伊集院光、テレビでラジオを語る。ナイナイは「レベルが違う」(てれびのスキマ)

伊集院光-奥森皐月

テレビっ子のライター“てれびのスキマ“が、昨日観た番組を記録する連載「きのうのテレビ」。バラエティやドキュメントの中で起こった名場面、名言、貴重な会話の数々を書き留めます。2020年から毎日欠かさず更新中。


『アンタウォッチマン!』

「芸人ラジオ」を特集。スタジオゲストに伊集院光。「テレビでしゃべるのドキドキする!」というように伊集院がテレビでラジオのことをガッツリ語るのはあまりにも貴重。しかも自分の番組ではなく他番組のことも含めて語るのは異例ともいえる。

たとえば『ナインティナインのオールナイトニッポン』について。番組を聴いたことあるかと問われ、「怖くて聴けない」と答える伊集院。評判のいいラジオ番組を聴いて感化されるのが嫌だと。

2部から始まったがすぐに上がるだろうという雰囲気だったと伊集院。事実わずか3カ月で昇格。「自分たちは叩き上げだから負けたくないという思いはあるんだけど、むしろ今考えると異常なスケジュールのなか、ナイナイはラジオをやっていた。よほどのことがない限り生放送でやるって決めて、あの年月、スターのままクオリティの高いラジオをずっとハードスケジュールのなかやっていくのはちょっとヤバい。レベルが違う」と絶賛。

構成作家の小西マサテル、プロデューサーの冨山雄一の証言を交え、ナイナイのラジオの取り組み方を紹介。ハガキ選びにもふたつのタイプがあり、作家が選んだハガキを読むタイプと自分で選ぶタイプとに分かれるが、岡村は後者。「下読みをちゃんとして矢部君や構成作家の反応を見ながらやってる。スターがあれをやるのはすごい大変」と伊集院は評す。

爆笑問題はVTRで証言。最も影響を受けたものとして「『ひょうきん族』よりも『THE MANZAI』よりも『オールナイトニッポン』のビートたけし」だと太田は語り、ラジオは「(たけしが)一番才能が発揮できる場所」だと言う。

伊集院も同様のことを話した上で「2時間の中でたけしさんも笑いじゃないことを急に言ったりする」と振り返る。たとえば「芸人なんか全部うんこだ。だったら少しでも便器にこびりついてやろうと俺は思ってる」といったたけしの言葉を聴き、「テレビでは絶対言わないすごいことを聴いた」と震えたという。

『爆笑問題カーボーイ』については伊集院が「田中さんが本当にどうかしているということが月に1回くらい表に出ちゃうのが一番の魅力」と評し、その一例として田中の脱糞事件を紹介。

また、同番組で起きた珍事件として「700回記念」として放送したのが「500回」だったとリスナーからのメールで判明したエピソードが爆笑問題の口から語られる。「ステイゴールドだっけ?」とそのハガキ職人の名を挙げると、自身の番組でも常連だったためアンタッチャブルも「ステイゴールド!」と声をそろえて反応していたのがラジオのパーソナリティとリスナーの深い関係性を感じてとてもよかった。普通の番組ではカットしそうなそのひと言を残しているところにこの番組のテーマに対する真摯さも窺える。

ほかにもおぎやはぎの証言や、震災後のラジオでのサンドウィッチマンとバナナマンの「マン一族」の絆のエピソードなど充実の内容。しかも次回は「ラジオ新時代」と題してオードリー、ハライチ、三四郎らが登場するという。

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『クラシックTV』

『マジンガーZ』などのアニメ作品、『ギャバン』や「スーパー戦隊シリーズ」などの特撮ヒーロー作品の音楽を数多く手がけた作曲家・渡辺宙明特集。1925年生まれの96歳だが、いまだ現役。言葉も記憶もしっかりしていて各楽曲にまつわるエピソードがよどみなく出てくる貴重な回だった。

渡辺がこれまで映像作品に提供してきた音楽の一覧パネルは壮観のひと言。たとえば、1963年は映画が9本、ドラマが10本という多作っぷり。ずっと映画音楽をやりたいと思っていたが、『キカイダー』がアニメ特撮作品に関わるようになったきっかけだったそう。

『マジンガーZ』は「Zのテーマ」を主題歌として提出したところ制作部長から「ちょっと弱い」とダメ出し、その翌日には「マジンガーZ」を作っただとか、ファンから「宙明節」などと呼ばれるその楽曲のキモには「日本の音階にも近くてロックなんかの基になっている」という「二六抜きの音階」、つまりシとファを使わないことにあるだとか、濃密な内容。

清塚信也によるクラシックアレンジした渡辺宙明作品のピアノ演奏もとてもよかった。今後やりたいことを聞かれ「こういっちゃあれですけど過去の作品はたくさんありますから印税はクッと入ってくる」と笑う茶目っ気も最高だった。

【関連】伊集院光、オードリー、山里亮太は何を話していたのか?【芸人ラジオの初回放送を振り返る①】


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  • 【連載】きのうのテレビ(てれびのスキマ)

    毎夜ライフワークとしてテレビを観つづけ、テレビに関する著書やコラムを多数執筆する、てれびのスキマによる連載。昨日観た番組とそこで得た気づき、今日観たい番組などを毎日更新で綴る、2021年のテレビ鑑賞記録。

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1978年生まれ。ライター。テレビっ子。著書に『タモリ学』(イースト・プレス)、『1989年のテレビっ子』(双葉社)、『笑福亭鶴瓶論』(新潮社)、『全部やれ。日本テレビ えげつない勝ち方』(文藝春秋)など。

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