おぎやはぎ矢作「ザキヤマがいないと楽勝なの(笑)」と、人力舎の芸人が平場でも強い理由を明かす(あちこちオードリー)

てれびのスキマ

テレビっ子のライター“てれびのスキマ“が、昨日観た番組を記録する連載「きのうのテレビ」。バラエティやドキュメントの中で起こった名場面、名言、貴重な会話の数々を書き留めます。2020年から毎日欠かさず更新中。

『あちこちオードリー』(8月16日放送)

ゲストはおぎやはぎ、劇団ひとり、松丸アナの『ゴッドタン』チーム。おぎやはぎとひとりは2002年の『本能のハイキック!』以降、『大人のコンソメ』(2003~04年)、『リチャードホール』(2004~05年)、『ゴッドタン』(2005年~)と、レギュラー番組が途切れずにずっと一緒という奇妙な縁を持つふた組。

よくいわれる、おぎやはぎによる「人力舎の精神革命」(上下関係や派閥をなくした)について矢作は、「23から始めてるから、やっぱりみんな高卒で芸人になってるから世間知らずなのよ。だから簡単なの、そいつらを従えること」と笑う。

人力舎のライブ『バカ爆走!』では、みんな仲がよく、ザキヤマを中心に「からの~」とムチャぶりする楽屋の遊びをずっとやっていた。「あれを経験したあとにテレビに出始めたとき、けっこう楽勝だと思った」と矢作は言う。人力舎の第1世代の強さの秘密の一端がわかる。矢作「ザキヤマがいないと楽勝なの(笑)」。

劇団ひとりはおぎやはぎを最初に観たことをよく覚えていると回想。『ブレイクもの!』という番組でひとりが一本ネタで出た際、登竜門的なコーナーにおぎやはぎが出ていた。そこで披露したおぎやはぎの漫才は「本当に立ち話」だったという。

「サングラスをかけたいんだけど、日本人ってサングラスかけると眉毛が出ちゃうよね」という内容。ひとりのそれまでの方程式なら「なんだよその話」とツッコむところだが、「わかる」と返ってきて鳥肌が立ったと。

一方、スープレックスからピンになってからの劇団ひとりの「天才っぷりは異常」だった、と矢作は言う。矢作はいい部分を見つけて褒めてくれるから、自信がなくなったら矢作と飲む時期があったという。そんな中でも、コントでも普段も履ける革靴に見えるスニーカーを履いていることを注意され、ちゃんとオシャレもしたほうがいいとアドバイスを受けたそう。

おぎやはぎのブレイクのきっかけは『めちゃイケ』の「笑わず嫌い王」。「忘れもしない出来事があってさ」と矢作は回想する。『めちゃイケ』は長時間収録が当たり前。夜中2時まで待たされると、月亭可朝がキレてしまった。出番になっても横になって10分間何もしゃべらなかったという。

そんな重苦しい空気の中、次の出番がおぎやはぎ。その際、一緒のメンバーだったくりぃむしちゅーやさまぁ~ずがほとんど初対面だったにもかかわらず、「大丈夫だから」「いつもどおり」などと励ましてくれ、冷静さを取り戻すことができたそう。

劇団ひとりは『新しい波8』の明松功演出回に出演し、そのまま『本能のハイキック!』に起用され、いわゆる「泣き芸」を見せてブレイク。その『本能のハイキック!』の演出は、ひとりにとってカルチャーショックだったという。明松を含め、『めちゃイケ』チームによる演出。「番組って全部ノリでやると思ってたけど、たとえばオープニングのひと言の挨拶を6時間とか考えさせられるの」と。「『先週のこのポジションはこういう心理になってるはず』とかそういうことをすごい言うんだよね。それがなんか新鮮だった」。

若林も『めちゃイケ』の「歌ヘタ」に出演した際、「今オードリーって春日、春日ってなっていて、それはどういう時期かっていうと……」など企画の外側から説明してもらったと。ひとり「中継とかでも、今どういう心情かっていうのを与えられると動きやすいんだよね」。

『めちゃイケ』チームの緻密な演出の真髄の一部を垣間見た感じがした。

『ゴッドタン』(8月19日放送)

ドラマで14歳の女優とふたりきりのシーンの撮影がつづいた際も6時間ひと言もしゃべらなかっただとか、喫茶店で靴を脱ぎ椅子の上に体育座りをして『デスノート』のLのように「天才ぶる」という、水川かたまりの「壁ある芸人矯正プログラム」。

陽キャを演じる作戦を授けられても、「それで壁がなくなったところで、それが本当に壁がなくなったことになるのか」と本質的なところを突いてくる。

最終的に、兄を殺した因縁の相手がもぐらだったと気づき復讐するという、壮大かつバカバカしくてあり得ない物語を演じることに。かたまり「それで壁がなくなるわけがない(笑)」。けれど、復讐に燃えて殺意を秘めた目の演技が絶品だった。

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  • 【連載】きのうのテレビ(てれびのスキマ)

    毎夜ライフワークとしてテレビを観つづけ、テレビに関する著書やコラムを多数執筆する、てれびのスキマによる連載。昨日観た番組とそこで得た気づき、今日観たい番組などを毎日更新で綴る、2023年のテレビ鑑賞記録。

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1978年生まれ。ライター。テレビっ子。著書に『タモリ学』(イースト・プレス)、『1989年のテレビっ子』(双葉社)、『笑福亭鶴瓶論』(新潮社)、『全部やれ。日本テレビ えげつない勝ち方』(文藝春秋)など。

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