森田美勇人「思考の視野」【QJWebカメラ部】

森田美勇人【QJWebカメラ部】

文・撮影=森田美勇⼈


写真を撮ることにこだわりを持つアーティストや俳優・声優による連載「QJWebカメラ部」。

土曜日はアーティスト、モデルとして活動する森田美勇人が担当。2021年11月に自身の思想をカタチにするプロジェクト「FLATLAND」をスタート、さらに2022年3月には自らのフィルムカメラで撮り下ろした写真をヨウジヤマモト社のフィルターを通してグラフィックアートで表現したコレクション「Ground Y x Myuto Morita Collection」を発表するなどアートにも造詣が深い彼が日常の中で、ついシャッターを切りたくなるのはどんな瞬間なのか。

私の月課

森田美勇人【QJWebカメラ部】
写真=森田美勇人

第68回。

公園の噴水が思ったより高かった。

何度も訪れている場所なのに、目もくれていなかったことへのもったいなさと新しい発見の喜びが混ざり、複雑にそれを眺めていた。

普段は木々の息を吸い込むように自転車を走らせて、すれ違うアスリートランナーに尊敬しながら電動機の上でぼーっとしている。

日々集まった大量な小粒の悩みが渦を巻き、漂流する脳みそ。

そんな頭に浮かぶ宇宙ゴミを空にするため、月に1回は行き先を持たないサイクリングをしながら、どんぐりを落とすように思考を捨てるのが日課ならぬ私の月課だった。

そういった習慣を繰り返していくうちにぐるぐると走り回りながら捨てたどんぐりの渦が次第に小さくなり、いつの間にか真ん中の噴水に辿り着いたというわけだ。

こんな大きな噴水に気づかずぐるぐる走り回っていたのかと思うと、過去の自分がほんの少し愛おしく感じた。

きっとそれだけ必死だったのだろう。

きれいな水飛沫が勝手ながらゼログラヴィティからの脱出を祝福をしてくれたようでうれしかった。

そしてこの最終池を心の中で「空の泉」と名づけた。

「空」の読み方はその時々で。

次はちゃんと走ってこよう。

QJWebカメラ部
【連載】QJWebカメラ部は火曜日から日曜日まで毎日更新

中山莉子(私立恵比寿中学)、セントチヒロ・チッチ東啓介森田美勇人南條愛乃が日替わりで担当し、それぞれが日常生活で見つけた「感情が動いた瞬間」を撮影する。

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森田美勇⼈

(もりた・みゅうと)1995年10⽉31⽇⽣まれ、アーティスト/モデルとして活動。多数のブランドでビジュアルモデルを務め「Ground Y」ではGround Y x Myuto Morita Collectionを発表した。2021年11⽉、⾃⾝の思想をカタチにするプロジェクト「FLATLAND」を..

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