【『No No Girls』レポート#13】努力を重ねる候補者たちに密着。NAOKO「笑顔にしたい。私が踊ってる歌ってる、その間だけでもネガティブな気持ちはひとつもなし」

【『No No Girls』レポート#13】努力を重ねる候補者たちに密着。NAOKO「笑顔にしたい。私が踊ってる歌ってる、その間だけでもネガティブな気持ちはひとつもなし」

文=奈都樹 編集=森田真規


YouTubeの総再生回数は5億回を超え、若い世代から絶大なる支持を得ているラッパー/シンガーのちゃんみな。そんな彼女が、SKY-HIが主宰するレーベル/マネジメント「BMSG」とタッグを組んで始動したオーディションプロジェクト『No No Girls』。

「今までいろんなNoって言われてきた人たちを救いたい」と、本オーディションのプロデューサーであるちゃんみなは宣言。そして、ここから生まれるガールズグループに所属するアーティストには、以下3つの“No”を求めるという。

No FAKE(本物であれ)
No LAZE(誰よりも一生懸命であれ)
No HATE(自分に中指を立てるな)

2025年1月3日にYouTubeにて配信された『No No Girls』Ep.13では、1月11日にKアリーナ横浜で行われる最終審査に向けて努力を重ねる候補者たちに密着した。

【No No Girls】Ep.13 / Final Round -alone-

ちゃんみな「最終的にはひとりで闘うもの」

最終審査でKアリーナ横浜のステージに立つことになった候補生たち。Ep.13では、本番に向けて努力する彼女たちに密着した。

今回の審査ではソロパフォーマンスも行われる。候補生たちはちゃんみなの曲からひとつを選び、発表。曲は自由にアレンジしていいという。

「最終的にはひとりで闘うものだからね」

オーディション中、ちゃんみなはよく口にしていた。ひとりで闘うことはちゃんみなの信念だ。想像を超えるプレッシャーの中で観客を魅了できるかは自分次第、孤独と闘う力をつけてほしい……デビューを目指す候補生たちに覚悟を問う。

KOKONA「歌詞を自分のものにして声にして届けたい」

5次審査が終了して10日後。ちゃんみなの希望で1on1の面談が行われた。初めに現れたのはKOKONA。金髪のエクステをつけて雰囲気がまた少し変わっていた。

「ざっくり聞きたいことがふたつあって……」とちゃんみなは話を切り出す。KOKONAはどんな“No”と闘っていきたいのか、闘ってきたのか。

ちゃんみなは、ルッキズムやジャンルと闘ってきたアーティストだ。彼女がデビューした当時はまだ「表に立つ人間はきれいでなくてはならない」という価値観が強く、歌を歌えばHipHopとして認めてもらいづらい時代でもあった。ちゃんみなは、そうした世間の声と向き合ってきた。

では、KOKONAはどうだろうか。彼女はこう話し始めた。

「一番に思いつくのはネット。どちらかといえば批判をされている人たちに対して、その批判へのマインドが変わってくれたらいいなっていう気持ちが、もしかしたら強いかもしれないです」

だからこそ、「自分の歌詞を自分のものにして声にして届けたい」という思いが強いようだ。

そこでちゃんみなは、KOKONAのソロ曲に「TO HATERS」を提案。これはデビュー当時に発表したもので、SNSで批判されたときの“痛み”や批判に対しての“怒り”を内包した曲だ。

ちゃんみな「TO HATERS」

ちゃんみなはこう語る。

「『高校生RAP選手権』に出たばっかりのときに、評判がひとり歩きする、私が見せられるものが少ないっていうもどかしさに、すごくやられたときに書いた曲なんだけど……」

KOKONAは、この話に自分と重なるものを感じているようだった。ちゃんみなはこうも続ける。

「KOKONAは今までいろんな部分を見せてきたけど、深いディープな部分がまだ見えてないと思うのね。それを演出でいろいろ出して、ライブを通して何を伝えたいかっていうのが一番大事になってくるから。すごくいいチャンスだと思って、最高の作品を作ってみて。人生かけた作品だと思って、作ってみて」

