『紅白』の「若者枠」はどこへ向かう?初出場の韓流グループが選ばれた納得の理由

でか美ちゃん

文=でか美ちゃん 編集=高橋千里


大晦日恒例の『NHK紅白歌合戦』2022年の出場歌手が11月16日に公開された。この発表を受けて、でか美ちゃんが感じたこととは。

「『紅白』内定」という言葉の曖昧さ

世の中には、曖昧そうに見えてはっきりとした意味を持つ言葉があります。

・行けたら行く(※特にこれといった理由はないけど行きません)
・モテそうなのにね(※自分のタイプではないです)
・ぶぶ漬けでもどうどす?(※これ食べたらマジで帰って)

どれも本音を伝えづらかったり、その場をただ乗り切るためだけの会話に使われがちですよね。

ちなみに私は「『行けたら行く』の本気のやつ」という言葉をよく使います。本当に行けたら行きたいのに、こいつ来る気ねぇなって思われたくないので……。みなさんも使ってみてください。

日本語っておもしろい! しかも前述の逆転バージョンとでもいいますか、喜んでいいんだよねこれは……?というなんとも言えないフワッとした言葉もあるのです。

はっきりとした意味を持ってそうで、やんわりと曖昧な「『紅白』内定」という言葉が!

・『紅白』内定(※たぶん、いやけっこうかなりの確率で、『紅白歌合戦』に出ることになりそうです)

先日、正式に『紅白』出場アーティストが発表されましたが、毎年この時期になると正式発表前に報道される「『紅白』内定」ってなんなんだよと思ってしまいます。「『紅白』出演決定!」ではないのが趣深いというか。喜ぶにはまだ早い……のか?みたいな。

情報がちょっとずつ徐々にリークされるあたりもおもしろい。誰が我慢できずに言っちゃってるんだ。関わってる人間、みんな大人だろ、我慢しろよ。会見で一気に知るほうが楽しいだろ。

とか思いながら「『紅白』内定」という言葉をいつも噛み締めています。そして正式発表と共に噛み締め終了です。

でか美ちゃん
でか美ちゃん

内定リーク、実際のところは年末に向けて『紅白歌合戦』にまつわる話題が連続性を持つようにだとか、レコード会社との兼ね合いだとか、一気に発表すると新人が目立たないだとか、いろいろ事情があるんでしょうけど!

やっぱ「『紅白』内定」っていう言葉も意味も状況も、ちょっとシュールですよね。

でか美ちゃんの注目アーティストは、IVEとLE SSERAFIM!

さて、今年の初出場アーティストは緑黄色社会やSaucy Dogなど、今をときめく若手実力派バンドの名前も目立ちますが、私が特に気になるのはIVEとLE SSERAFIM

韓国で活躍する女性アイドルグループです。IVEにはレイさん、LE SSERAFIMにはカズハさん、そして元HKT48の宮脇咲良さんが日本人メンバーとして活躍中です。

両グループ共に『紅白』内定報道の時点で「誰?」や「なんで韓国のグループが?」という声も多く見られましたが、若者の間では今、爆発的に人気なんですよ。

(ちなみに勘違いされがちのようですが、JO1とNiziUはグローバルなユニットでも日本のグループですよ)

国民的歌番組に国民的人気者が出るのは当然のキャスティング。ただ、最近は情報の取捨選択がさまざまな面で可能ですから、そもそも「国民的な人気者」の定義自体がなかなか難しいというか、老若男女全員が知ってるアーティストというのは以前より減ってしまいましたよね。

じゃあ世代別に人気のアーティストを呼ぼう!となったのならば、この2組が選ばれたことも個人的には納得でした。天童よしみさんや山内惠介さんなどの演歌歌手の皆さんが今年も出場されるのも、さまざまな世代へのニーズを感じます。

ちなみに私は30代ですが、Perfumeさんと三浦大知さんが楽しみ! 人生の諸先輩方から「いやあんた、まだ30代のくせにさっき“若者”とか言ってたんかい。まだまだ小童でっせ」という声が聞こえてきそうですが。

しかし、若者ぶるには若過ぎない絶妙な時期なので、今回は自分より10個くらい下の世代を雑に“若者”と括って話していきますよ!!!

「若者枠」への偏見を打ち砕いてくれたTikTok

実は、少し前まで近頃の流行に偏見があったんです。最近流行ってる曲って、流行ってるんじゃなくて、TikTokでバズってるだけでしょ?インターネットの話でしょ?と最年少老害をぶちかましてました。

少なくとも数年前までの『紅白』の「若者枠」に対してはそんな気持ちが少しありました(ほんとすみません)。

でもそうじゃないんですよ。今の若者にとってTikTokは地つづきの現実にあるアプリだからこそ、TikTokで流行ってたらそれはもうリアルでも流行ってるんですよ。

IVEもLE SSERAFIMも「バズり」に留まらず、実際に現実までひとつなぎだから、『Apple Music』や『Spotify』でもランキング上位にいつづけるのだろうし。

IVE「ELEVEN」

そして地つづきにあるからこそ、TikTokを観ていないこと自体にも妙な価値が生まれて、「私もうおばさんだわー」という自虐に使われたり、メインカルチャーじゃないものを好きになれる自分の証明になったりするのです。思春期の私が「『Mステ』観てないアピ」を無駄にしていたときのように……!

