『あちこちオードリー』、『お笑い向上委員会』に感じた「新興宗教の集団セラピー」感(てれびのスキマ)


テレビっ子のライター“てれびのスキマ”が、昨日観た番組を記録する連載「きのうのテレビ」。2020年から毎日欠かさず更新中。

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『あちこちオードリー』

特別企画「アンミカ聞いてよ! どんよりポエム発表会」。ゲストの神田愛花、森三中・黒沢、四千頭身・後藤が普段モヤモヤしていることをポエムにして発表し、それをアンミカがポジティブな助言で晴れやかな気持ちにしていくという企画。話を聞いて「まず拍手!」と言ったり、さながらアンミカによる「新興宗教の集団セラピー」のよう。

後藤は「先輩芸人の皆さんが仲良くしてる姿を見ると孤独を感じるなぁ。」というポエム。『有吉の壁』などで先輩芸人たちが「最近どう?」などと話しているが、それは昔から知っているから成立する会話。自分たちにも聞いてくれるが、心の中では「なんだこいつら? シャバ憎が」と思われてるんじゃないか、と。四千頭身は「第七世代」と括られるが、その世代の中でもひと回り若いため、厳密には共演者にほとんど同世代がいない。自分はかわいくない、俯瞰で見てる、と思われていると自己分析する。

黒沢も「それ、昔〇〇がやってたよ!って、思うけど言わない方がいいんですかね?」というポエムを契機に世代論に。黒沢はオードリーと同い年。「上がすごく盛り上がってた世代」であり「今、下が盛り上がってる世代」。自分たちは「おとなしい世代」で「お祭りをしてこなかった」と。よく「第七世代を利用して……」と言われるが、「うちら利用してないですよね?」と黒沢。「なんでこんな息苦しい世代に……」と嘆く彼女に若林「黒沢さん、あとでLINE交換してください(笑)」。

そんな共鳴する彼らに後藤は、「この世代は、僕は一番憧れてます」と言う。「お祭りをしてるその中心に僕がいちゃったような気がした」と語った上で「高級外車買って、タワマンに住んで。あれ僕、全部間違ってました」と反省。若手を活気づけたかったからやったことだが「そりゃかわいがられなくて当然」だと。そういうふうになるから歴代の先輩が避けていたことを、あえてやっているというのが頼もしかったから、外野から無責任に見るとその道を突き進んでほしいと思ってしまうけど、やはりなかなか難しいんだなと思ってしまった。

ひとしきり悩みや不満を吐き出した黒沢「聞いてくださる方、怒られない環境、吉本では味わえないんですよ! 人の心を大事にしていくテレビ番組をこれからも観つづけたいと思います」

『さんまのお笑い向上委員会』

向上ゲストのザ・マミィに対し、「金借りスクワッド」の岡野、相席スタート山添が登場。ちなみに、ヒコロヒーは借金全額返済で「除名」に。岡野は彼女が所有するタワマンに住んでいるが、「タワマンは人より早く雨がわかるだけ」といかにも岡野な名言を言い放ったのを皮切りに、医者の家系にもかかわらず大学を無断で中退し芸人になり親と絶縁状態のザ・マミィ林田に対し、「がんばりは目に見えない。それを見せる方法がひとつだけある。それが親にお金を借りる」「親のスネがなくなってからが本当の借金」「親はスネをかじられたときに初めて自分の子だと認識する」などと、淀みなくおかしな持論を展開する。

「その(借金の)連絡した瞬間に本当の最後の扉が閉まる」と拒否する林田に、「親をなめるな。親の愛情の深さ、心の広さをなめるな」と“説教”する山添。岡野も「世の中に優秀な息子なんていません」ともっともらしいことを言う。終始不敵な微笑みを浮かべながら話す山添と、へりくだり丁寧な口調の岡野。言っていることはどこまでも自分本意な屁理屈なのに、一瞬説得されて取り込まれそうになる危うさがあるのがおもしろい。アンミカとは真逆だけど同じように「新興宗教の集団セラピー」感がスゴい。

やす子が100万以上借金があると明かすと、「300万からは魔物が住んでる」「空の色とかがちょっと違う」と岡野。ちょうど借金が300万近い酒井「(空の色が)紫色です(笑)」。


明日観たいテレビ:『A-studio+』ゲストに夏目三久

『全力!脱力タイムズ』(フジ)麒麟・川島明&石川恋。

『タモリ倶楽部』(テレ朝)「前鉄? もれ鉄? 魔改造鉄? ようこそ! 超ニッチ鉄ワールドへ」。

ジロジロ有吉』(TBS)「独占!藤田ニコル念願のベンツ納車の瞬間に密着」。

『人志松本の酒のツマミになる話』(フジ)さまぁ~ず、オズワルド伊藤、大島由香里、勝地涼、黒谷友香。

『ドキュメント72時間』(NHK)「山梨・花火専門店 静かな夏物語」。

『A-Studio+』(TBS)に夏目三久。

『徹子の部屋』(テレ朝)に中嶋朋子。


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てれびのスキマ

1978年生まれ。ライター。テレビっ子。著書に『タモリ学』(イースト・プレス)、『1989年のテレビっ子』(双葉社)、『笑福亭鶴瓶論』(新潮社)、『全部やれ。日本テレビ えげつない勝ち方』(文藝春秋)など。

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