年間100本以上のお笑いライブに足を運び、週20本以上の芸人ラジオを聴く、19歳・タレントの奥森皐月。
今月は、10月21日に放送される『キングオブコント』決勝戦に向けて、セミファイナリスト各組のインタビュー動画や決勝進出者の発表会見で目撃した“お笑い事件簿”を振り返る。
『キングオブコント2023』優勝はサルゴリラ!史上最年長&合計964点の歴代最高点【各審査員の採点&結果まとめ】
目次
『キングオブコント』の足音で秋を感じる
涼しくなったから『キングオブコント』の決勝戦が近づいているのか、『キングオブコント』の決勝戦が近づいているから涼しくなるのか、本当のことはわからない。
肌寒さとスーパーマーケットの紅葉のディスプレイと『キングオブコント』の足音で、ようやく秋を感じる。
近年の『M-1グランプリ』は競技性と注目度がより高まり、お笑い賞レースの王様という風格が醸し出されているようだ。予選動画は1回戦からYouTubeで無料公開され、夏から年末にかけて余すところなく楽しむことができる。
それに比べると『キングオブコント』は予選動画が有料配信のみであるため、決勝前の盛り上がりは『M-1』と比べてしまうと大きくない。これはおそらくネタバレを避けることや、権利関係の問題があるなどの複雑な理由だろうから仕方ない。
準々決勝や準決勝の配信をすべて買うとなるとなかなかのお値段なので、お笑いファンでも全部観ている人はそう多くないと思う。そのせいもあってか、ほかの賞レースよりも事前情報が拡散されず、新鮮に楽しめるので好きだ。
今年に関しては、公式でセミファイナリスト全組のインタビュー動画公開や、決勝進出者発表会見の配信など、事前に楽しめるコンテンツがいろいろと用意されていてありがたい。
セミファイナリスト各組の個性が光るインタビュー動画
インタビュー動画では各組がひとつのテーマについて話していて、「キングオブコントの思い出」「コンビの出会い」「他のコンビに負けないこと」「コントが好きな理由」などがサムネイルになっている。
その中で、なぜかロングコートダディと男性ブランコだけが「自分たちを表す漢字2文字」という珍しいテーマだった。
コンビを漢字2文字で表してみようと思ったことはこれまでになかった。このコンビは漢字2文字だと〇〇っぽいな、と思ったこともない。難しいお題。
ただ、ロングコートダディも男性ブランコも、どちらもなかなか変なチョイスだったのでおもしろかった。この質問は全組にしていたのだろうか。
コント師のトーク動画はなかなか味わい深いものがあると、インタビューを見ながら思う。コント芸人オンリーのトーク番組があったらどうなるのか見てみたい。
ラジオを聴いてきたラブレターズやサスペンダーズの動画はやはり安定感があり、個々のキャラクターがはっきり出ていて好きだった。「『キングオブコント』の思い出」という質問で冒頭から苦い思い出を語り出すサスペンダーズ古川(彰悟)さんは、“らしさ”があふれ出ている。
トークで一番興味深かったのは、コンビの出会いについて話していた都トムの動画。それぞれピン芸人として活動していた可児正さんと高木払いさんがなぜコンビとなったのかを話していた。
ふたりの距離を近づけたものは植物らしい。東京調布の神代植物公園で2年に1回開花する「ショクダイオオコンニャク」という大きい花を見に行きたい、という可児さんのツイートをきっかけに仲よくなったと言っていた。全動画の中で一番優しいエピソード。
今は友達感覚のままコンビで活動ができているとのことで、そのままずっといてほしいなと思ってしまった。ちなみにショクダイオオコンニャクを検索してみたら本当に大きな花でおもしろかった。
ファイナリスト発表会見で、ななまがりが起こした事件
発表会見はMCが南海キャンディーズ山里(亮太)さんで、安心感が段違い。『M-1』の麒麟・川島(明)さんしかり、緊張感の漂う賞レースの発表や会見はMCの技が光るので見応えがある。