そもそも私たち世代のインターネット観は、現実とは地つづきじゃなかったはずです。パラレルワールドのように違う自分を投影できる場所というか。個人情報は死守、本名じゃなくてハンドルネーム、自己顕示は恥ずかしいけど自分語りは隙あらばするぞ!という恥じらいとプライドのバランスを保ちつつ「ネチケット」を守ることが絶対的なルールでした。

でも今の世代はインターネットが当たり前で、もっと距離が近い。だから現実の友達とネットでもつながるし、教室で踊るし、制服で歌うし、エモい曲をバックに友達との思い出動画を作る。ネチケットとかじゃなくて、普通に現実と同じように遊んでる人が多い。

だから、最先端の音楽がそこでそのまま流行り、新世代のスターも生まれる。

LE SSERAFIM「FEARLESS」

かくいう私も、IVEとLE SSERAFIMの曲を知ったきっかけはTikTokでした。

コムドットさんをカジサックさん的な感じでひとりの人間だと思い込んでいたのを機に、さすがに若者の流行に疎過ぎてダメだろ、と反省。共演機会の多い年下アイドルちゃんたちとも話題が合えばいいな、というかなり涙ぐましい理由でTikTokを観始めたのです。

それまではただただ、推してる人のアカウントだけを観ていたのですが……。どんどん流れてくる動画を観ているうちに、

「レイちゃんもかわいいし、イソもかわいいし、ユジン、きれいだよ……」
「サクラが一瞬ギバちゃん(この並びで書くとめちゃくちゃ韓国人メンバーみたいですが、柳葉敏郎さんのことです)みたいな表情するとこ、かっこよくて何回も観ちゃうな」
「カズハがバレエをつづけてたらどうなってたんだろう?」

と、いつの間にかメンバーも覚えてちゃっかり好きになっております。向こうのSNS戦略にまんまと乗っかり中です。アツアツおでんを食べて「ANTIFRAGILE」のサビを思わず歌ってしまうくらいには好きになってるみたいです。あと関係ないけどKep1erのヒカルちゃんもかなり好きです。

LE SSERAFIM「ANTIFRAGILE」

同じ日本人が海外で活躍してるの、すごいなあという気持ちもやっぱりありますね! むしろ日本人ということしか共通項ないのに不思議と応援したくなる(笑)。

素晴らしいパフォーマンスを気軽に観る機会を得て、好きになるきっかけさえあれば世代は関係ないのかもしれません。TikTokで演歌がめちゃくちゃバズれば、演歌の時代が来る可能性だってあるのかも。実際、ポルノグラフィティの「サウダージ」が今流行ってますからね。

普通に学生生活を楽しんで、普通に友達のことが大切で、普通に生きてる若者の姿が普通にインターネット上にあって。SNSがあるからこその苦労も計り知れない世代ですが、SNSがあるからこそ残しておけるものもたくさんあるのかもしれません。

理解し切れない部分も正直あるんだけど! たまにこれは数年後に黒歴史になっちゃうんじゃないかなぁと心配してしまう動画もあるんだけど!(笑)

私の実家引き出しの奥に今もなおある「ELLEGARDEN和訳ノート」や、サービス終了してくれたおかげで命拾いした「前略プロフィール」に比べたら、何億倍もマシでしょう……!

(ちなみに観始めてから気づきましたが、TikTokにはYouTuberの情報はあまり流れてきません! 当然すべての若者文化が知れるわけではないけど、国内アイドルの情報や流行りの食べ物、意外にアニメとかボカロ曲とかも流れてきます。おかげでアーニャがピーナッツ好きなことだけ知っている)

IVE「LOVE DIVE」

そんな若者の現実と地つづきの場所で、大流行のIVEとLE SSERAFIMですから、『紅白』出場も納得なのでした。

そして、なんとかして若年層視聴者を増やしたい!というNHKの意図もビッシビシに感じました。個人的には、日本語バージョンが流行ってたわけではないんだから、普通に原曲どおりに歌ってくれないかなぁなんて思いますが、どうなるのかなぁ。

老若男女が新しい音楽に出会える場所に

そしてここまで書いといてなんですが、日本のアーティスト、アイドルにもやっぱりがんばってほしい! 男女問わず!

テーマが「LOVE&PEACE」なんだから、大好きなハロプロにも出てほしかったなー! ハロプロは愛と平和の二本柱で25年間やってきたと言っても過言ではないので……。

韓国アイドルの洗練された楽曲と耳に残る音、日本アイドルの歌で届けるメッセージの強さ・歌詞の重要性って、音楽的にも棲み分けができていてとてもいいと思うんですよね。

もちろん韓国アイドルも歌詞は素晴らしいけど、日本はやっぱり歌謡曲の国だから、歌詞があってこそのメロディなんですよ。その美しさはほかに代えられないと思います。

そもそも女を紅、男を白って!とか、最近になっていろいろ思うところも増えたんですが、紅・白とすることで男女の出場比率を平等にできてきた部分もあるだろうし、去年から新しくなったロゴと、大トリMISIAさんwith藤井風さんの大団円を観て、『紅白歌合戦』も新しいかたちを探っている最中なんだなと感じたり。

だからこそいろんなアイドルやアーティストが出て、老若男女が互いに新しい音楽に出会える場所になれば最高ですね。

実は『紅白』出演経験があるでか美ちゃんがお届けしました。

・『紅白』出演経験がある(※ゲスの極み乙女さんのバックコーラスという名目で、コーラスができるわけでもないのにかわいがられ過ぎててなぜかうしろにいた。3秒くらい映った。一生の思い出)

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