そのあとも候補生が抱える“No”や“伝えたい思い”を受け止め、ソロ曲を提案していくちゃんみな。候補生は自らステージ演出を手がけて、ソロパフォーマンス審査に臨む。

MAHINA「次はボーカルだと思っている」

本番に向けてMAHINAも演出アイデアを考えていた。テーマは青春だという。さっそくダンサーたちに共有する。

「ステージの上を飛んだりとか、ボール遊びしたりとか、ステージで絵を描いたりとか、組体操とか、線香花火をみんなで走り回ってやったりとか……」

MAHINAらしい独特なアイデアに、ダンサーたちは思わず爆笑。和気あいあいと準備は進んでいるようだ。嬉々とした表情でアイデアを説明する彼女にはまだ幼さが残る。しかし、ステージでは別人のように顔が変わるのも彼女の魅力だ。

家族インタビューでは、母親にこう言われていた。

「3姉妹の末っ子って感じで。甘えたり頼ったりするのが一番上手。でも、けっこう冷静。心配性で進むときには躊躇するんですけど、アドバイスすると自分のペースに持っていくというか。そのあとはグイグイいけちゃう感じがします」

その言葉どおり、MAHINAはまわりに刺激されてラッパーとしての才能が開花していた。ちゃんみなも、そんな無限大のポテンシャルに大きな期待を寄せている。

そんな彼女が挑戦する曲は「花火」だ。

ちゃんみな - 花火(THE PRINCESS PROJECT - FINAL - @ 日本武道館)-

若さを花火にたとえ、年齢を重ねてもそのときと気持ちは変わらないまま忘れないでほしいという思いが込められた曲。ちゃんみなからこの曲を提案されると、MAHINAの表情はパッと明るくなった。どうやら毎朝聴いているという。

「花火」はラップではなく歌がメインの曲だ。MAHINAは意気込みをこう語った。

「ラップに挑戦して高評価をいただいて、次はボーカルだと思っているので。ボーカルもラップもダンスも全部がいろいろできる、操れる声になりたいなと思っています」

ダンス、ボーカル、表現。ソロに必要なすべてが詰まった曲で、MAHINAは新たな自分を魅せる。

JISOO「自分を好きになって、自信を持つ」

本番まで1カ月半。ソロ審査のリハーサルをしていたのはJISOOだ。韓国の芸能事務所に練習生として所属していた彼女は、このオーディションでも常に歌唱力を評価されてきた実力者。

が、5次審査では厳しい評価を受けていた。その理由について、ちゃんみなはこう伝えていた。

「今、JISOOの中で心配事がいっぱいあるんだと思う。その心配事を一個一個解いて、『まぁいっか』ってする必要があるはず。『まぁいっか』がJISOOにはなさすぎる」

その言葉を受けて、JISOOは考えを改めていた。

「私は私のままでがんばろうってなって、ちょっと気が楽になりました。オーディション番組でずっと撮られているので、失敗するところも全部見えるし、そういうの本当に嫌なので。でも今考えてみたら、私が目指してる完璧な状態にいつなれるかわからない」

以前から審査が終わるたびにちゃんみなから「大丈夫? 楽しかった?」と聞かれていたJISOO。なぜそこまで心配されているのか、彼女自身もわからなかった。

だが改めて振り返ると、みんなでパフォーマンスすること自体は楽しくても、自分のことになると一度も楽しみながら歌えていなかったという。完璧な自分でいたい、失敗を見せたくないという思いが強く、自分自身にプレッシャーをかけていた。

しかし、今はちゃんみなの言葉を受けて心が軽くなったようだ。完璧を捨てた今はすべてが楽しい。そんな彼女が挑戦するソロ曲はなんなのだろうか。

1on1面談でちゃんみなからなりたい理想像があるかと聞かれると、JISOOはこう答えた。

「自分を好きになって、自信を持って、ステージの上で、観ている方にも私の自信を感じてもらえる人になりたいと思いました」

すると、ちゃんみなはこう話す。

「私も自分らしくないことをやれって言われたことがあるんだけど、すごく悔しかったし。私って平気そうに見えるからいろんな人がお願いしてきたりとか、無理なことも無理やりやっちゃうことがあったの。そういうときに自分の精神が病んで。JISOOの話を聞いてると、そこと似てるなと思うから……」

ちゃんみなはソロ曲に「I’m Not OK」を提案した。

ちゃんみな - I’m Not OK (Official Music Video)

