有吉が蛭子能収と共作、その絵についた価値は?(『有吉クイズ』)

有吉弘行

文=てれびのスキマ イラスト=おさく 編集=森田真規


テレビっ子のライター“てれびのスキマ“が、昨日観た番組を記録する連載「きのうのテレビ」。バラエティやドキュメントの中で起こった名場面、名言、貴重な会話の数々を書き留めます。2020年から毎日欠かさず更新中。

『有吉クイズ』(5月23日放送)

恒例企画「有吉と蛭子さん」の「2023春」。久々の再会に「お元気そうで」と有吉が言うと、蛭子「有吉さんが来たから」と返す。

今回は、現代アートのギャラリーで絵を観たあとで、気持ちが乗ってきたら一緒に絵を描くことに。村上隆やZOEなど色鮮やかな絵に反応する蛭子。いざ、絵を描き始めると最初はZOEの絵をマネして描いていた蛭子だが、有吉と一緒に描くことでだんだんとスイッチが入っていき、蛭子の画風になっていく様がスゴかった。自発的にペンを動かし始めた蛭子を息を飲むように見守る有吉。

1年前に描いた有吉の似顔絵は蛭子らしさが失われた絵で胸がキュッとしたが、今回、いかにも蛭子風のサラリーマンのような人物画が浮かび上がったときは、得も言われぬ感動があった。時間が経つごとに蛭子の筆が止まらなくなる。「売れるといいですね、1000万くらいで。金儲けしましょう」と笑う有吉に微笑む蛭子。スタジオの小杉「一回も否定しない(笑)」。

そんな蛭子の描いた絵に有吉が色を塗る共同作業。「自ずとついてくるから」などという色塗りの難し過ぎる指示が「天才」のそれ。自宅に持ち帰り彩色する有吉の、その丁寧な仕事っぷりに蛭子への深い思いが感じられる。

後日、空いている部分に蛭子が絵をつけ足す。それをスタジオで「ザ・蛭子さん」「ほら、スゴいんだよ」と呟きながら見守る有吉の優しい表情にグッとくる。絵と一緒に「わたし もう きついいぃ (つ)かれた やすむ」という文字も書き加える蛭子。「ヒドいだろ」と笑う有吉はうれしそう。

アートオークションの専門家に、その絵の価値を見てもらうことに。誰が描いたかを知らない副社長が「マンガの影響があるのか」「わからない部分があるのが魅力」「ひとつの物を極めた人が描かれている感じ。わからないものを描いているとしたら、本人もわからないかも……。それを素直に描けるのは芸術的な領域を極めた人。昨日、今日の人の絵じゃない。成熟したいろんな経験を積んだ人の絵」と評価していたのが慧眼だった。

事前に知らされていた社長が「アートとしての価値はない」とする一方で、この副社長は150万円の評価。実際にはアートはその背景が加味されるものだから、もっと価値が出るのではないだろうか。というか、そんなことを抜きにしても、完成した絵はふたりのさまざまな思いが凝縮されていて本当に素敵だった。

150万の評価を伝えると「高いですね。150万、デカいねえ」とうれしそうにしつつ、すぐに「売る」と言いそうなところを「売りたくはないね」と答える蛭子。その真意はわからないけれど、有吉との共作をとても大事に思っているんじゃないかなと想像すると胸がいっぱいになった。

『スーパー山添大作戦』(5月22日放送)

先週に引きつづき「いい人の皮を被った極悪人」ライス関町の“本性”を山添が暴く特別企画。「よくぞ気づいてくれた」と相方の田所。「全然怒らない優しい方」みたいに言われるたびに震えていたという。

山添は関町を、自分のほうが悪い話なのに、相手のほうが悪い印象で終わるように話す「トークペテン師」だと評す。実際に「自分が100%悪いんだけど……」と話し始めた関町は、まさに山添の解説どおりのトーク術。前編ではしずる村上を怒らせてしまった話をしていたが、後編ではフジモンを怒らせてしまった話。しかし、いずれもいつの間にか怒ったほうが器が小さいように聞こえてくる。それを裏で聞いていたフジモンがサプライズで登場。かわいがっている後輩の思わぬ性悪っぷりに、「ここ何年かで一番動揺してます」。

そんな関町をフジモンが、「質の悪いナダル」と表現していたのが秀逸だった。『キングオブコントの会』で一番多くコントに呼ばれていたり、ここ最近露出が激増している関町。いよいよ彼の「人」がバラエティ番組でも出始め、テレビタレントとしてもブレイク前夜という感じがする。

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  • 【連載】きのうのテレビ(てれびのスキマ)

    毎夜ライフワークとしてテレビを観つづけ、テレビに関する著書やコラムを多数執筆する、てれびのスキマによる連載。昨日観た番組とそこで得た気づき、今日観たい番組などを毎日更新で綴る、2023年のテレビ鑑賞記録。

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てれびのスキマ

1978年生まれ。ライター。テレビっ子。著書に『タモリ学』(イースト・プレス)、『1989年のテレビっ子』(双葉社)、『笑福亭鶴瓶論』(新潮社)、『全部やれ。日本テレビ えげつない勝ち方』(文藝春秋)など。

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