銀シャリ・鰻和弘は燃えている人間。“真面目”と“ヤンキー”ふたつの顔と、漫才論を橋本が爆語り【魅惑の相方 vol.3 ANSWER】

文・編集=佐々木 笑 撮影=TOWA


お笑いコンビに、相方の魅力を語ってもらう連載「魅惑の相方」

先手の鰻は「普段からよくしゃべるので、相方が知らない“褒め”はない」と前置きし、楽しそうに橋本の魅力を語ってくれた。

鰻の思いを受け、橋本はどう感じるのか。連載の本筋である<相方の魅力>から、普段はあまり話すことがないという<銀シャリ漫才論>まで。実は世間体を気にせず、不真面目にお笑いを楽しむことを大事にしている彼は、生き生きとした表情で、リズムよくお話ししてくれた。

「自分は銀シャリの大ファン」と、自身のコンビへの愛情を吐露したラストの文言は衝撃的なまでにアツいので、ぜひ最後まで熟読いただきたい。


言語自体のおもしろさに気づかせてくれたのは、笑い飯・哲夫さん

銀シャリ橋本

──鰻さんのインタビューは読まれましたか?

橋本 読みました! でも、鰻が言ってたとおり普段からふたりでしゃべってるから、「こんなこと思ってたんや」とか「なんか照れるなあ」はなかったですね。

──何か新しいものをお土産したかったのですが、全部知っていましたか(笑)。鰻さんの取材では、こんなにも橋本さんのことを思っていたとは……と、正直ビックリしました。

橋本 そうですよね、わかりにくいですよね。

──たくさん魅力を聞いたので、ひとつずつ振り返って、感想をお聞きしていきたいです。

橋本 あの……これって、笑いとかじゃなくてちゃんとしゃべっていいんですよね? 第2弾の(天竺鼠)川原、真面目に答えてました?

──驚くくらい真面目にお話ししてくださいました。お笑いナシで大丈夫です。

橋本 あ、じゃあ(笑)。でも、こんな取材久しぶりですよ。僕たちあんまり、お笑いを語ってないかもしれないですね。ファンタジーを大事にしているから、裏側をあんまり言ってないかも。

──銀シャリさんが語るお笑いの裏側、貴重過ぎます。

橋本 本当ですか? なんかね……人気がほしいんですよ(笑)。人気者になってみたいですねぇ。いっつもなんか、渋い系なんで。

──もうじゅうぶん人気者だと思うんですが、いわゆるワーキャー人気ってことでしょうか?

橋本 いや、なんとなくね……むずかしいところですけどね……。すみません、取材続けてください(笑)。

銀シャリ橋本
橋本 直(はしもと・なお)。41歳。人気がほしいと言うが、ファンクラブ『銀シャリふぁん倶楽部』も好評で、すでに高い人気を持っている

──まず鰻さんから出た橋本さんの魅力が、「日本語力」でした。想像を掻き立てる話し方をするには、何かコツがあるんですか?

橋本 自分では、日本語力があるって感覚はあんまりないんですけどね。語彙力も別に。映像をお伝えするのは好きなので、語彙力があるから伝わってるというよりは、映像を表現することが伝わってるのかなって思ってます。好きなんで、“たとえ”も多いかな?

──その“たとえ”のひとつひとつに、難しい言葉を使ってるわけではないという。

橋本 そうですそうです! 語彙力を巧みに使ってるわけじゃないってことです。

──難しい言葉を使うと、わからない人も増えてしまいますもんね。

橋本 そうですね、なので全員がわかる言葉で。でも、変な言葉も好きやから「これは伝わらんやろ」って難しい言葉も、あえて使ってしまうときはあります。こっちの音がおもしろいからっていうので。

──音なんですね。

橋本 「励ます」っていうよりは「鼓舞する」って言ったほうが僕は好き。「矛盾」を「パラドックス」って言うのもなんかいいし、「みだりに人を傷つける」の「みだりに」ってなんなん?とか。

──その変なワードって、事前に考えておくわけではなくて、その場その場で出てくるんですか?

橋本 使おうと思って溜めてるんじゃなくて、どっかで自然に溜まってるんやと思います。漫才自体のおもしろさもありますけど、言語自体のおもしろさってあるじゃないですか。難しくておもしろいわけじゃなくて、なんなんそれっていう響きのが好きなのかもしれないです。

──そういう分野で、橋本さんが尊敬しているのはどなたなんでしょう?

橋本 フットボールアワー後藤(輝基)さんとか、南海キャンディーズ山里(亮太)さんとか、たくさんいます。笑い飯の哲夫さんから、言葉のおもろさみたいなんは継承されてる気がします。「こういうところおもしろがっていいんや」みたいな、言語自体のおもろさを気づかせてくれたのは哲夫さんかもしれないですね。普通の文章でもちょっと硬く言ったりとか、それだけでまだ笑いが生まれるんやっていう。

──それがツッコミのワードだとしたら、ツッコむだけでもおもしろいのに、さらにもう一個笑いが乗っかるから無駄がない、みたいな?

橋本 やらしくなり過ぎてもダメなんですよ。「その水ください」っていうのを「H2Oください」って言ったらやり過ぎなんですけど、「軟水ください」って言ったら「軟水か硬水かわからんやろ」ってつながるから、これはおもろいなとか。

昔は伝わる・伝わらないも意識してましたけど、今は言いたかったら言ってる感じですね。もう、漫才も一語一句はあんまり決まってないです。今日やった漫才も、舞台上でしか出てないワードが10個ぐらいありました。

銀シャリ橋本
取材もルミネtheよしもとの出番合間に行い、この日も漫才まみれの橋本だった

しゃべくり漫才は、地の延長線上でいきたい

──漫才では主に、橋本さん発信で新しいことが起こっていく?