一部でトレンド入りもしていたが、この配信では、ななまがりがすごかった。「負けてしまったけれども何か言い残したいことがあるという方、挙手で」というかなり過酷なフリに、手を上げたななまがり森下(直人)さん。
おもむろに立ち上がるといつもの調子で「私、パラレルワールドからやってきました」の自己紹介。そして放たれる「浜田こうすけです」。
本来このシリーズは著名人を名乗るので、MC山里さんはじめ周囲の芸人さん全員が「浜田こうすけ?」と疑問符を浮かべる。
森下さんが素のトーンで「まさとしや」とつぶやくことで、全員立ち上がり、その日最大の盛り上がり。全員の注目を集めてパラレルワールドから知らない人が出てきてしまうというあり得ないお笑いで、お腹が痛くなるくらい笑った。
「浜田雅功」にはたしかにコウの響きの漢字が入っているが、それにしたって「まさとし」と「こうすけ」は遠い。間違い方として変すぎる。
ひとしきり盛り上がったところで、初瀬(悠太)さんがとんでもなく大きな声で「誰や、浜田こうすけって」と最もシンプルで最もおもしろいツッコミを入れて追い討ちをかけた。
準決勝では残念ながら敗退してしまったが、この場では完全に勝利していたと思う。カッコよかった。敗退が決まって渋い顔をしていた芸人さんも全員が立ち上がり、手を叩いて笑っている光景はあまりにも素敵で美しい。
YouTubeで再生していると、このななまがりのくだりが「リプレイ回数が最も多い部分」と表示される。例に漏れず私も何度も再生しているので、みんなわざわざこの部分を見返しているのだと思うとまた笑えてくる。5回目くらいから森下さんの私服がやたらとオシャレなこともおもしろくなった。
ななまがりといえば、つい最近も「言い切る男」というショート動画でバズっていた。
「地球最後の日は何曜日?」「円周率の最後の数字は?」「卵が先か? ニワトリが先か?」など、世の中の答えがないものの答えを初瀬さんが言い切るだけの短い動画だが、これがたまらなくおもしろい。
森下さんの独特さが目立ちがちだが、ななまがりは初瀬さんも森下さんと同じくらい特殊なことをしていると思う。
最近はテレビでも見る機会が増えてうれしい限りだが、もっとお目にかかる機会が増えてもいいと感じる芸人さんのひと組。『勇者ああああ』のような番組が早急に増えることを願う。
『キングオブコント』注目のファイナリスト2組
今年の決勝メンバーはいわずもがな実力者ぞろいだが、過去の決勝進出組が敗退していることも多く、意外なメンバーであった。
ライブシーンでよく見ているゼンモンキーの初決勝進出はとてもうれしい。芸歴1年目にして優勝した『ワタナベお笑いNo.1決定戦 2021』の観覧で、初めて生でゼンモンキーのネタを観たのだが、あの日以来いつライブで見ても期待を上回るおもしろさだった。
ベテランも多い中、芸歴4年目で決勝に行けるのも、ゼンモンキーなら納得できる。このまま優勝してもおかしくない、勢いのあるトリオであることは間違いない。
決勝メンバーでもうひと組、大きな期待を抱いているのがラブレターズだ。7年ぶり4度目の決勝という響きからすごさがわかる。おもしろい若手が次々と台頭しているのに、ここでまた決勝に進んでいるのはカッコいいにもほどがある。
ラブレターズ初の決勝が12年前。2011年の『キングオブコント』で披露した『西岡中学校』のネタは、これまでの『キングオブコント』史上でも特に好きで、記憶に残っているネタだ。
当時私は7歳で小学1年生だったが、リアルタイムで観てラブレターズをおもしろいと思ったことをよく覚えている。
あれから12年、私はハタチを目前にしてすっかり大きくなったけれど、相変わらずラブレターズが好きだし、ここ数年もライブや単独で何度も観てたくさん笑った。
今年優勝したら信じられないくらい泣く自信がある。決勝のステージでまたネタを観られるのが本当に楽しみだ。
