りょんりょん先生が教える“プロのアーティスト”の心構え「近くの人から愛されてもいないのに、全国的に愛されるわけがない」【『No No Girls』レポート#10】

りょんりょん先生が教える“プロのアーティスト”の心構え「近くの人から愛されてもいないのに、全国的に愛されるわけがない」【『No No Girls』レポート#10】

文=奈都樹 編集=森田真規


YouTubeの総再生回数は5億回を超え、若い世代から絶大なる支持を得ているラッパー/シンガーのちゃんみな。そんな彼女が、SKY-HIが主宰するレーベル/マネジメント「BMSG」とタッグを組んで始動したオーディションプロジェクト『No No Girls』。

「今までいろんなNoって言われてきた人たちを救いたい」と、本オーディションのプロデューサーであるちゃんみなは宣言。そして、ここから生まれるガールズグループに所属するアーティストには、以下3つの“No”を求めるという。

No FAKE(本物であれ)
No LAZE(誰よりも一生懸命であれ)
No HATE(自分に中指を立てるな)

2024年12月6日にYouTubeにて配信された『No No Girls』Ep.10では、擬似プロ審査の課題に向き合うBチームの様子が届けられた。

【No No Girls】Ep.09 / 5th Round -Lose confidence-

個よりもチームを優先

プロとは何か──試練の5次審査。本配信では、KOKOA、KOHARU、JISOO、JEWEL、NAOKO、MAHINA、MOMOのBチームに密着していく。

今回は擬似プロ審査だ。候補生は、ちゃんみなが作った課題曲「Tiger」と、本プロジェクトのテーマソング「NG」を自分たちでリミックスしたクリエイティブ曲の計2曲をパフォーマンス。本番では、「プロが作った楽曲をプロのスタイリング・ヘアメイクでプロフェッショナルに歌いこなし、擬似的にプロのアーティストとしてステージに立つ」ことになる。与えられた期間は実質9日間だ。

チームが発表され、Bチームは宿舎へ。きれいな部屋に案内されキャッキャと興奮しているメンバーたちの様子は、緊張感が漂っていたAチームとは対照的だった。

おっとりとした雰囲気があるBチーム。彼女たち自身も「明るいチームだよね」「フワフワしてる」「こんなフワフワなメンバーですがやる時はしっかりやろうということで!」と話していて、本番までに時間がないなかでもプレッシャーを感じさせない。

そんなメンバーを引っ張るのはKOHARUだ。宿舎の部屋長にも真っ先に立候補。「みんなゴミはちゃんと捨てろよー」とそれっぽく呼びかけると、ほかのメンバーは声をそろえて「はーい」と返事をする。彼女はお姉さん的存在のようだ。

合宿1日目。まずはパート決めに。なごやかなBチームは、希望パートが被っても空気がピリピリすることはない。KOHARUは、NAOKOと話していてこんなことを感じたとか。

「チームとして一緒に上がっていけるような進め方をしたい。なのでメンバーの声質でパートを決めていて。私の第1希望がたまたまJEWELの声質のほうが合っていたというだけで、『もう!』とかそういう感情にはなってないし、どこのパートでも自分が輝けると信じている」

“個”ではなく“チーム”にとっての最善の選択をしていきたい、そう思っているようだ。一方でNAOKOは、率先してこの場を仕切っていた。NAOKOといえば、前回の審査でちゃんみなから「文句ないです」と絶賛されていた超実力者だ。

ただ一方で、おとなしく控えめな性格でもあった。家族インタビューでは母親から「普段はおとなしいけど、ダンス・歌になったら人が変わる」とも言われている。そんな彼女もまた、「(次の審査では)ガツンといく強気なNAOKOを見せたい」と殻を破ろうとしていた。

素のNAOKOはよくしゃべるらしい。彼女の密着取材では、親友のアミとユリも登場。スタッフが「(NAOKOは)合宿ではあまりしゃべらない」と伝えると、ふたりは驚いた様子で「ほんまにおもしろい子」「いろんな人から見てもらいたい、ウチのNAOKOを」と言う。

そんな想いを受け、彼女は“素のNAOKO”で審査に挑もうとしていた。

対象的な最年少コンビのMAHINAとMOMO

合宿2日目。「NG」の歌詞作りに取り組んでいた。歌詞のテーマは「意志を持った“強い女”」。

チームで歌詞を作っていると、MAHINAは「まず昨日思い浮かんだワードは……」と話し出す。

<バカ、無理、ダメ、お前じゃ無理/え?sorry 私には聞こえない/明日は好きなもの食べたいな ねえみんなそうでしょ?/ブラックホールにつめた言葉 何度も見てくる男の目線>