橋本 ツッコミとか、ツッコんで次に行くまでに2個プラスでツッコんだりとかもします。そっちのほうが楽しいし、そう進めてもよくなってきた。そのときのお客さんの空気が違うのに決まりきっているセリフを言うと、やっぱり合わないんですよね。だから、その場で思ってることを言うのが一番ベスト。

──決めていた時期はあるんですか?

橋本 全然あります。それがあったから、今がいいとも思います。たぶん、型できてないのに逸脱するとグチャグチャなピッチングフォームになるんですよ。一語一句決めて、秒数と間とかを研磨していったらいいと思うんですけど、今はそれが板につかないというか。気持ち悪いんですよね。しゃべくり漫才は、地の延長線上でいきたいっていうのがあるんです。

それが、しゃべらされてる・決まってる言語だと違うんですよね。『ダンスダンスレボリューション』みたいな感覚です。自分で練習した完璧な間でも、お客さんはバチどこで来るかわからんし、今日のウケはちょっと遅いとか、早く笑いが来るとか、そのときのお客さんの層でグルーブ感が違うんですよ。でも、決まってると、再生ボタン押すだけみたいな感じになるじゃないですか。

──そうなると、どういうタイミングでウケが来ようが、やることは同じですもんね。銀シャリさんの漫才は台本を感じず、全部アドリブなんじゃないかと思うときすらあります。

橋本 それが一番理想です、ホンマに。「今日、もしかして一個も決めずに来た?」って思われるのがベストですね。

──雑談のような。

橋本 だから、「ネタ合わせ」「練習」とかもあんまり言いたくないんですよね。芸人がネタ合わせしているのって、お茶の間全員がわかってる事実ではあるんですけど、「どうもー」って出てきたからには、そのことをみんな一瞬忘れて、謎のファンタジーに入るじゃないですか。そこを保ちたいっていうのはあるかもしれないですね。練習してないかのような立ち話は理想です。


鰻は、ファンタジーを保てる汁が出てる

──鰻さんは「もっと自分が自然にできれば」とも。

橋本 そうですね、鰻はまだそこを自分で言ってるので。

──橋本さんから見てどうですか?

橋本 真面目なんですよ、むちゃくちゃ。で、僕がむちゃくちゃ真面目じゃないんですよ。決め決めがあんまり好きじゃないというか。僕らって、鰻が漫才の筋とかキッカケを言うことが多いんです。普通はツッコミがそれもやること多いし、筋を言うのは難しいと思いますけど、「これ言わな」とか思い過ぎてるから、足りてない遊び心を逸脱したいなってのはあります。

ジャズでいうアドリブみたいなことをこっちがしてたときに、逆も起きてほしいんですよ。僕は“知らん状態”にいきたいんですよ、早く。

──“知らない”が本番で来たとき、緊張しませんか?

橋本 それを的確に押せたときがいいんです。ウケる・スベるは気にせず、もっと楽しく遊んでほしいのはありますね、漫才を。

──そうなんですね? 橋本さんのほうが真面目かと思っていました。

橋本 全然、鰻のほうが真面目ですよ。僕らの漫才って、僕がふざけ出して、戻してるのはだいたい鰻ですよ。逆はたぶんないと思います。というか、鰻がふざけることがあんまりないかもしれない。初期のころから比べたら、今は格段に「鰻さんしかできない感じ」にはなってるので、不満とかはまったくないんですけど、もう少しリラックスしてもいいかなって思います。

──鰻さんは「橋本がアドリブでツッコんでいても終わるところがわかる」とも。

橋本 究極の理想をいえば、終わりを待たなくていいです。もっとふざけていい。本筋言うから大変だと思うんですけど、僕がいつの間にかふざけ出してるところに、さらに鰻がふざけて、最後に僕がツッコんで戻すっていうのが一番いいかなって思うんですけどね。(鰻が言っていた)「ボケとかツッコミとかない、どっちでもいい」っていうのは僕も思ってるんで。

──漫才に対する大事な部分のズレが、おふたりにはないんですね。

橋本 そうですね。テレビとか平場は第三者がいるから難しいけど、漫才はふたりなんで、ふたりで話し合えば、長いことやってればなんとかなるとは思いますけどね。

──でも、相当な信頼感がないと、橋本さんも遊べないですし。

橋本 諸先輩方皆さんおっしゃってくれてますけど、ちょっとぶっ飛んだテーマとか、「それわからんわけないやろ」っていうボケあるじゃないですか。それを鰻が漫才の入りで言っても、しらこくなく「鰻はホンマにわからんのちゃうか」って思わせる力がある。ファンタジーを保てる味・汁が出てるから、それだけで結構じゅうぶん。

これは後付け論ですけど、おもしろいと思うことが一緒やったら、どっちとも漫才下手でもなんの問題もないと思います。下手くそなのはあとで上手くなるけど、おもしろいと思うところがズレてると、お互いが上手くなっても合わない。相方とのおもしろいがズレてないのが、一番大事です。

銀シャリ橋本
「早く“知らん状態”にいきたい」と話す橋本。イチョウとの写真②

同級生コンビもうらやましいが、銀シャリは逆を行く


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佐々木 笑

(ささき・えみ)1996年生まれ。宝島社ムック局編集部のち、フリーランスの編集者・ライター。笑と書いてエミ読みます。本名通りお笑い大好き人間に育ちました。『フワちゃん完全攻略本』『#麒麟川島のタグ大喜利』『KOUGU維新 公式本で、イザ参ラン!』(すべて宝島社)など。アイコンは川島さんに描いていただ..