東野幸治が「松田優作の再来」と評す小峠英二の飲み歩き(てれびのスキマ)

「キングオブコント」優勝から10年のバイきんぐ。結婚、家族、中年男性としてのライフプラン

トップ画像=バイきんぐインタビューより

文=てれびのスキマ 編集=鈴木 梢


テレビっ子のライター“てれびのスキマ“が、昨日観た番組を記録する連載「きのうのテレビ」。バラエティやドキュメントの中で起こった名場面、名言、貴重な会話の数々を書き留めます。2020年から毎日欠かさず更新中。

『不夜城はなぜ回る』

夜中に小峠が見知らぬ店を飲み歩く「小峠英二 不夜城を飲み廻る」第3弾。小峠が「この店いいね」と最初に入っていったのは大森の「豚番長」というお店。店に入るとなぜか三角コーンが置いてあり、そんなところも気に入ったよう。夜10時に制服姿の高校生が歩いているのを見て「荒れてるよねえ(笑)。いい街だな」。

店の客からサインを求められ、客は飲み終わってからでいいと配慮するも「全然今でもいいですよ」「なんでも大丈夫です」と一緒に写真撮影にも応じる。

いつの間にか合流した謎の男性に「変な絡まれ方しないんですか?」と聞かれ、そういうこともあるが「別にいい。めんどくせぇけど」とそっけなく語る小峠。「こういうところで飲んでてさ、『すみません、それは』っていうのはダメじゃん。じゃあ、飲むなよって話じゃん」。

ちなみにこの謎の男性は会話の内容や一瞬カメラが向けられたりすることで、徐々に後輩芸人の小仲くんであることがわかるが、いつもどおり小峠がカメラに向かって説明することもテロップやナレーションなどで補足することもない。

普段は短時間で店を変えて、いろいろな店を飲み歩く小峠だが、居心地がよかったのか珍しく2時間以上滞在。その居心地のよさの理由を椅子ではないかと小仲くんに指摘され「背もたれ! あー、背もたれあるか!」と声を上げるのがおもしろかった。

トイレに行ったときに音が聞こえたという小峠らしい理由で、2軒目はレゲエバーに。店に入ると、「おい、小仲、めちゃくちゃいい店だぞ」とわざわざ呼び寄せて言う小峠。「デカボリュームがいいよ」と。音楽にノッて体を揺らす小峠が完全に店と溶け込みつつ、めちゃくちゃかっこいい。

東野も「男前でカッコよくて音楽好きで」と評し「松田優作の再来やね」とたとえた上で「ホンマやったら革ジャンも暑いから脱いでもいいけど、最後まで襟立てて」とその美学を絶賛。プジョルジョDのVTRは彼の人柄そのままに暖かさが詰まっているが、小峠のVTRもぶっきらぼうでいて壁がない彼の人柄そのもの。バカリズム「ずっと観てたい。編集なしの素材が欲しい(笑)」。

『クレイジージャーニー』

2015年以来8年ぶりに登場の洞窟探検家・吉田勝次。久々だが、番組屈指のインパクトでよく覚えている。

前回は、吉田自身が撮った映像を使っていたそうだが、今回はスタッフも同行。小池は「ゆるい生活を送って太ってる人しかいない(笑)」と心配するが、実際、最初に行ったスタッフは吉田からNGが出たそう。ロープテクニックのような技術や体力はもちろん、「一番大事なのは性格」だと語るところに、過酷な旅をしつづけてきた経験が垣間見える。

先日『激レアさん』に出た「看護師と洞窟探検家の二刀流をやっている人」も吉田のチームの一員だったはずだが、確かにひたすら明るかった。「限られた仲間だけで生活するから朗らかで、できればおもしろい人がいい」だという吉田自身がやはり明るい。「洞窟の中に光ありなんです、僕が(笑)」。

今回はラオスのまだ名前すらわかっていない人類未踏の洞窟。現地で食事をしている際、最後の食事になる可能性あるね」と微笑む吉田に「冗談ですよね?」とディレクターが言うと、それには答えないのが恐ろしい。

実はこの洞窟、3年前にも政府の許可を得て入ろうとしたが、村の警察に捕まってしまったという。そのため今回は手土産を持って村長と交渉。が、決定権はシャーマンにあるという。シャーマンは前回のことをよく覚えていて「精霊の怒りを鎮めるために豚を15頭丸焼きにして祈った」と語る。現地の人にとっては特別で神聖な洞窟。恐ろしい伝承があり、近づく者はいないという。それを聞いて人類未踏なことを確信し、逆にテンションが上がる吉田。吉田も現地の人も洞窟を神聖視するのは同じでもまったく捉え方が違うのがおもしろい。

入口は直径30mの巨大な穴。そこから60mの滝になっている。そこをロープ1本だけを頼りに降りていく。本当に恐ろしい。しかし、下まで辿り着くと「地球じゃないみたい」な絶景が広がっている。けれどもちろんこれで終わりではない。「行けそうなところ行けるところまで行く」のが洞窟探検のスタイル。命綱もないなかで岩場を登り、120mの高さにいることも。吉田はともかくディレクターがついていくのはかなり危ない。と思ったら、吉田も一瞬、足を踏み外しそうになって怖かった。

が、2時間半進んであえなく行き止まりに。それでも「この景色、俺たちしか見てない。贅沢以外の何物でもない」と語るところに洞窟と彼自身の人としての魅力が詰まっている。

そんななか、ディレクターが「足の裏がグジュグジュ」になってしまったと話すと顔色が変わる吉田たち。「塹壕足」の症状で「ヤバい、歩けなくなる」と。慌てて足にベビーパウダーをふりかける。そんな危機的状況にもかかわらず「すごいいい匂い」と脳天気に言っているのを見て、「一番大事なのは明るさ」と吉田が言ったのが身にしみてわかった。 本命である別ルートの探索は撮れ高があり過ぎたため次回へ。松本が「これをテレビでタダで観れるってすごい」と言っているものすごいものが観れそう。

この記事の画像(全1枚)


この記事が掲載されているカテゴリ

てれびのスキマ

Written by

てれびのスキマ

1978年生まれ。ライター。テレビっ子。著書に『タモリ学』(イースト・プレス)、『1989年のテレビっ子』(双葉社)、『笑福亭鶴瓶論』(新潮社)、『全部やれ。日本テレビ えげつない勝ち方』(文藝春秋)など。

QJWebはほぼ毎日更新
新着・人気記事をお知らせします。