『激レアさん』と『家、ついて行ってイイですか?』、同じ人物のまったく違う描き方(てれびのスキマ)

てれびのスキマ

テレビっ子のライター“てれびのスキマ“が、昨日観た番組を記録する連載「きのうのテレビ」。バラエティやドキュメントの中で起こった名場面、名言、貴重な会話の数々を書き留めます。2020年から毎日欠かさず更新中。


『家、ついて行ってイイですか?』

早稲田大の卒業式で声をかけたのが、早稲田に9浪して入ったという男性。その経歴と風貌、どこかで見たなと思っていたら、つい先日の5月9日放送の『激レアさん』で「慎重過ぎる性格ゆえに大学受験で石橋を叩き過ぎて9浪した人」として出ていた「ハマイさん」だ!

3帖1間の家賃24000円に部屋に住む「昭和の早稲田生」のような生活をしていた彼は、幼いころに父が早逝し、苦しい家計の中で育てられたため、高校を卒業したら働こうと思っていたが、高校の野球部でイジメに遭い、見返したいと思い大学へ。地元の大学に進学するも、大学生活に絶望。ほかの学生に対し「敵わない」と感じ、「自分に足りないのが学力とか努力した経験」だと思った彼は「何年経っても自分が納得できる大学に入ろう」と決意したという。サラリーマンとして働きつつ猛勉強をし、早稲田に合格した経緯が語られる。

『激レアさん』では「慎重過ぎる性格ゆえに9浪」したと描かれ、なかなか実際に受験しない彼に総ツッコミ。また、会社では営業でトップセールスだったにもかかわらず「営業は才能、勉強は努力」だから「努力」のほうを取り退職したという話に「変な話! 聞いたことない話だわ!」と若林は驚愕。「ちょくちょく弘中ちゃんにKO(慶應)される早稲田の人」とラベリングしていた。

観終わったあとの彼への印象はふたつの番組でかなり違う。けれど、どちらももちろん嘘を描いているわけではない。“真実”がいかに多角的かがよくわかる。そのファニーなキャラクターと可笑しなエピソードに焦点を当てた『激レアさん』に対し、自らの語り口でその内面をまっすぐ描いた『家、ついて行ってイイですか?』。同じ個人史を丁寧に紐解く番組でもそのカラーの違いが鮮明にわかって興味深かった。

『水曜日のダウンタウン』

内容はオンエアまで完全シークレットで実施された今回の企画。「あなたはK.カズミを知っていますか……?」という呼びかけで始まり、有名なネットロアとして「いる・いない論争」が起きていた謎の女性「K.カズミ」を探すというもの。

K.カズミとは、身長213.3cm、体重222.6kg、足のサイズ33.5cmという規格外の巨体で、フライパンを握りつぶし、トランプを引きちぎる怪力を持ち、大食いタレントを3倍以上上回る圧倒的大食い記録を叩き出しているという人物。しかし、メディア出演は一切なく、なぜか「Yahoo!知恵袋」にだけ出没する不可解さ。

番組ではYahoo!知恵袋に投稿された本人とされる人物の書き込みをもとに詳しく人物像を紹介。声はしずちゃん似という記述があることからしずちゃんがアテレコ(カズレーザー「Y.シズヨに!」)、ヨネダ2000の愛が再現VTRに。その怪力エピソードにボディビルダーの清水泰地は「世界中のパワーのある女性に会いましたけどそんな人ひとりもいないです」とあり得なさを証言。彼女が記述した1食の食事量を並べると番組おなじみのフードファイターたちも「えー、給食みたい」と驚愕。ジャイアント白田「僕が命がけでやったことを全否定されたような……」。

正直、こうしたにわかに信じられないような記述だけなら、そんな人物などいないと一笑に付して終わりそうなところだけど、「和食麺処サガミ」の公式HPにある「ざるそば食べ放題」の記録がもしかしたら実在しているのではないか、と思わせる。その記録は、大食いタレントのもえあずが24段、男性の部42段に対し、K.カズミが82段という驚異的なもの。まず、その記録をフードファイターが挑戦。白田が13段、菅原34段、アンジェラ40段と3人がかりでようやく勝負になるレベル。その大食いの最中、サガミ本社に記録が本当なのか確認すると「間違いない」という回答。それを聞いて「信じたくない。大食い界がひっくり返りますよ」とアンジェラ。「ホント悔しい」と涙ぐむ菅原の負けん気の強さが印象的だった。

サガミ全面協力で彼女と対面したことのある社員を捜索。すると噂される巨体ではなく普通体型の女性であるという驚きの証言が。「ある意味そっちのほうが恐ろしい」と松本。記録達成を目の当たりにした社員は「大食いというよりはおいしく食べている感じ」「82段のときは“本気”だった」などと証言。

真実と虚偽が入り交じりながら、その正体の断片が少しずつ判明していき、ついに「本人」にコンタクトを取れる人物が現れ直接取材へ……という展開が『水曜スペシャル』や『木曜スペシャル』を彷彿とさせるようなワクワク感があった。そこで語られる“真相”も興味深いもの。テレビの取材力、影響力の、バラエティとして“正しい”使い方だなと思わせる刺激的な1時間だった。


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1978年生まれ。ライター。テレビっ子。著書に『タモリ学』(イースト・プレス)、『1989年のテレビっ子』(双葉社)、『笑福亭鶴瓶論』(新潮社)、『全部やれ。日本テレビ えげつない勝ち方』(文藝春秋)など。

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