同級生コンビもうらやましいが、銀シャリは逆を行く
──鰻さんが橋本さんのご飯のお会計も勝手に払って、結成を迫った話も聞きたいです。鰻さんがそんなに必死になってるのが意外でした。
橋本 必死っていうか、あんまり何も考えてなかったんだと思いますよ(笑)。鰻も言ってたように、元は知らないもん同士なんで、ふんわりしてたと思います。
──鰻さんのテンションでは「逃がしたくない」ぐらいの感じに見えましたが……。
橋本 いや、怪しいっすね。だって、鰻さんが組みたいっていうよりは、自分の感覚がおかしいから、誰かがいいって言ってる人と一回組んでみようってことだったんで。
──それもなかなかすごいですよね。普通は、直接何回も話してみて、相性を確かめ合ってからコンビ組むことが多そうですが、組み方が独特で。
橋本 学生時代からの友達みたいなのにも、ちょっと憧れます。ないものねだりです(笑)。同級生コンビだと、ラジオで昔話になるじゃないですか。僕らには過去のエピソードがないから、ああいうのはうらやましい。
──リスナーすらもわからない昔話で盛り上がってる同級生ラジオって、いいですよね。
橋本 いいですよね~。それができない僕らは逆に、「今日聴いてもオモロい」を大事にしてます。ラジオって途中から聴くと、部活のノリっていうか……もう入れないじゃないですか。僕らはその回ごとにおもろく聴けるように、過去のノリ引っ張らないとか気をつけてます。
──でも、銀シャリさんのラジオは同級生のラジオっぽさを感じます。
橋本 ほんとっすか? それ、うらやましい状態です。
──それでいて、事前情報が必要ないという。
橋本 皆さんもわかる日常の延長線上の話をしたいなっていうのがあります。スーパー行ったとか、誰でも楽しめるあるあるから入るのがラジオは一番いいなあって。人のは聴いてて楽しいんですけど、僕らのは違うかなって。
──お話が戻りますが、鰻さんにコンビ結成を誘われて試したあと、ほかの人と試さなくていいなと思ったんですか?
橋本 そうですね。結果、試してないです。
──鰻さんは、初めのネタ合わせからとても気持ちよかったとおっしゃってました。
橋本 鰻さんも言ってたみたいに、「初舞台でウケた」のがデカかったのかもしれないですね。僕もめっちゃ楽しくて、公園でしたネタ合わせまで覚えてます。僕は、前の相方がめっちゃ練習するタイプだったんですけど、こっち(鰻)のほうが楽チンで、気持ち的に楽しかった。
──お互いのパーソナルな部分をあまり知らない状態で漫才作るのって、大変では?
橋本 だから、最初のネタはあんまり人間味出てないと思いますよ、無機質。人を乗せて漫才するのはだいぶ後になると思います。
──もっとコント漫才のような?
橋本 いや、しゃべってはいたけど、お互い全然わかってない感じですね。けど、意味がわかってなくても楽しかったと思います。
その人しか知らんこと言うのがめっちゃ好き
──「漫才はあんまり決めないでやってる」とのことでしたが、ラジオイベント(『トータルテンボス×銀シャリ×蛙亭 ぬきさしならナイおトぎばなし亭!』)では、あの場でしか出来ないくだりを漫才に入れていて、感動しました。
橋本 ラジオが好きな人に来ていただいているイベントなんで、ラジオ聴いてる人がちょっとでも楽しめたらいいかなってのはあります。
その人しか知らんこと言うのがめっちゃ好きなんですよね。僕はドラマ『最愛』(TBS)を観てたから、観てた人にしかわからんボケとかツッコミたまにするんです。観てない人にキョトンとされても別にいいんですよ。
それは、もちろんちゃんとした本筋があって、おもしろい漫才があっての上で、『最愛』知ってる人がより腹抱えて笑えるものにします。僕が好きだった『大豆田とわこと三人の元夫』(カンテレ/フジテレビ)の漫才作って、ドラマの最終回と同時にYouTubeに出したこともありました。
──鰻さんは、そのドラマを知ってて?
橋本 いや、知らないですね。鰻さんドラマとか観ないんで。「大豆田とわこ」に関しては鰻さんが何も知らないままでいい設定で書いてます。それで、ファンの方に「ドラマ観てないけどなんかおもろいな」って言われるのが一番うれしいですね。
──それが、“伝える力”の最高峰ですよね。
橋本 ラジオでも、「野球の話わからんけど、ふたりがしゃべってるとなんかおもろいからいいか」みたいに思ってもらえたら一番ありがたいです。
──『M-1グランプリ』で言うと、真空ジェシカさんのネタって、一個一個のボケがわからない人がいるかもしれないけど、それでもおもしろかったです。
橋本 やりたいボケしたらいいんです。おもしろいと思ってると体重が乗ってるんですよね。“2進法”わからんから違うのにしようぜってなってたら全然おもしろくなくなってた可能性もあるんで、それを許容できる相方さんが必要ですけどね。「たぶん、それ伝わらへん」って言って進めると、面倒くさいことになるんで。
その時々の気に入ってることを入れたいので、舞台の直前で「こんなん言うわ」とか急に言うときありますもん。
──どうやって説明するんですか?