同じく7年ぶりのジグザグジギーや、悲願の決勝進出を果たしたファイヤーサンダーなど、心踊るメンバーばかり。こればかりは全員見るべきだ。全員というのは本当に全員。楽しみで仕方ない。
錦鯉のツッコミのすごさを熱弁した『るてんのんてる』
10月6日の深夜から『るてんのんてる』(読売テレビ)で4週連続のお笑いにまつわる企画が始まった。お笑いの魅力をとことん深掘りする、その名も「笑ディグ」。
6日と13日の放送は「ツッコミをディグる」がテーマ。MCはシソンヌ長谷川(忍)さんとなにわ男子・藤原(丈一郎)さんで、魅力を語るメンバーがミルクボーイ駒場(孝)さんとスピードワゴン小沢(一敬)さん。この豪華で最高の企画に、私もディグるひとりとしてお邪魔した。
普段ベローチェでお笑い好きの友達と話すことはあるが、大阪のテレビ局で駒場さんや小沢さんに並んでお笑いを語れる日が来るとは思わなかった。本当に幸せなこと。
「ツッコミとは何か」というところからスタートし、私もこの収録を機に、改めてツッコミについてよく考えた。お笑いを見るにあたってボケに着目することは多いが、ツッコミにフォーカスすると見え方がガラッと変わる。
「ツッコミ芸人分類マップ」をもとにトークをするパートでは、「ハード」「ソフト」の縦軸と「ワード」「ストレート」の横軸で構成されたマップが登場した。ここにあらゆるツッコミ芸人を割り振るのだが、これが非常に楽しかった。
捉え方によって位置が変動したり、ネタと平場でツッコミが違う人がいたり、ネタ中でもツッコみ方が変わることがあったり。普段何気なく見ている人たちがいかにすごいのか実感できる。
あのマップさえあれば、夜通しお笑いの話ができると思った。噛めば噛むほど味がするし、収録時間では到底足りないくらい奥深いものだとよくわかった。
「このツッコミがスゴい!」のパートでは、それぞれがすごいと思っているツッコミ芸人さんを紹介し、どこがどうすごいのかを話し合う。私からは、このテーマを聞いたときに、まず一番に思いついた錦鯉の渡辺(隆)さんを紹介させてもらった。
近年はシステマチックなネタも増え、ワードセンスに富んだツッコミや長いフレーズのツッコミなどが多くなったように感じる。それに対して、渡辺さんの洗練された短いツッコミ。削ぎに削がれた、重たいストレートを食らうようなフレーズが大好きだ。
(長谷川)まさのりさんという強烈な食材を最低限の調味料だけでおいしく仕上げる様は清々しい。「こんにちは」「うるせぇよ」で笑えるというのが錦鯉のすごさだと語らせてもらった。
放送に乗りきらなかった部分も含め、自分が話したことに駒場さんと小沢さんが共感してくださるのが本当に本当にうれしい。思い出してニヤニヤしてしまう。
その後も、ツッコミを体験する企画や、フットボールアワー後藤(輝基)さんのツッコミヒストリー、若手芸人が憧れるツッコミランキングなど、あらゆる角度から「ツッコミ」を考えられてとてもおもしろかった。
今後もツッコミに限らずいろいろなテーマをディグるところが見てみたい。「フリップネタをディグる」とかはニッチで楽しそうだ。
過去回も合わせてTVerで視聴できるのでぜひ。関西ジャニーズJr.のふたりが本気で漫才に挑戦する企画も連続しているので、最後まで楽しみだ。
お笑い賞レースの季節があってよかった!
10月というのは、もうまばたきすらしている暇がないということ。
『キングオブコント』が終わったかと思えば『M-1』の3回戦や準々決勝の動画を再生する毎日がやってくるし、そうこうしていると『THE W』も放送される。賞レースの季節。
日本に四季があってよかったし、その中にお笑い賞レースの季節があってよかった。年中お笑いを見ていることに変わりはないのだが。
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