「私は大丈夫じゃない、そして、それで大丈夫、それが私」

そんな自己肯定を含んだ全編英語詞の曲。提案されるとJISOOはすぐにうなずき、「私もずっと思っていました」と同感する。ちゃんみながスマホで曲を流して聞かせると、歌詞に感情移入してか涙を浮かべていた。

そのあとのリハーサルでは、楽しそうにパフォーマンスに取り組むJISOOの姿が。「楽しんでいる私をちゃんみなさんに見てほしいです」と笑顔で話す。

さらにJISOOのもとに頼れる援軍が。彼女の母親が韓国から来日したのだ。同じ宿舎で過ごすJISOOとNAOKOにキンパを振る舞う場面も。いつも気を張っているJISOOが、母親を前にして甘える姿が新鮮だった。

母親は最終審査まで進んだJISOOについて、こう語る。

「ここまで来たからには最後までうまくいってほしいっていう気持ちと、韓国ではないのもあるし、本当に大丈夫かなっていう気持ちもあるんですけど、JISOOが決めたことなので最後までうまくいけばいいなとは思っています」

NAOKO「笑顔にしたい。笑っていてほしい」

一方、JISOOと同じく上京していたNAOKOは、尊敬するライバルたちに刺激を受けてさらに成長を遂げていた。

NAOKOは2次審査でも歌った「^_^」(ハッピー)をソロ曲に選んだ。この曲は、ちゃんみなの曲には珍しく“何も言っていない”曲であり、意味がなくてもいいとされる現代に「それでいいんでしょ?」という皮肉を込めた曲だった。

ちゃんみな「^_^」

ステージ演出のイメージも固まっているようだ。

「私が踊っている中で、何もない空間を作りたくて。めちゃくちゃ踊って急に止まって、めっちゃいろんなことを考えてもらう時間。のめり込んでバンっみたいな空間を作りたい」

ちゃんみなから、「何をこれ以上やるの?」と絶賛されるほどにスキルのあるNAOKO。それでも油断することはない。候補生たちの長所を研究し、自身の課題を見つけている。

「怒りの部分が出てるパフォーマンスを素晴らしくできるのがCHIKAちゃんなんですよね。えぐいじゃないですか。私にはそこまで開くのはマジで時間かかるなっていうのもあるし、MOMOKAちゃんの真ん中に来ただけで曲が変わったかのように空気を自分のものにする力っていうのは学べるところがあって。私以外の9人に対して私にはないもの。これができたら絶対モンスターになれる」

ちゃんみなとの面談では、小さいころから抱いていた夢も語っていた。

「笑顔にしたい。笑っていてほしい。難しいかもしれないけど、私が踊ってる歌ってる、その間だけでもネガティブなそういう気持ちはひとつもなし。ただハッピーだし、楽しいっていう“THE enjoy”みたいな切り替えられる人になりたい」

NAOKOは夢に向かって常に前を向いている。スタッフにはこんなことも話していた。

「練習がないと生きていけないタイプの人間だからこそ、マジで止まることはないです」

ポールダンスに挑戦するKOKONA

候補生たちがさらなる変化を遂げている中で、「TO HATERS」を披露することになったKOKONAもまた新しい挑戦を始めていた。

それはポールダンスだ。ちゃんみながライブで披露したことがあると聞き、自分も取り入れたいと思ったという。

KOKONAが披露する「TO HATERS」にはこんな歌詞がある。

<努力もしないくせに/Why are you jealous of me?>

その歌詞に自分がリンクしているかまだ自信がなかったことから、努力が見えることをしたいと思ったとか。自宅でもV字バランスをしながらボーカルの練習をしている。

「これからデビューできたとして、いろんな状況で適応できるようになったらプロって言えるなと思って。(……)できるって思ってたらできたことは何回もあるので、ちゃんと自分を信じてやりたいと思います」

MOMOKA「……がんばります、もう」

一方、スタジオで夜な夜なダンスに取り組んでいるのはMOMOKAだ。5次審査の結果発表でちゃんみなから「もうちょっとダンスをがんばってほしい、一回めちゃめちゃストイックにならないとパフォーマーとしては足りない」と言われていた。

これまでほかのオーディションなどで最終審査まで残れてもデビューには至らなかったというMOMOKA。ちゃんみなの言葉を受けて、自分の詰めの甘さについて改めて実感しているようだ。

