涙の野田クリスタルに「今日も負けだ」…『M-1アナザーストーリー』抜群の選曲(てれびのスキマ)


昨日観た番組とそこで得た気づき、今日観たい番組などを毎日更新で綴る、てれびのスキマによる2020年のテレビ鑑賞記録。


『M-1アナザーストーリー』

毎年、素晴らしい出来のドキュメント。今年は関東圏でもテレビ放送されるということでありがたい。

やはりこのドキュメント最大の特長は内容の分厚さ。何しろ、17年前に当時16歳だった野田クリスタルの映像や、コンビ結成当初の2007年に「これは何かに使われるのかな?」とカメラに向かっておちゃらける映像が、十数年を経て使われるのだから。

本番の舞台裏も、おいでやすこがの漫才が終わってCMに入った瞬間に「フレンチで行こうか」と村上につぶやく野田や、登場前に「土下座とかどう?」とささやき「いやぁ……(笑)」と返す村上など、のちのインタビューで語られるシーンが実際に観られるのもスゴい。

急に『ザ・ノンフィクション』風味になる錦鯉パートでは長谷川の母に密着。涙腺が刺激されまくるが、それが決壊してしまったのは、やはりマヂカルラブリー優勝決定後を追ったエンディングだった。

野田の家族は父も兄も公務員。息子が芸人であることを認めていなかった母に、野田が電話で優勝を報告する。「長かったよ」と照れくさそうに笑うシーンに、「負けた、負けた、今日も負けだ♪」というハンバートハンバートの「虎」が流れる。

本当にこのドキュメントは毎年、選曲が抜群。(2018年の霜降り明星にはRADWIMPSの「週刊少年ジャンプ」、2019年のミルクボーイには吉田拓郎「流星」のハルカトミユキによるカバーバージョン)。

「息子に『堅実な仕事をしてほしい』って言ったら、『それは俺に死ねっていうことだな』って言われた」と笑う母。兄もおもしろいと言っていたことを伝えると、涙が堪えきれなくなる野田。母は言葉が詰まった息子に、いかに兄が弟を認めていたかを饒舌に話す。その光景に、野田の深く長い複雑な想いを感じて涙が止まらなかった。

※『M-1グランプリ2020 アナザーストーリー』は、現在Amazonプライム・ビデオにて配信中

『岸辺露伴は動かない』

最終回まで堪能。こだわりぬかれた美術と演出。役者陣の卓越した身体表現。原作のエッセンスを見事に抽出した脚本。即刻、シリーズ化に動いてほしい!


『クイズ☆正解は一年後』

昨年は亮の謹慎などがあり、おそらく制作者側にとっても不本意な形だったであろうぶん、今年は並々ならぬ思いがあったはず。が、コロナという予想を超える事態が起こってしまう。

今年はオリンピックがあったはずの年。2月に収録した問題出題パートでもオリンピック関連で3問出題されていた。当然、正解者はいないはずが「東京オリンピックで起こる出来事は?」という問題で兼近が「近代五種、中止」と解答し、まさかの正解を出す奇跡が!

兼近はほかにも「インスタ人狼メシ」で人狼に選ばれ、2月以降は毎日欠かさずその日の食事の写真を番組アカウントに投稿。相方にもバレずにやり遂げるマジメさで番組を盛り上げた。

コウモリを避けながら上へ登っていくシンプルなスマホゲーム「蹴りジャンプ」。2月の段階でゲーム内ランキングにはわずか145人しかいない不人気アプリのため、ここから出演者たちががんばってプレイすればランキング上位を独占できるんじゃないか……という企画でも、兼近はずっと1位を独走していたそう。

だが、放送直前の数日で順位がめまぐるしく変動。兼近は4位に沈み、岩井や有吉が逆転。さらにそれを上回ったのが澤部だった。本気で悔しがる有吉と「ホントにがんばったんです! 収録の前に個室ビデオにこもって!」と感情を爆発させる澤部。

