テレビっ子のライター“てれびのスキマ“が、昨日観た番組を記録する連載「きのうのテレビ」。バラエティやドキュメントの中で起こった名場面、名言、貴重な会話の数々を書き留めます。2020年から毎日欠かさず更新中。
『あちこちオードリー』
パンサー向井に加えて、さらば青春の光、みなみかわ、村重杏奈、松丸亮吾を迎えて「年間反省ノート大賞」。その中でもやはり「反省大王」向井の“反省”がとりわけ深かった。
尾形MCの『笑わない数学』のギャラクシー賞受賞を素直に喜べなかったという向井。ラジオをたくさんやって満たされているはずなのに、なんで自分は幸せを感じるのが下手なんだろうと思った向井は、ニーチェの本を読んだそう。
そこには、幸せを感じるには「自分のことを大したことないと思わない」「まわりの評価を気にしてはいけない」「反省なんかするべきではない。ましてや日記なんかつけるな」ということが書かれており、「逆ニーチェだった」という向井。「“凡人の最高傑作”であれば、それが自分の自信とかプライドに変わるだろう」と思い直したという。
ラジオで多忙過ぎて、ラジオ以外で誰ともしゃべっていないという向井は、「ラジオのことを絶対に今日は考えません」という日を作った。すると、おもしろそうな映画を観たり、おいしそうなご飯屋さんに初めて入ったりしたら、ラジオでしゃべっちゃうと思って行けなくなってしまったと。
そうして「結局、そういう日を過ごしたということをラジオでしゃべってしまった」と“ラジオの呪縛”に囚われてしまっていると語る。それを聞いて「怖い怖い、『笑ゥせぇるすまん』読んだときの怖さ!」と若林。
今年は「ラジオの周波数に飲み込まれないようにしよう」とプライベートも充実させることを決意した向井は、なぜか「ピアスを開けに行く」という。「おかしなってるって!」と東ブクロが言うと「自分に穴開ける以外、やることない!」と向井。
若林は「ラジオってやり過ぎちゃうとピアスが開くんだね」と苦笑い。森田「全然意味わからん。ニーチェが言ってたん? ピアス開けなさいって?(笑)」。
ほかにも若林が「休みの日は洞窟に入ってたい」と言っていたり、森田がエロチャットに100万円以上使ってしまったと明かしていたり、売れっ子たちが多忙過ぎてストレスを溜めてしまっているというのがわかって、切ないと同時に、それをしっかり笑いに昇華できるのがさすが。
『あたらしいテレビ』
今回は佐久間宣行とパンサー向井、あの、杉浦アナがさまざまな座談会やインタビューVTRを観ていく形式。その中で特に「現役テレビ制作者」座談会が興味深かった。
メンバーはテレ朝7年目・小山テリハ、テレ東4年目・大森時生、フジ3年目・原田和実の若手ディレクターたちに加えて、彼らを作家として支える竹村武司と、演者として関わっているAマッソ加納。
加納が「40代以上の人のほうが『テレビは終わり』と言いがち」と言うと、「華やかな時代を見ちゃっているから、それと比べてしまう」と40代の竹村が補足。
それに対して、大森が「今、テレビが一番ハードルが低いんで、おもしろいことをやりやすい。基本、YouTubeとかNetflixのほうがおもしろいと思われてるので、テレビでちょっとおもしろいことをやるとすごくおもしろいと思われやすい」と堂々と言い放つと、そのVTRを観ていた佐久間「いいでしょ、生意気でいいでしょ(笑)」。
昔は「衝動で作ってる」ものが多かったが、今は作る理由が必要になっていると竹村は語り、そこに「マーケティング」が入ってきたと。「本格的なマーケティングなのか、なんちゃってマーケティングなのかわからないけど」と添えると、佐久間「竹村さん、なんちゃってマーケティングだと思ってるな(笑)」。
それを受け、若手たちは、「成立」という言葉を一番テレビ局で聞くと口をそろえる。「説明できるものっておもしろくない」と小山。竹村も「企画書を禁止にしてほしい。企画書でどんだけ企画が狭まっているか」と止まらなくなると、佐久間「竹村さん、めちゃくちゃ溜まってるな(笑)」。
そんなたくましい若い世代のテレビマンについて、「テレビが明確に元気じゃなくなった時代にあえて入ってきた人たちだから根性が違う」と佐久間が評していたことに納得感があった。
最後に、それぞれが今後作っていきたい番組を発表。
竹村「ニコラス・ケイジがMCの番組やりたい」。
原田「言語化できない笑いを作りたい」。
大森「感情を強く動かしたい。笑ったあとに、笑ったことを後悔して吐きそうになるものを作りたい。嫌な気持ちにさせたい」。
小山「吐き気を催した人たちが、消す前に留まるような番組を作れたら」。
なんだかワクワクする座談会だった。
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【連載】きのうのテレビ(てれびのスキマ)
毎夜ライフワークとしてテレビを観つづけ、テレビに関する著書やコラムを多数執筆する、てれびのスキマによる連載。昨日観た番組とそこで得た気づき、今日観たい番組などを毎日更新で綴る、2021年のテレビ鑑賞記録。