永野が“狙って作った”ラッセンネタ。「ベタ」にはなれずに抗いつづける(てれびのスキマ)


昨日観た番組とそこで得た気づき、今日観たい番組などを毎日更新で綴る、てれびのスキマによる2020年のテレビ鑑賞記録。


永野「わざとルールを破って存在感を出そうとしていた」

『しくじり先生』に「等身大の自分に自信が持てなかったので変人のフリをしていたら、ひとりぼっちになってしまった先生」として永野が登場。泥酔状態で舞台に上がったり、ライブの舞台転換を全裸でやったり、「わざとルールを破って存在感を出そうとしていた」という永野は、「ベタを否定することで、否定というバリアを張って自分を守っている」状態だったと述懐する。

28歳で「後輩に悪影響になるから」と事務所をクビになり、芸人として無収入。結果、22年間のアングラ生活に。バカにしていた芸人たちがお笑い番組で活躍しているのを見て惨めになり、自分が自宅にいるのを芸人仲間にバレたくなくて夜でも電気を消していたそう。「未だに落ち着こうとして楽屋の電気を消してしまうことがある」という切実さ。

ブレイクのきっかけとなったラッセンネタは「偶発的に生まれたんじゃなくて、ものすごく狙って作りました」と告白。いかにも一発屋のリズムネタっぽいと自分でも笑っていた永野だが、「こういうネタをバカにしてる時点で違うくないか?」と思い直した、と。

僕が以前、永野も出演したスラッシュパイルの『アルコ&ピース寄席』というライブに行った際、共演者たちが永野とザコシショウに対し「意外とメジャー志向」とイジっていたのが印象に残っている。もちろん、これはイメージとのギャップで笑わせる文脈で言ったことだと思うけれど、意外と核心を突いた言葉なのではないかと。

最後に「トガッてスカすのはダサい」「目の前にいる人のために一生懸命自分のベストを尽くして何かを届けるほうがカッコいい」と“いい話”でまとめるも、「生放送中に若手俳優をビンタして110番通報される」「とんねるずの落とし穴ドッキリで不機嫌なリアクションをして現場を凍りつかせる」など、“その後の永野先生”を「どこかしら武勇伝語ってるうれしそうな顔」で披露。思えば、番組前半から「下北沢の劇団あがりの人で笑ったことないんで」など毒を吐いていた。この「ベタ」になり切れずギリギリで抗いつづけるのもまた魅力的。永野「まだまだしくじってます! 現役です!」

『有田ジェネレーション』は「有ジェネ」メンバーが「アングラ芸人」になりきる「ミュータントアングラ芸人」。納言・安部が扮したのは、“ラブカンパニー”所属の芸人4年目、愛吉。「やるんですか、ネタ? おもしろそうな雰囲気はないんですけど……」と有田が言うと「メイクがおもしろくなさそう」「学園祭メイク」と小峠やスピードワゴン小沢もつづける。有田が「(ネタ披露を)辞退するなら辞退していただいて」と提案すると、愛吉こと安部は「辞退でお願いします」とまさかの展開。小峠「見上げた根性(笑)」。

『くりぃむナンチャラ』は「若手芸人!自宅ふしぎ発見!」後編。かまいたち濱家が呼ばれるたびに、“同居人”として「反省する男」「ひとつだけおかしい人」「阪神ファン」「ドロボー」「オシャレし過ぎたヤツ」などに衣装を変えるボケを繰り返したため、その後に登場した野田クリスタルと「クイズ!同居人を紹介します」という名の出オチ合戦に。巻き込まれた納言・安部は「キャンタマSIX男」に。上田から「お前、安部だろ?」と問われると即座に「安部です」と“設定”を無視して答えてしまう。有田「それは言っちゃいけないのよ(笑)」。

どちらも、安部が自分の作り出したキャラをまったく執着も躊躇もなく捨てるのがおもしろかった。

今日観たい番組:『あちこちオードリー』ウイカ&宮下草薙の後編など。

『テレビ千鳥』(テレ朝)は約100種類の花火の中から悩みに悩んで1本だけを選ぶ「ガマン花火」。

『あちこちオードリー』(テレ東)はファーストサマーウイカ&宮下草薙の後編。

『ロンドンハーツ』(テレ朝)は「ぺこぱカウントダウンドッキリ」「50TA新曲アレンジコンテスト」。

『探偵・由利麟太郎』(フジ)最終回。



  • 【連載】きのうのテレビ(てれびのスキマ)

    毎夜ライフワークとしてテレビを観つづけ、テレビに関する著書やコラムを多数執筆する、てれびのスキマによる連載。昨日観た番組とそこで得た気づき、今日観たい番組などを毎日更新で綴る、2020年のテレビ鑑賞記録。
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てれびのスキマ

1978年生まれ。ライター。テレビっ子。著書に『タモリ学』(イースト・プレス)、『1989年のテレビっ子』(双葉社)、『笑福亭鶴瓶論』(新潮社)、『全部やれ。日本テレビ えげつない勝ち方』(文藝春秋)など。

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