最年少メンバーから出てくる“男の目線”というワードにメンバーたちは、「好きだよそういうの!」「いいね!」と大盛り上がり。いつもは無邪気なMAHINAだが、曲作りやパフォーマンスではこちらをドキリとさせてくる。そんなつかみどころのない彼女について、KOHARUはこう語っていた。

「男の目線が……みたいな。どういうこと? ちゃんみなさんもおっしゃっていたけど、『本当にあなたどういう考えしているの?』って。オーディション初期から宿舎も一緒だし、3次審査も同じチームだったし、今回も同じなのに(頭の中が)まったくわからない。本当に才能って感じ」

そんななか、ただひとりアイデアが浮かんでこないMOMO。翌日になってもなかなか歌詞が決まらず、歌詞ノートにはワードがぎっしり書かれている。これだけ浮かんでもどれもしっくりこないのは「チームのテーマに自分が沿っていない」からだった。自分はまだ“No”をはねのけられるほど強い女にはなれていないのだという。

そんなMOMOはダンスが得意なメンバーだ。いつかダンスの仕事がしたいと、高校には進学せずに、引っ越し業者で勤務しながらレッスンに通っている。こうした進路を選んだのは父親からのあと押しがあったからだという。家族インタビューで、父親はこう話していた。

「高校は別にいつでも行けるし、卒業資格が必要になったときに通い始めればいい。好きじゃないことをがんばるのも大事かもしれないけど、楽しかったらがんばれるから、楽しいことを見つけて、それを楽しむのがいいんじゃないかな」

彼女の母親もこう続ける。

「高校進学は友達作りにもなるという意見もあったんですけど、友達はダンスでも作れる。ダンスをやっていたって年齢に関係なく、同じ目標に向かって切磋琢磨する仲間をどこでも作れる、という話になって」

そんな両親の理解もあり、ダンスに熱中してきた。だが、歌詞作りにはまだ慣れていないところもある。オールマイティーな候補生もいる環境の中で、どうしても自分自身に厳しくなってしまうのかもしれない。

「自分だけまだ歌詞が完成していない不安でダンスにも集中できない。もう全然思いつかなくて。考えれば考えるほどいろんな案が出てくるけど、これは違うわって。考えすぎて浮かばない」

MOMOは歌詞作りにずっと悩んでいた。合宿4日目になっても、チームでただひとり歌詞ができていなかった。歌詞を仕上げるため、別室でひとりで昼食をとるMOMO。

すると、部屋に入ってきたメンバーが。「何しに来てんの〜」と少々嫌がるMOMOに対して、「MOMOちゃんに会いたかったの!」と返すのはMAHINAだ。同じ歳のメンバーとして心配なのかもしれない。

しばらくしてMAHINAが部屋を出ると、今度はKOHARUがやって来て歌詞作りをサポートする場面も。Aチームには悩んでいるメンバーをそっと見守る気遣いがあったが、Bチームには声をかけて支えようとする気遣いがある。チームをよりよくするための心配りがそれぞれ違っているのが興味深い。

ちゃんみなが説く“自分”を表現する重要性

午後は、りょんりょん(佐藤涼子)先生のボイストレーニングだ。

「Tiger」を全員で披露したあと、個別レッスンへ。JISOOにはライブ現場でよく耳にするあの“マイクチェック”を用いながら表現方法を教えたり、KOKOAには「余裕のある笑顔のドヤ顔」を表現してみるようにアドバイスするなど、りょんりょん先生は短い時間の中で、メンバーに新たな表現を身につけさせていく。

合宿5日目。「Tiger」のレコーディングが始まった。

トップバッターはJISOO。彼女は、ちゃんみなから「らしさ」を出すようにと指示される。無事にレコーディングは終わったが、自分らしさを保ちながら弱点をどうカバーするか悩んでいるようだった。りょんりょん先生の指摘を受け、JISOOは必死に歌唱法の幅を広げようとしていた。

続くKOKOAは好調だった。りょんりょん先生のレッスンをうまく自分の表現に消化させているようだった。ちゃんみなは、そんな彼女にコーラスも注文。かなり高音域だったが、それもすんなりとやってのける。張り詰めていて力強い彼女の声にちゃんみなは興奮。「いやこれ泣くよ、誰か。最高です。ありがとうございます。ごちそうさまでーす」と大絶賛だった。

