かせそうなのかなどなど……わからないことだらけ。私も自分の専攻と近いメディア業界のほかにも、「かっこよさそう!」「街作り楽しそう!」という理由で「大手不動産系デベロッパーがいいな」とか、「航空会社ってスケール大きそう」みたいな動機でしか会社を見ていなかったりしました。
でも、こういうただの興味って意外と芯があったりして、今でも私はチャンスがあればTBSでも街作りの部署で仕事をすることもあるかも?と淡い期待を抱き続けています。TBSは「赤坂不動産」といわれることもあり、現在も赤坂の大規模開発に携わっていて、大手デベロッパーともお仕事をしています。まぁそんなことを入社前に知っていたわけではないので、狙ってここに入ったわけではないのですが。

TWICEなんだから大丈夫
そんな話は置いといて……。先ほどチラッと、エントリーシートも面接も「場数を踏むのが大事」というお話をしました。これは本当にそうです。時期が早いから練習になるという理由で、テレビ局やアナウンサーの採用に応募するという人も実際に多くいます。私はTBSの採用試験の前に受けた名古屋の局のインターンが、人生初の正式な面接でした。なので、面接に慣れる時間はあまりないまま、緊張しまくりでTBSに乗り込むことになったのです。
でも自分的には「まわりに飲まれてはいけない、自分のペースを保たねば」と意外と冷静にいられたのでは?と思っています。緊張はして当たり前ですから、TBSの試験で私の隣で面接を待っていた女の子もお腹が痛くなってしまい、お水をあげたのを覚えています。

私は面接に行く道中、緊張をほぐしつつ自分のテンションを上げるためにTWICEの「TT」を聴きながら、いかにも「私はTWICEです!」みたいな自信満々な仮面を被り会場に向かいました。
別にTWICEになりきったから受かるというわけでもありませんが、自信を持った佇まいというのは、自信がなさげな佇まいより第一印象がよく映ると思います。もちろん自信過剰なのはあまりよくないですが、ある程度の自信というのは初対面の人からしたら大きな情報であり、能力がある人間に見えるからです。
面接会場って、ほかの人たちがみんな優秀に見えて不安になるんですよね、特にアナウンサー試験の場合は、なぜかまわりにいるほかの人たちは顔見知りなのです。そう、ある程度絞り込まれた段階では「マスコミ系サークル勢」、「アナウンススクール勢」、「芸能事務所所属セミプロ勢」が受験者の大多数を占めるため、その界隈の人たちにとってはよく見る顔だらけなのです。そして彼らは、試験に関するあらゆる情報を瞬時に共有しています。本当にびっくりしました。そういう人たちは、面接の待機中も和やかな談笑を繰り広げます。スクールの試験対策講座には行きましたが、「そんなことは教えてくれなかったじゃないか!!」と、ここで私は圧倒的疎外感、東京にはこんな知らないコミュニティがあるのかと内心焦りを感じます。
「いや、だけど私はTWICE」
ここで謎の思考術を駆使し、「ここで圧倒されたら負けだ、どこにも所属はしていないが、TWICEなのだから堂々としておけば大丈夫」と訳のわからないメンタルで平然と振る舞った記憶があります。本当に面接前に何を言っているんだという感じですが、結果、この戦法は一利あったと思いたいです(笑)。
でも実際、そのとき採用に携わっていた先輩に面接時の私の様子を聞いたら「おびえてたよー」と言われましたが、まぁ見え方は人それぞれということで……。結局、自分の持つ力を出しきるために必要なものは「自信」だと今振り返っても思います。その「自信」はこれまでのプロセスに裏づけられたものでも、私みたいな訳のわからない一時的なものでも、根拠のないものであっても、何もないよりはあったほうがいいと思うのです。

あなたの隣にもTWICEが……?
そしてもうひとつ、就活のときに私が思っていたことをお話しします。面接で逃れることができないのが「緊張」です。誰でも緊張はしてしまいます。よほど、さっき話した「自信」がある人は別ですが(笑)。面接に対する緊張を紐解いていくと、初めての場所に行く緊張、初対面の人たちに囲まれる緊張、何を聞かれるか予想できない中でうまくしゃべって結果を出さなければいけない緊張。このうちのうしろふたつについては「合格すればまた会うけど、不合格になれば二度と会うことのない人たちだ」と割り切って、恥ずかしいことも緊張することも何もないんだと思って私は心をほぐしていました。
面接で聞かれたことに対して、こちらが一生懸命答えても反応がいまいちだと焦るものですが(「圧迫面接」という言葉もありますしね)、まぁもう二度と会わないだろうと思ってしまえば、逆に自分の言葉に自信を持って言いたいことを言えるのではないかと。
特にテレビ業界は「個性」というものが重視されるので、何か印象に残ることを言わなければいけないというプレッシャーがあります。それに加え、アナウンサーはフリートークや思ってもいないことを急に振られたり、きっとその場の度胸であったり焦りの中に垣間見られる素のリアクションを見ようとしているのだと思います。でもそこで失敗してしまっても恥をかいても、その失敗を目撃した人とはもう一生会うことはないさ、と思うと少し気が楽になりませんか? 私はこのマインドのおかげで取り繕うことなく、ありのままの自分の言葉を届けることができたように思います。
この方法が使えたのは、アナウンサーの採用試験がかなりほかより早い時期だからということもあるでしょう。終盤になってくると「ここで絶対に決めなければ」とプレッシャーを感じるのは当然です。でも、面接会場にいる優秀そうに見えるライバルたちの中にも、私のように訳のわからない作戦で乗り込んできている人がいることを、頭の片隅に置いておいてください。役に立つかはわかりませんが「こんな話もあったなー」と思いながら、無事に就活を乗り越えていただきたいです。

関連記事
-
-
花澤香菜が明かす“仕事人としての心得”「誰も想像しない選択肢を提示できるように」
花澤香菜『やれんの?エンドレス』:PR -
長濱ねるが、嫌いだった自分を許せるようになるまで
FRISK:PR -
空気階段が大学中退ニート&バイトの苦しい日々を“転換”させた先に
FRISK:PR -
「奪われたものは取り返すつもりで生きていく」FINLANDSが4年ぶりのアルバムで伝える、新たな怒りと恥じらい
FINLANDS『HAS』:PR