また「一年後年末ジャンボ」も開催。各出演者が、手持ちの1000円札10枚に記された番号を控えておき、それを普通に使って流通させる。その番号の1000円札を持っている視聴者が、生放送中にTBSに来られたら賞金10万円というワクワクする企画。どのタイミングでどこに流通させるかは出演者たちに任されるが、「俺、今日使った。番組に命賭けてるから!」としっかり作戦を立てて使ったのは矢作だった。

さすがに現れないかと思ったが、番組中盤にひとりの女性が到着。今日の夕方、目黒のアトレでもらったお釣りに該当の番号の1000円札があったという。「俺、俺、俺だよ!」と興奮する矢作。が、「ちょっと待って。俺が目黒に住んでるって言わないで!(笑)」と我に返る矢作。実際に番号を合わせてみると、本当に矢作が使った1000円札であることがわかる。

今回、いくつもの“奇跡”が起こっていたけど、その直前に観た『岸辺露伴は動かない』では「起きるはずがないから奇跡と言うんだろう? じゃあ、起きた瞬間にそれはもう奇跡じゃない」という台詞を聴いた直後だったため、余計に味わい深かった。本気の熱としっかり作り込まれたルールや設定があるからこそ起こる、起こるべくして起きた奇跡だった。

優勝チームによる100万円を賭けたチャンスクイズは「ドッペルゲンガーチャンス」。キズナ武田が1年間でドッペルゲンガーを探せるかどうかを当てる企画。武田がアジア系の顔立ちのため、外国人にも捜索の範囲を広げればという話から有吉が「新型肺炎だけ気をつけて」と何気ないひと言。まだ2月の段階ではそういう感じだったのだ。

捜索は、外出自粛でそんな状況ではなくなり、7月にようやく再開されるも、みんなマスクをつけているため困難を極める。さらに武田自身が本当に新型コロナに感染してしまうという事態も。思わぬ形で世相も反映していて「2020年」が詰まった番組になっていた。

今日観たい番組

『ガキの使い!大晦日年越しSP 絶対に笑ってはいけない大貧民GoToラスベガス』(日テレ)。

『紅白歌合戦』(NHK)総合司会:内村光良、紅組司会:二階堂ふみ、白組司会:大泉洋。

『RIZIN.26』(フジ)朝倉海vs堀口恭司、浜崎朱加vs山本美憂、五味隆典vs皇治、太田忍vs所英男など。

『孤独のグルメ2020大晦日スペシャル』(テレ東)。

『2355−0655 年越しをご一緒にスペシャル』(Eテレ)。

『ぐるナイ!新春おもしろ荘』(日テレ)さんだる、オフローズ、ダイヤモンド、野田ちゃん、エルフ、フタリシズカ、戦士、やす子、ワラバランス、Everybody。

『ネタパレ元日SP』(フジ)「ネタパレニューイヤーグランプリ」に蛙亭、空気階段、ザ・マミィ、宮下草薙、四千頭身、ランジャタイら。

『笑うラストフレーズ』(テレ東)MCはオードリー。コント出演者はニューヨーク、空気階段、蛙亭、東京ホテイソン、Aマッソ、ザ・ギース、ななまがり、ジェラードン、ザ・マミィ、ゾフィー。

『フットンダ王決定戦2021』(日テレ)「若手芸人ネタ祭り」も。

『フット霜降りの爆笑ネタ祭り』(テレ東)MCはフットボールアワー、霜降り明星。

『久保みねヒャダ明けましてこじらせナイト』(フジ)に千葉雄大。


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  • 【連載】きのうのテレビ(てれびのスキマ)

    毎夜ライフワークとしてテレビを観つづけ、テレビに関する著書やコラムを多数執筆する、てれびのスキマによる連載。昨日観た番組とそこで得た気づき、今日観たい番組などを毎日更新で綴る、2020年のテレビ鑑賞記録。

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てれびのスキマ

1978年生まれ。ライター。テレビっ子。著書に『タモリ学』(イースト・プレス)、『1989年のテレビっ子』(双葉社)、『笑福亭鶴瓶論』(新潮社)、『全部やれ。日本テレビ えげつない勝ち方』(文藝春秋)など。

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