レコーディングは順調に進んでいく。すべてを終え、最後に通しで聞いて最終確認。ちゃんみなもメンバーたちも満足そうだ。しかし、JISOOは納得がいってない様子。ちゃんみなが「大丈夫?」と話しかけると、JISOOは涙を目に浮かべる。

JISOOは自分らしくない声に違和感を抱いていたようだ。それならと、ちゃんみなは録り直しを提案する。

実はこれまでもJISOOが不満そうな顔をしていたことは度々あったという。ちゃんみなはそんな彼女のことを心配していた。「泣かせたくはないけど、やっと泣いたのでちょっと安心しました。いっぱい我慢していたんだろうなって感じていたので。ちょっとくだけたJISOOを見られてよかった」と、あとでスタッフに明かしていた。

再レコーディングをする前に、JISOOは落ち着きを取り戻すために外へ。ちゃんみなもそばで寄り添っていた。韓国から来日してオーディションに参加しているJISOO。そんな彼女にちゃんみなは韓国語で話しかける。「大丈夫、大丈夫、たくさん我慢したんだね」と。JISOOは、「ここまでちゃんと泣くのを我慢してきたのに……」と肩を震わせる。

そのあと、ふたりはこんな話をしていた。

JISOO「ずっと声の調子もよくなくて、状態が悪くて」

ちゃんみな「JISOOっぽくないってことだよね」

JISOO「はい、でもそれに慣れなきゃいけないのに……」

ちゃんみな「いや、慣れる必要ないよ。少し勘違いしていると思う。JISOOっぽい声で歌うなということではなくて、悲しい声、うれしい声、いろいろやってほしいという意味だったと思う。違う声を作らなきゃって考えたら、絶対にダメ」

「JISOOが違う自分にならなければいけないと思うのは違う」とちゃんみなは念を押す。「この曲をJISOO自身はどんな声でみせたいのか」それを聴いている人は一番気にしている。だからJISOOが、この曲でどんな自分を表現するのかが一番重要なのだと続けた。

この日は納得がいくまでレコーディングを行った。そのあとのインタビューでもJISOOは、またしても涙。泣かないと覚悟を決めて来日したが、これまで抑え込んでいたぶん、一度あふれた感情をどう抑えたらいいのかわからなくなっていた。「(自分の声を)聴いたときになんか足りないと思って、私の声じゃないよって思ったし、テクニックも足りなかったし、悔しかったです」と、彼女は吐露した。

りょんりょん先生が教える“プロのアーティストの心構え”

合宿7日目。りょんりょん先生とちゃんみなによるスペシャルボイトレの日だ。この日、りょんりょん先生は“プロのアーティストの心構え”から教えた。

「近くの人から愛されてもいないのに、全国的に愛されるわけがない、と教えています。人を気遣える人じゃないとスタッフも愛してくれない、それだといい仕事を取ってきてくれない。これがハートの順番。最初は自分たちという個人、次はグループ、その次はスタッフ。ステージの上ではわがままにやりたい放題やろう。(……)最終的に決めるのはちゃんみなだけど、私とちゃんみな、SKY-HIだけに感じよくしてると、それ見られちゃうよね。(……)ひとりじゃないんですよ、何人ものグループなんですよ。だから輪を乱してしまう人とか、言うこと聞かない人がいるとクビだからね。全部顔に出るから、それを私は見抜くから。口角を上げて、レッスン楽しいって演じて。そうすると先生、燃えます」

こうして始まったスペシャルボイトレ。Bチームはまず「NG」を初披露することに。この曲では、メンバーたちが振り付けを考える。

すべて終了すると、ちゃんみなは笑い出して「何? 振り付け自分たちだっけ?……マジ? 天才いるやん!」「この曲って絶対やりにくいから、それは前提としてありがとう」と絶賛。

求められる“No”の表現

ちゃんみなは、候補者たちに「NG」の歌詞作りで大切にしてほしいことを次のように伝えた。

「Noって言われてきたこと、自分の中で何をくつがえしたいのか、それをリリックにしてほしい。この曲では一番リリックを聴きたいなって思う」

さっそく個別の歌詞チェックへ。原曲の「NG」にはちゃんみな自身がこれまでに言われ続けた“No”への反抗心が鋭いメッセージとして表現されている。メンバーはそれをどう自分の表現にしたのか。

