『M-1アナザーストーリー』ウエストランド井口が母親に優勝報告も「泣く気はしないなあ」(てれびのスキマ)


テレビっ子のライター“てれびのスキマ“が、昨日観た番組を記録する連載「きのうのテレビ」。バラエティやドキュメントの中で起こった名場面、名言、貴重な会話の数々を書き留めます。2020年から毎日欠かさず更新中。


『M-1アナザーストーリー』

優勝したウエストランドの漫才中「『M-1』もウザい! 『アナザーストーリー』がウザい!」という言葉もあったことで俄然、注目を浴びることとなった今年の『アナザーストーリー』。優勝直後、移動するエレベーターの中で「『アナザーストーリー』です」とカメラを向けられ「あーすみません」と苦笑いし「1ミリも泣けそうにないですけど」と言う井口、そんなシーンから始まる。

決勝当日、タクシーで局入りする吉本の芸人たちに「なんでタクシーなんだよ! 電車だよ!」とさっそく悪態をつく井口。YouTubeで公開された『アナザーアナザーストーリー』でも、井口は終始、しゃべりつづけ、楽屋を盛り上げていた姿が印象的だった。

準優勝のさや香は、昨年の予選中、ボケとツッコミを代えるという決断を新山が下した。それを「相談」ではなく「通達」されたと石井が表現すると「なんでそんな俺を悪者にするん?」と口論を始めるふたり。それはマジのトーンの口論なのだが、そのまま漫才っぽくあるのもスゴかった。石井「あいつが考えることとかやることが間違いなくオモロいから、そこにベットすると思ってコンビ組んでいるんで」。

さや香
(C)M-1グランプリ事務局

そんなさや香の1本目を見て「ここは伸びるぞ」「完全にいったな、天井知らずだ」と呟く井口。こういう舞台裏でボソッと言うひと言などが一番この番組で観たいところ。

「アナザーストーリーをぶち壊すためにやってきた。カメラの前で肩組んでウィッスみたいにやれば簡単に信じる。簡単ですよ、そう思うと。心配ですよ、日本が」と言うように、相方への思いや感動に振れるような話題には警戒してか口が重い井口。そのためか、番組では河本の結婚披露宴での井口のスピーチを持ってくる。

「(河本の)いいところが見つからないのは、僕が相方という近い存在だからかもしれません。近いというより、中に入り込んでいるような感覚です。コンビを組んだ時点である種、同じ人間になってるようなものだと思います。こいつの人生は僕の人生でもあります」という井口の言葉は、相方という何にもたとえようのない関係性をよく表している。さや香もウエストランドも仲がいい・悪いでは片づけられないふたりの関係がとても味わい深い。

かつては「興味がないから『M-1』がどういうものなのか、たぶんすごいとも思ってない」と妻子に一時出ていかれたが、優勝後にはすぐにメッセージが来て、翌日昼には帰宅し、家族から迎えられる河本。一方、井口はひとり部屋に帰り「誰もいないから、帰ってきたとて、なんだよなあ」と呟く。そこに添えられたBGMは、大橋トリオの「生まれた日」。相変わらず選曲が抜群。井口は小学校のときからあだ名が「ツッコミ井口」で、他校の生徒からも「ツッコんで下さい」と言われるほど有名だったという。背が小さいことを母親からも心配されたが、「芸人だったら武器になるけどなあ」と子供ながらにポロッと言ったことが「原点」かもしれないと井口は言う。

そしてスタッフに促されたのだろう、母親に電話。母は敬語でどこか素っ気ない対応。電話を切ると「フフッ」と思わず笑ってしまう井口。「泣く気はしないなあ、やっぱ」。

常に「芸人」であろうとする井口と『アナザーストーリー』との画面の行間からも伝わるせめぎ合いがとても刺激的でおもしろかった。

M-1&M-1アナザーアナザーストーリー、選曲リストをYouTubeプレイリストで公開中

『カワシマの穴』

『アナザーストーリー』の後半ごろから裏で始まった番組。「川島さんに1日密着したVTRを観てもらう」とスタッフが企画趣旨を説明すると、MC席に座る川島は「密着されてないのよ」と困惑。VTRが始まると確かに顔は川島だがどこか違和感がある。「何これ?」と混乱する川島。その後、顔だけは川島だが、体型が変わったりする。おそらく「ノブ違和感」などで使われた技術で作っているのだろう。「やってるわ、やってるのに雑やわ」とツッコむ川島。

そのあとは、明らかに中身がJPだったり、また中身が入れ替わり、いきなり公園で鉄棒や跳び箱を始めたり、とカオスな展開。そして最後はあの男がさらに暴走していく。『アナザーストーリー』の裏で「芸人密着」というテイで遊びまくっていた。川島「(スタッフ)全員の顔を覚えました。自分らここ座ってみ。2キロ痩せんで(笑)」。


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  • 【連載】きのうのテレビ(てれびのスキマ)

    毎夜ライフワークとしてテレビを観つづけ、テレビに関する著書やコラムを多数執筆する、てれびのスキマによる連載。昨日観た番組とそこで得た気づき、今日観たい番組などを毎日更新で綴る、2021年のテレビ鑑賞記録。

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てれびのスキマ

1978年生まれ。ライター。テレビっ子。著書に『タモリ学』(イースト・プレス)、『1989年のテレビっ子』(双葉社)、『笑福亭鶴瓶論』(新潮社)、『全部やれ。日本テレビ えげつない勝ち方』(文藝春秋)など。

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