野田「『勇者ああああ』殺しです」。前番組のテイストが色濃い『マヂカルクリエイターズ』(てれびのスキマ)


昨日観た番組、そこで得た気づきを綴る連載「きのうのテレビ」。2020年から毎日更新中の“てれびのスキマ”によるテレビ鑑賞記録です。


『マヂカルクリエイターズ』

『勇者ああああ』のスタッフによるマヂカルラブリーの冠番組。

「『勇者ああああ』殺しです」と野田が自己紹介する漫才からスタートし、初回の企画は「承認欲求大満足クイズ」。

謎解きイベントをやりたいが謎解き作家に問題を作ってもらうと莫大な予算が必要になるため、お金の代わりに謎解きのシンキングタイム中の放送尺をプレゼントし、自由に自己満足な一芸を披露してもらうというもの。

GAG宮戸やGパンパンダ一平、元・田畑藤本の藤本、ぺよん潤らが挑戦。藤本の紹介に「芸人としてこれといった活躍もなく昨年末にコンビを解散。今ではお笑いの仕事だけでは食っていけず謎解きイベントにすがりつくことだけが唯一の生命線。インテリ芸人の絞りカス」などと悪意をまぶすのもこのスタッフらしく、想像以上に『勇者ああああ』テイストが色濃い。

最後の挑戦者は、トップクイズ作家のひとりである日髙大介。自己満足芸はまさかの「クリカンの完コピ」。『ものまね王座決定戦』マニアでクリカンの大ファンの日髙は「栗田さんは桑田佳祐さんのとき、2回髪をかき上げるんですよ」などウンチクを挟みながら、想像を遥かに超えるクオリティで文字どおりの「完コピ」。中MCまで再現。オズワルド伊藤「クリカン、いつでも死ねる(笑)」。

『昔話法廷』

久々の新作。森下佳子の脚本で、天海祐希、佐藤浩市、仲野太賀、仲里依紗、白石加代子というめちゃくちゃ豪華なキャストなのに、朝9時台放送というのがEテレならではで痺れる。

今回は「桃太郎裁判」。桃太郎(仲野太賀)の、鬼たちへの強盗殺人罪を裁くというもの。求刑は「死刑」。太賀の感情を捨てたような虚無な目が抜群にいい。被告の桃太郎も起訴状の事実については「間違いありません」と争わない一方で、弁護人(佐藤浩市)は鬼に襲われている村を守るための犯行で情状酌量の余地があると主張する。村人から減刑を求める嘆願書も大量に届いていると。

証人には殺された鬼ノ助の妻(仲里依紗)が出廷。「私たち鬼は、人間からひどい差別を受けてきました。見た目が違う、肌の色が違うと言って鬼ヶ島に隔離されました。今回も鬼だというただそれだけの理由で襲われて夫は殺されました」と涙ながらに証言する。

これに対し、弁護人は「鬼だというだけで襲われたというが、本当にそうでしょうか」と問いかける。実際に鬼の犯罪が多発していると。もちろん、このあたりは現在の我が国で起こっている差別や問題を想起させる。

桃太郎のおばあさん(白石加代子)は、村に鬼から襲撃予告が来たから桃太郎は鬼退治に行ったと主張する。これに対し検察(天海祐希)が「もし襲撃予告をしたのが鬼ではなく人間だったら?」と尋ねるとおばあさんは「そりゃあ、ほかの方法を考えるんじゃないの」と発言。「鬼は退治しなきゃ……」「気味悪い」と根強い差別意識をあらわにする。

被告人質問で検察は「桃から生まれたあなたは何者ですか?」と事件前に桃太郎に寄せられたSNSの投稿をそのまま投げかける。実は桃太郎自身も「ぶっちゃけこいつ鬼なんじゃね?」「人間のフリすんな」などとデマや中傷で差別を受けている側で、実生活でも仕事をクビになるなど村八分状態だったことが明かされる。

「そんなとき、鬼から襲撃予告がネットに流れた。まるで見計らったようなタイミングで。そしてあなたは鬼を退治して自分の居場所を取り戻した」と実情を推察し、「襲撃予告はあなたが仕組んだんじゃないですか?」と核心に迫る。

これに対し、「よかった、気づいてくれて……」とホッとしたような表情になり「別に居場所が欲しくてやったんじゃないんです。僕はただ笑いたかったんです」と本当の動機を語り始める。村人やネットの人たちの愚かさを嘲笑したかったのだと、それまで感情を失っていたかのような表情だった桃太郎が、涙を流し感情を爆発させるシーンは胸に迫るものがあった。

昔話をテーマに、差別というものがいかに根拠がなく愚かなものか、差別が差別を生む憎しみの連鎖など現代にはびこる諸問題を見事に抽出した作劇だった。


今日観たい番組:マヂラブ、見取り図、ニューヨークら出演『ロンドンハーツ』など

『ロンドンハーツ』(テレ朝)「M-1終わって3カ月 ファイナリスト中間報告」。

『霜降りバラエティ』(テレ朝)「焼肉屋ナオト」。

『プロフェッショナル』(NHK)「志村が最後に見た夢~コメディアン・志村けん~」。

『同級生、のちセクシー女優』(テレ東)紗倉まな、大島麻衣。

『あちこちオードリー』(テレ東)今田耕司(後編)。

『チマタの噺』(テレ東)に江川卓。

『ぼる塾の煩悩ごはん』(テレ朝)開始。

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  • 【連載】きのうのテレビ(てれびのスキマ)

    毎夜ライフワークとしてテレビを観つづけ、テレビに関する著書やコラムを多数執筆する、てれびのスキマによる連載。昨日観た番組とそこで得た気づき、今日観たい番組などを毎日更新で綴る、2020年のテレビ鑑賞記録。

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てれびのスキマ

1978年生まれ。ライター。テレビっ子。著書に『タモリ学』(イースト・プレス)、『1989年のテレビっ子』(双葉社)、『笑福亭鶴瓶論』(新潮社)、『全部やれ。日本テレビ えげつない勝ち方』(文藝春秋)など。

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