ExWHYZ・mikinaが降りたことのない地を訪れ散歩をしながら自分と向き合う連載「未開拓駅さんぽ~初めての街で考える~」。今回は西武鉄道・新宿線が通る「新井薬師前駅」で下車。街行く人々を横目に商店街を歩いていたら、先輩・BiSHの始まりの地に辿り着いた。6月29日に東京ドームで行われた解散ライブ『Bye-Bye Show for Never』の余韻に浸りながら、6人が見せてくれた夢の先を考える。
いい感じのパスタランチ
さて、散歩に寝坊した。寝癖のまま来た。
散歩に寝坊ってなんだ。
そもそも散歩ってのは天気がよかったり気分がよかったり、風の匂いがよくて、触れたくて、衝動で歩き出すみたいな。ちょっと歩いちゃおっかな〜、で急に始まるものではないのか……。そう考えると趣あるな、散歩文化。
と、思ってるなかで、私はそれを朝からやりたかった。早起きをして一日の序盤の序盤に有意義な時間を過ごしたかった。
でも寝られれば寝られるだけうれしい人間の私が衝動的にそれを行うのは難しい話であって〜。計画を立てて出かけようとしたのですが〜。まあ寝坊です。
こういうとき、睡眠なんてしなくてもいい体になればいいのに、とかたまに思うけど、この絶対に寝たい時間を除いた限られた時間だからこそ、この有意義な時間過ごしたい欲が生まれるみたいなとこがあるのか!
人間ってなんか存在が生まれてこんなに経つのにずっと不便な体だね。でもそこから生活がたくさん生まれてておもろいね。
前置きが長くなる前に、話を戻そうじゃあないかぁ。
今回、寝坊して向かった先は西武新宿線の「新井薬師前駅」。
新井薬師。下高井戸につづき、漢字4文字駅シリーズが始まるのではないか?と読者の皆さん思ってますね? 私にはつるっとまるっとお見通しだ!
理由はシンプルで、ただ私の素敵センサーが「新井薬師前駅」に動いたからという理由でここを選びました。
朝から向かう予定が起きたのは昼少し前。早めの夕方から夜までお仕事だったのでこれはまずい。
また夜に来るぶんには別にいいけど、この新井薬師前駅の商店街を歩きたかったから。きっと夜にはお店がほとんど閉まってるかなぁ、と思って急遽、ランチだけ食べに行くことに。
駅を降りて商店街「薬師あいロード」で豪速球のぷらぷら歩きをしてたら見つけた、なんだか雰囲気が温かいイタリア料理店に入りました。
個人店ってのはちょっとチャレンジレベルが高いけど、ここはなんだかいい感じ。人生、いい感じを大事にしたいんだぜ。
ご夫婦でお店を営んでいるらしい。平日でもけっこうな賑わい。
プチ夏バテの私はランチのパスタを少なめにしてもらった。快くOKしてもらって。
待ってる間、店主夫婦のいい温度の会話を聞いていた。空気みたいになんの違和感もなく、滑らかにぽんぽんって言葉が積み重なっていって、いいなぁと思った。
パスタは別にお母さんの作る味に似てるわけでもないのに、なんだか“おうち”を感じた。
さて、ランチを食べたらタイムリミットが。
新井薬師前駅 前半の部がここで終了。
散歩→仕事→散歩のムーブをするのは我ながら前代未聞過ぎるけど、同じ街の昼と夜の空気をどっちも味わえるなんていいじゃないか。なんでもアリ精神は私を楽しくするから重宝してるわよ。
ゆるくて柔らかい夜の街
夜、再び。新井薬師前駅、ただいま。
さっそく、スーツのお父さんと息子がたい焼きをふたりで食べながら帰ってるところを見かけて和む。
なんかラフな恋人たちがやたら多い。だいたい短パンにサンダルとか、ふたり乗りの自転車もたくさん見た。あとはサラリーマンと短パンの人の組み合わせとか。明らかに陽気に酔っ払ってて、タクシーを呼ぶも、チラ見されたあとに素通りされて、それでも楽しげにゲラゲラ笑ってる人たちとか。誰かのカラオケの声とか。
あと見てこれ、絶対ふざけてるよ(失礼)。
なんかゆるいなこの街。
商店街に戻ると、けっこうな夜だからやっぱりだいたいのお店のシャッターが閉まってた。
空いてるのはバーみたいなお店くらい。バーなんて暗がりのイメージなのに、笑い声がたくさん聞こえて。のぞいてみたら赤ちゃんが寝てた。そうかー。こういう場所のバーは地元の人が来るんだなぁ、めちゃ和むな〜。
そういえば夜なのに、暗くないなぁ。
街灯がずっと柔らかい色で明るく点いてるんだ。
商店街はいつまで明るくいてくれるんだろう。
私を始めた人たち
商店街を抜けると、もうほとんど中野駅らしい。
歩いてたら路上でダンスを踊ってる人たちがいて、私の近くを通った人が「わ〜踊ってる。さすがだな〜ヘビーシックの前だからなぁ」って話してて。
!!!? 中野heavysick ZEROを発見! ここじゃん!になりました。
ヘビーシックで思い出すのが、BiSHの解散ライブ、東京ドームでアイナさんが言ってた「80人キャパから始まったBiSHが東京ドームに立てました」って言葉で。本当に夢みたいな人たちだったなぁと思う。どんどん大きくなって駆け抜ける姿は本当に現実なのかなぁって何回もびっくりした。
当時、表面ばかり整えて、中身はぐちゃぐちゃとして悶々としてた私の前に突然現れて、マンガみたいな姿をたくさん見せていった。
初めて見たとき、本気で人生で見た中で一番この人たちがかっこいいなぁと思ったなぁ。
こういう姿もアリだよ、ていうかこの人生動かないでどうすんの?って、目を見て言われた気がして。
BiSHさんの大好きなところはあーーんなにたくさんの人に愛されてるのに一人ひとりを見てくれてるってライブに行くと感じられるところで。
私はそこから初めて自分で何かを決めて「いけるかも。でも、いけないかも」ってすっごいドキドキして。人生で一番自分にワクワクした。
自分の人生をちゃんと始めちゃったなぁって感覚がして。
ここに飛び込んで。たくさん空回るし、グルグル遠回りして、そのたびにいろんな人に助けられてきたら自分ひとりの話じゃなくなって。伝えたいことばかり増えるし、そう簡単に終われないと思い始めて。
だけど、私を始めた人たちは終わっちゃったんだ。あんなに長くそばにいたはずなのに、あっという間で、解散ライブの日は目を開けたら終わりの日になっちゃった気持ちだったなぁ。
正直ね、ずっと信じられないんだー。まだ。本当にあの日が終わりの日なのかなぁ。
最後まで夢っぽいな〜。もし夢だとしても、あまりにも忘れたくない夢だなぁ。でも、体と心にはずっと残ってると思う。曲を聴けばすぐに思い出せるくらい。
BiSHさんが、いつだってBiSHのアイナさんの、モモコさんの、リンリンさんの、アユニさんの、アツコさんの、チッチさんの姿をライブで見せてくれたから、だと思うんだーーー。
私にもいつか来る終わりは怖くはないって思ってたけど。それはいつかって思ってるからだ、恥ずかしいな。
いつかって永遠じゃないのだよ。
そのとき、私は私の姿でいたいからあの姿を胸に。
今日も歩くよー。
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