まずはNAOKOから。りょんりょん先生の手拍子に合わせて歌い始めた。

<ピーチクパーチクうっさいねん/パクチー無理ならだまれい>

「<パクチー無理ならだまれい>(笑)。私だまらなきゃダメかも!」と、ちゃんみなは声をあげて笑う。アイロニカルなNAOKOの歌詞には、親友から言われていた“素のNAOKO”が表れているのかもしれない。

続いてはMOMO。かなり歌詞作りに迷っていたがどうだろうか。

<私をNoと言うやつは全員/汚染物 虚言癖×2/え?まって、それって私?/何かくれてんだ。早く出てこいよ/その せんたくし 選ぶ 私/もったいない つまんない 大間違い/かがみの中にも見えない自分が/だまれよ 反抗すんな>

「リリックの意味がちょっとわからないな」とちゃんみな。MOMOは自分の中にある小さい自分を取り除きたいのだという。それに対してちゃんみなは、自分に向けて言っているのか、他人に向けて言っているのか区別がつかないから、何を反抗しているのかがわからないと指摘。もっとわかりやすく書くようにと伝える。

さらにMAHINAにも指摘が。<あるもの 全部 いちごもバナナも全員/フルーツバスケット!って言ったのに/えらそうにバカ、ブス、きもい、お前じゃ無理無理>というリリックに、ちゃんみなは「これどういう意味?」と反応。話を聞くとMAHINAは、“フルーツバスケット”を“人生”の比喩にしているようだ。

「はっきり言ってうまくないね」と、ちゃんみなはバッサリ。続けて「うまいねーってなりたい。こういうたとえ話を使うときは。ステージに立って、リリックを伝えるわけでしょ? 耳ざわりだけでやっちゃいけないと思うの。(ラップは)内容がダイレクトに歌よりも伝わってくるから、より感動させられるというか、演説をしている時間なんだよね。(……)演説をできる時間をムダなことを言っている時間に使わないほうが効果的」とラップにおける歌詞の重要性についてアドバイス。MAHINAは少し落ち込んでいる様子だった。

りょんりょん先生の指導も加わり、本日のボイトレは終了。一方、MOMOとMAHINAは別室で歌詞を書き直していた。約2時間かけて歌詞を修正し、ちゃんみなに再度確認してもらう。まずはMOMOから。

<自分に No No 言う私/は 弱くて 小さい 虚言癖/はずかしがりやな自分をかくして/またまた自分とかくれんぼ/never hide, please come out/Time is running out./かがみの中にも見えない自分が/だまれよ 私に 反抗すんな>

続いてはMAHINA。

<えらそうにバカ、ブス、きもい、お前じゃ無理無理/この言葉 あんたは覚えてないかもだけど/私はしっかり覚えてる/でも Sorry 今の 私には聞こえない/ブラックホールにつめた言葉/あなたに分かんの? おぼっちゃん>

「ナイス!めっちゃいい!!お疲れ!」とちゃんみなからOKが出た。これでようやく全員の歌詞が完成した。

合宿8日目からは次の難関「Tiger」の振り付けへ。候補生はたった2日間でプロが考えた難しい振り付けをものにしなければならない。

翌日にはチームが互いにパフォーマンスを見せ合う場面もあった。個人の見せ方がうまいAチームと、連携がうまく取れているBチーム。ダンス講師のGENTA YAMAGUCHIとMiQaelは、見せ合うことで互いに刺激を受けレベルアップにつなげる目的もあったようだ。

合宿10日目。本番に向けて、全体の仕上げに取りかかるメンバーたち。前日の合同ダンスレッスンで刺激を受けたようだ。「Aチームを見ていたら……」と、どうしたらうまく自分を見せられるのか、宿舎の中でもチームで練習に専念していた。

そしてついに本番当日。メンバーたちはプロ同様のメイクを施し、審査本番へ臨むスイッチを入れる。

次回配信はいよいよ5次審査本番パフォーマンスへ。最終審査に進むのはどの候補生なのか。Ep.11は完全版がYouTubeにてプレミア公開されることが決定した。

【『No No Girls』Ep.11配信予定】
■2024年12月13日(金)20時~

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奈都樹

(なつき)1994年生まれ。リアルサウンド編集部に所属後、現在はフリーライターとして活動しながら、クオーターライフクライシスの渦中にいる若者の心情を様々な角度から切り取ったインタビューサイト『小さな生活の声』を運営中。会社員時代の経験や同世代としての視点から、若者たちのリアルな声を取材している。

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