そんな彼女にちゃんみなが提案した曲は、「PAIN IS BEAUTY」だった。

ちゃんみな - PAIN IS BEAUTY (Official Music Video)

ちゃんみなが20歳のときに実体験をもとに書き上げた曲。「どんな人でも夢は叶えられる」という、夢を追いかけている人へのメッセージソングだ。

後日、ちゃんみなはMOMOKAに“努力のハードル”を課す。リモート演出会議でこんな提案をしていた。

ちゃんみな「たとえばダンスブレイクとかは考えてる?」

MOMOKA「全然考えてなかったです」

ちゃんみな「MOMOKAにダンスがんばってほしいって言ったじゃん。それがここで見えたらいいなって思ったんだけど、どうかしら?」

MOMOKA「……がんばります、もう」

ちゃんみな「歌とラップがもう上手だからさ。がんばったんだなMOMOKAっていうのが一番見やすいかなと思うから、ダンスブレイクをあえてこの曲につけるのはいいかなと思うんだけど、やってみる?」

MOMOKA「やります!」

苦手意識から、目を背けてきたダンス。自宅でも筋トレを欠かさない。ストイックさを鍛えるため、自分に我慢を強いる筋トレをしている。スタジオを借りて3、4時間練習する日もあるという。

MOMOKAは確実に成長していた。ダンサーからは飲み込みが早いと評価されている。努力を重ねているためか、彼女の表情は自信に満ちて明るい。

YURI「やってきた自分を信じている」

本番まで1カ月。徐々に最終審査が迫るなか、ボイストレーニングに励むのはYURIだ。1on1面談で、YURIはこんなことを打ち明けていた。

「人にNoと直接的に言われたことはなくて。中3のときにお父さんを亡くして、暗くなったというか前より落ち着きすぎた。大人にならなきゃいけないと思って」

ちゃんみなも感情を失くしたことがあった。悲しいとも、うれしいとも思わない、恋愛をしていても何も感じない。そんなときに作った曲があるという。

それは「ハレンチ」だ。

ちゃんみな - ハレンチ (Official Music Video) -

「恋愛の曲だと思っている人がいるんだけど、実は音楽に対して言っているんだよね。私の感情はどこいったの?って曲なの。これがYURIのメッセージ性と楽曲と合っているかなと思うんだけど」

YURIはこの曲をずっと聴いていたそうだ。ちゃんみなは、こうも続けた。

「YURIの中で何かを失ってしまって、自分の中でなくなったものを取り戻そうとするのって、いろんな人に勇気を与えられるものだと思うんだよね。『ハレンチ』でどうかな?」

うっとりとうれしそうな表情でうなずいたYURI。

しかし、ひと筋縄ではいかなかった。自分の声をうまくコントロールできず、自分に対する苛立ちや焦りで涙を流してしまう。個人レッスンで浮き彫りになった課題。自宅では鏡に向かって表情を研究、ボーカルレッスンにも喰らいついて練習を重ねた。

後日スタッフがYURIのいるスタジオに足を運ぶと、ボーカルの課題を克服した彼女の姿があった。日々の努力によって自信がついてきたのか、表情も違う。

「自信あります。やっぱり今までやってきた過程があるので。絶対成長していると思うし、今までやってきた自分を否定するのは絶対にダメだと思っているので、やってきた自分を信じているからかなと思っています。もうどんと来いって感じです」

果たしてKアリーナ横浜ではどんなパフォーマンスを披露するのか。感情を解放して新たな表情を見せてくれるであろうYURIに、期待が高まる配信だった。

次回、Ep.14も最終審査に向けて努力する候補生たちに密着していく。

【『No No Girls』配信スケジュール】
■Ep.14:配信中
■Ep.15:2025年1月17日(金)20時~

【No No Girls】Ep.14 / Final Round -Letters to No No Girls-

この記事の画像(全95枚)




この記事が掲載されているカテゴリ

Written by

奈都樹

(なつき)1994年生まれ。リアルサウンド編集部に所属後、現在はフリーライターとして活動しながら、クオーターライフクライシスの渦中にいる若者の心情を様々な角度から切り取ったインタビューサイト『小さな生活の声』を運営中。会社員時代の経験や同世代としての視点から、若者たちのリアルな声を取材している。

QJWebはほぼ毎日更新
新着・人気記事をお知らせします。