「3カ月休館がつづくと必ず閉館となってしまう」
配信の中盤からは、名古屋「シネマスコーレ」の副支配人・坪井篤史、京都「出町座」の支配人・田中誠一、大阪「シネ・ヌーヴォ」の支配人・山崎紀子、広島「シネマ尾道」の支配人・河本清順、大分「シネマ5」の支配人・田井肇といった、プロジェクトに賛同・参加する全国の劇場支配人とも中継をつなぎ、各劇場や映画ファンとも想いを共有。
「(シネマスコーレの話で言うと)3カ月休館がつづくと必ず閉館となってしまうことがわかっている」(坪井)など、各劇場が厳しい状況にあることを伝えながら、「作り手のみなさんの声によって発足したこのプロジェクトが励みになっている」(河本)などの想いを明かした。また会見後には、アップリンク配給作品『ソウル・パワー』の投げ銭方式による生配信を行った。
4月13日の開始時点では62団体68劇場が参加し、クラウドファンディングで集まった金額をこれらミニシアター運営団体に寄付の形で分配する方針だ。4月17日まで新たなミニシアターの参加を可能としており、その増加も見越して1運営団体あたり平均150万円の分配を目指し、目標金額は1億円に設定。期間は5月14日までの1カ月間。達成されれば、『MOTION GALLERY』史上最高額となる。
また、クラウドファンディングでは応援額に応じた多様なリターンを用意。コロナ禍収束後にミニシアターで映画を観るために使える「未来チケット」や「パスポート」、そして有志の映画人たちが提供した激レア映画100本以上から規定本数分だけをストリーミング配信で視聴することができる「サンクス・シアター」など、支援者の映画愛に応える内容になっている。
『QJWeb』では後日、発起人の深田監督・濱口監督へ取材を行う予定。このプロジェクトにかける想いを改めて掲載する。
各ミニシアターそれぞれの取り組み
こうした、映画監督や俳優などの映画人が声を上げて推進するプロジェクト以外にも、各劇場単位で支援を求める取り組みも多く行われている。
たとえば、渋谷・吉祥寺・京都の3劇場を有するアップリンクは、公式オンラインショップ『アップリンク・オンライン・マーケット』を開設。アップリンク配給の映画60本以上が観放題になるオンライン映画館『アップリンク・クラウド』にて、寄付がついたプランの取り扱いを始めた。
さらに、安心できる状態になったときに劇場で映画を観られる「ドリンクサービス付き回数券」「トートバック付き回数券」なども販売。映画ファンに向けた変わらぬサービスを提供しながら、劇場存続のための応援・支援を募っている。
ほかにもクラウドファンディングや特典つきの会員募集を行っているミニシアターがたくさんある。映画監督の入江悠は、「全国のミニシアターを応援したい」との一心から自身のブログにて全国の劇場への支援方法をまとめている。随時リストを更新していくとのことなので、近くの劇場、大好きな劇場への支援につなげてもらいたい。
また、4月6日から12日までの取り組みではあったが、京阪神の13の劇場が手を取り合って支援を求めた『SAVE OUR LOCAL CINEMAS』というプロジェクトも実施されていた。応援Tシャツの販売や寄付を募り、危機的状況に陥る各映画館への支援の仕方を提示。予想を大幅に超えるTシャツの受注があったことなどが各劇場のSNSアカウントで喜びとともに伝えられた。
想田和弘監督『精神0』一斉配信や、ドライブインシアターも
5月2日に公開を予定していた想田和弘監督の最新作『精神0』。第70回ベルリン国際映画祭フォーラム部門にてエキュメニカル審査員賞を受賞した作品で、現在の状況を鑑みてインターネット上で配信することを発表。配給会社の東風が開設する「仮設の映画館」にて、当初予定していた5月2日に一斉配信される。
観客は観に行きたい映画館を選択することができ、その鑑賞料金(1800円)は「本物の映画館」の興行収入と同じく、それぞれの劇場と配給会社、製作者に分配される仕組みだ。
『精神0』の「仮設の映画館」での上映は全国一斉、5/2[土]から5/22[金]の3週間を予定しています(「本物の映画館」と同じく、ヒットしたら延長されるかもしれません)。さてまずは最寄りの劇場へ。そして、たまには懐かしい街の劇場を訪ねてみてください。もちろん状況が改善したら、ぜひ「本物の映画館」に足をお運びください。ここはあくまで「仮設の映画館」です。
「仮設の映画館『精神0』」公式サイトより
他のエンタテインメント業界と同じく大打撃を食らっている映画業界だが、上記の「仮設の映画館」のように新たな映画鑑賞の機会を創出している取り組みもある。