橋本 「こんな感じのことをちょっと振ってくれへん? そしたら勝手にしゃべるわ」って。
──自分が話すためのキッカケを(笑)。鰻さんは、意味を完全にわかってなくてもその言葉どおりに振るんですね、すごい。漫才が雑談に見える秘訣はそこなんですね?
橋本 それが一番ですからね。お客さんをナメてるとかではなく、最近は5、6割ぐらいの完成してる状態で出たりします。あとは出来そうやからっていうので。3回ぐらいやって、そのツッコミばっかり集めたら一番新鮮なツッコミ集なので。
──本当に、プロのやり方といいますか……。
橋本 今はもう、変態の領域に来てるかもしれないです。
この前とかも、「ピラフが世界で1番好きやねん」ってだけ言ってくれって伝えて、そこからネタを始めました。「そんな奴おるかい」って僕がずっとしゃべるんですけど、下手したら10分いけた。そしたら鰻も「お前、損してるなあ」とか対抗してくるじゃないですか。それに対して「いや、得してるねん。ピラフ食わん人生のほうが最高や」とか僕が言って……これって、今一番出来立てじゃないですか。
恐怖もありますけど、ネタ合わせで出たやつじゃなくて、お客さんがいる緊張感のある舞台上で出たやつやから、一番使える武器なんですよね。お客さんの前で初めて言ってウケたやつは、使えるんです。でもこれも、僕の中である程度ルートが想定できてないとやらないですよ。さすがに、ノーマークで勝算なくは出ないです。それはお客さんに失礼なんで。
銀シャリがアップデートされている理由
──『M-1』を優勝されたら一定の安堵感が生まれるのかと思っていたのですが、鰻さんは「ずっとスランプ」とおっしゃっていて。
橋本 僕らが2016年の『M-1』で優勝したとき、和牛とスーパーマラドーナさんのどちらかが優勝してもおかしくないと思ってたんです。正直これは、僕ら危ないなというか。
僕らのときは審査員が5人やったんですけど、やっぱり、みんなの理想って全部の札が上がる優勝じゃないですか。僕らのときは三つ巴でごちゃっとして。結果、たまたま僕らが多かったっていうだけで。でも、それがよかった。
優勝が決まる前は、「来年も考えないかんなあ」「もう1年かあ」みたいな感じを軽く思ってて、「うーん」って顔をしてたら、鰻が「ちょっと顔上げろ、まだわからんぞ」ってずっと言ってて。「そっか、俺まだちゃんとしとかな」って。
そしたら優勝やったんでうれしいしホッとしましたけど、完全優勝してたら、もしかしたらそこで燃え尽きてたかもしれないです。世間の皆さんの中でも「優勝は誰々やった」って論があるくらい僅差で完璧な優勝じゃなかったから、アップデートしておかんとなっていうのはあるのかもしれないです。
だから、今となってはいい優勝の仕方やったんかもしれないと思います。全然調子乗れなくて、満足できない感じだったので。「今が一番おもしろい」ってずっと言われたいのは、それがあるかもしれないですね。
5年目までにケンカをしておいてよかった
──鰻さんとは、プライベートでもずっと仲がいいんですか?
橋本 そうですね、いろいろしゃべります。自粛期間中は電話もしましたね。
──ちなみに、不仲なときってありましたか?
橋本 不仲っていうのはないと思います。僕、ムカついたり、おかしいなって思ったりしたら本人に直接電話するんですよ。5、6年に1回ぐらいしかないですけど。
明日嫌いなのがイヤで、その日のうちに終わらせたいんですよ。「こいつあれ間違ってたな」とかをずっと蓄積してると、どっかで吐露するじゃないですか。それがイヤなんです。今日の火種を潰すんですよ。お互いそうやと思うから、ケンカになるときは長なってもブワッてやって、それで燃え尽きるまでやる。
前はネタの話であったけど、今はもう、ネタですらならないです。昔は「こっちがおもろいやん」「いやこっちが」っていうのがあるけど、おもろいの先は一緒で、どのルートから登るかって話だったんですけど、今はそれもまったくないです。
──完全に同じルートを行けるようになった?
橋本 やり方がわかったんじゃないですかね。お互いやりたいやつが違ったら、1本目の舞台はこっち、2本目の舞台はこっちで両方やったらいいやんとか。ケンカしてたんはズレを合わせる作業やったんやと思うんですよ。この作業をしてないコンビがケンカして、解散とかになるのかもしれないです。
今、“イヤ”がないですもん。ケンカは体力がいるから当時はしんどかったですけど、5年目までにやっておいてよかったですね。
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