写真を撮ることにこだわりを持つアーティストや俳優・声優による連載「QJカメラ部」。
土曜日はアーティスト、モデルとして活動する森田美勇人が担当。2021年11月に自身の思想をカタチにするプロジェクト「FLATLAND」をスタート、さらに2022年3月には自らのフィルムカメラで撮り下ろした写真をヨウジヤマモト社のフィルターを通してグラフィックアートで表現したコレクション「Ground Y x Myuto Morita Collection」を発表するなどアートにも造詣が深い彼が日常の中で、ついシャッターを切りたくなるのはどんな瞬間なのか。
秋になると思い出す風景
第73回。
数人の友達と訪れたいつかの軽井沢。
人生の中でこんなにも赤に包まれた空間は初めてだった。
秋になるといつもこの風景を思い出す。
車も相まってフルコンボの一枚。
友達と行く旅先はいつも落ち着いた場所だった。
賑やかな都会には向かわず、離れた静かな土地を好み、そばをすすり、温泉に浸かり、散歩をする。
20歳前後とは到底思えないツアープランだったが、落ち着いて吸い込んだ空気の味や鼻に通る冷たさ、幻想的な赤を今も鮮明に覚えている。
歩きながら偏った話題を延々と話し、時に無意味な動きで笑い合う。
だいぶストレンジな集団ではあるが、なにより平和で楽しかった。
いつかまたこの景色が見たい。
そしてそのときはどう感じるかを知りたい。
当たり前のように変わりゆく心境や思想は同じ場所に訪れて初めて気がつくことが多い。
そしてその中に変わらないと思えることがあれば、きっとそれは神秘なのだろう。
それぞれが変わってもなぜかつながる不思議な回線。
だから友達というのはいつまでもおもしろい。
NAOYA(ONE N’ ONLY)、中山莉子(私立恵比寿中学)、セントチヒロ・チッチ、東啓介、森田美勇人、南條愛乃が日替わりで担当し、それぞれが日常生活で見つけた「感情が動いた瞬間」を撮影する。