所ジョージ、星野源、松重豊が植木等を語り合う(おげんさんのサブスク堂)

てれびのスキマ

テレビっ子のライター“てれびのスキマ“が、昨日観た番組を記録する連載「きのうのテレビ」。バラエティやドキュメントの中で起こった名場面、名言、貴重な会話の数々を書き留めます。2020年から毎日欠かさず更新中。

『おげんさんのサブスク堂』(6月28日放送)

ゲストは引きつづきジョージおじさんこと所ジョージ。星野源、松重豊も植木等が大好き。

特に所は、正当な後継者的存在として公私共にかわいがられていたため、エピソードが広く深い。この手の番組で植木の曲を振り返る際にはなかなか流されない「ショボクレ人生」が紹介されたのもとてもいい。そして植木と所が共演した『オヨビでない奴!』の映像が。それを観ながら所が泣きそうな表情になる姿に胸がいっぱいになった。アドリブも多かったという植木を思い出しながら所「だって植木さんってこのシーンだけじゃなくて、ほとんど笑って出てくるんですから!」。

そんな植木の“美学”を受け継いだ所は植木から「所はいいなぁ、そのまんまだから」と言われたことをうれしそうに語る。ほかにも『アルフ』の話や、黒澤明との話など濃厚。「人は枠に入れられたほうが喜びがあるね。お好きなだけどうぞって言われると全然おもしろくない。この中でうまくやるんだっていうのがすっごい楽しい」と語るあたりに、所の真髄を感じた。

将来のことは「その日の夕飯のことまでしか考えない」という所は「一日のピークが夕飯」で夕飯は自宅で食べるのがこだわり。だから収録も夕飯に帰れる時間までと釘を刺していたそうで、所が夢中になって話をしているときに「所さん晩ごはん間に合わないです」という見たことがないカンペも出たそう。しかし最終的にはこの空間が居心地がよかったのか「OKです」とカンペが出ると、終わるのが名残惜しそうにしていたのが印象的だった。

『100分de名著』(7月3日放送)

柚木麻子が解説する林芙美子の『放浪記』。伊集院は『放浪記』といえば森光子がでんぐり返ししているイメージだと言うと「舞台版の『放浪記』は森光子さんのフェス」と柚木らしい言い回しで原作との違いを語る。これ以外にも「『放浪記』は当時のSNS」「マルチバース的作品」「執拗に改稿を重ねてます。もはや魔改造」「芙美子が『黒歴史』と言っている作品がとても好き」「ラップみたいで痛快」「彼女にとっての悪(ワル)は生き抜くためのツール」など、ユーモアあふれる語り口でわかりやすくておもしろい。

もちろん同時に「忘れてはいけないのは貧困とメンタルヘルスの関係の問題。当事者じゃない人は見落としがち。芙美子はとても貧しい出身で、そういう人にはついマジョリティは我々が思う貧しい人であってほしい、応援できる人であってほしいっていうバイアスみたいなものがかかるってことを一回考えた上で、当事者の声だと思うと芙美子の発言は真っ当」と深く切り込んでいくことも忘れずとても興味深かった。

『内村と相棒』(6月28日放送)

芸能人が作詞作曲に挑戦する企画「ソングライターズ」で、野呂佳代が同期で親友の大島優子との関係性を歌った「肩にインコ」が好評だったため配信でリリースされることに。

そのMVを野呂自らが監督となり撮影。自分で絵コンテまで描き、スタッフの提案も「嫌です」とはっきり言う。「無知でごめんなさい」と謝りながら教えを請う野呂。LINEやリモート会議で毎日のようにスタッフとやりとりする姿は真剣そのもの。いよいよ本番となり「技術的なことがまったくわからないのに、画だけは浮かんでいるというちょっと生意気な状況なんですけど、ご協力いただいて、やりたいと思います」と挨拶し撮影開始。

恐らく俳優としての成功も自信となり、スタッフにも物怖じせずに自分の意見をしっかり言えているのだろう。出産後で仕事をセーブしている大島優子も友情出演。「自分の意思がちゃんと入ったものってたぶん初めてなんですよ。30代ラストでもっと大人にならないといけないって思っていたときにいい体験をさせていただいた」と充実感いっぱいに語る姿が頼もしかった。

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てれびのスキマ

1978年生まれ。ライター。テレビっ子。著書に『タモリ学』(イースト・プレス)、『1989年のテレビっ子』(双葉社)、『笑福亭鶴瓶論』(新潮社)、『全部やれ。日本テレビ えげつない勝ち方』(文藝春秋)など。

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