考察ブームに則って張り巡らされたいくつもの仕かけ
SNS上を見てみると、『奥様ッソ』を何周も繰り返し視聴している人がいる。なぜなら、一度観ただけでは気づくことができない伏線がいくつも張られているからだ。結末をより深掘りして考察をすることができる。そのため、ツイッターで #奥様ッソと検索すると、多数の考察が出てくる。
バラエティ番組を繰り返し観ることはあまりないが、何度観ても発見があるという点において『奥様ッソ』は非常に優れている。そして気づいたことを誰かと共有したくなる。思ったことを語り合いたくなる。
この特徴のおかげか『奥様ッソ』は放送された当日ではなく、初回放送から1週間ほど空いたタイミングで徐々に話題が広がっていった。配信を観た人が口コミを広げ、初回放送から10日経ったころにトレンド入りをするという異例事態にまで陥る。
ほかにも『奥様ッソ』には新しさがある。それはSNSの使い方だ。ツイッターやYouTubeに投稿されている予告映像や告知にも、少しずつ“不自然”が紛れている。事前に気づくことができなかったのは非常に悔しいが、本編を観てから試聴するとより楽しめるような仕組みになっている。予告にまで工夫がなされている番組に出会ったのは初めてだ。抜かりなく作り込まれていて、ますます魅了された。
番組本編、配信限定のニュース映像、SNSでの考察・感想、これらを毎日のように観るほど私は『奥様ッソ』に取り憑かれてしまった。令和の時代にこのようなエンタメを享受できたのはとても幸福なことだと思っている。最悪で最高のトラウマ番組だ。
『奥様ッソ』に一堂に会する世界があってもいいと思う
何周目かに本編を観て、ふとエンドロールに注視した。すると、あることに気づいた。構成に入っている人物のひとり、竹村武司氏。竹村氏といえば『山田孝之の東京都北区赤羽』や『その「おこだわり」、私にもくれよ!!』(共にテレビ東京)などを手がけるモキュメンタリーのプロフェッショナル。
Aマッソの公式YouTubeチャンネルの企画・構成に参加されているため、あまり違和感なく観ていたが、この時点でフェイクドキュメンタリーを疑うべきだったと反省している。そもそも4夜連続で主婦向け情報バラエティ番組を放送するわけがないのに。
また、構成の中にはホラー作家である藤白圭氏の名前もある。藤白氏のブログをのぞくと、人物関係や裏設定を製作していると書かれていた。妙なおどろおどろしさと細やかな設定はこのように作られていたのかと納得。ドラマであり、ドキュメンタリーであり、バラエティであり、すべてのよさを余すところなく利用しているのだと痛感した。
この番組が決まってからAマッソが起用されたのか、Aマッソありきでこの内容になったのかはわからない。しかし、これはAマッソだからこそ成立していると私は思う。これまでに見てきたAマッソの、さらに先の新しさを楽しむことができた。一度でもAマッソを疑った自分を殴りたい。罰として首のうしろに「ゲラニチョビ」足首に「おんちょいな」の文字を入れ、左手を加納・右手を村上と呼ぼうと思う。一生。
突如現れた、この凄まじいパワーを持った番組。もっともっと話題になるべきだと思う。お笑いやバラエティ好きの間では相当話題になったが、別の畑でも火がついてほしい。ドラマ好き、映画好き、アニメ好き、どの分野の人でも一定数どハマりする人がいると思う。YouTubeのホラー系や考察系の動画が好きな人にもばっちりとハマるであろう。各々の畑の人が『奥様ッソ』に一堂に会する世界があってもいいと思う。そして考察に熱を注いでほしい。
いつだってAマッソは新しい。この“Aマッソ”は加納さん・村上さんだけでなく、そのまわりの創作をするすべての存在を取り囲んだ「大きなAマッソ」のことだ。自分でも何を言っているのかわからなくなってきた。そういえばさっき饅頭を食べたような。
これまでもこれからも、私はAマッソに泳がされている。どこまでも泳ぐわい。チェイ。
連載「奥森皐月は傍若無人」は、毎月1回の更新予定です。
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