松本清張賞受賞第一作、郊外文学の旗手・波木銅の連載小説が待望の書籍化!「原発」と「搾取」がテーマ
郊外文学の新たな旗手・波木銅による『ニュー・サバービア』が2024年1月19日(金)に太田出版から刊行される。
郊外文学の新星による傑作
今作はOHTABOOKSTANDでの連載小説「ニュー・サバービア」を長編として再構成したもので、「原発」と「搾取」がテーマに据えられた、本格的なエンタテインメント小説。原発のある町で生まれた突然変異種の人喰いワニ・サバービアと、親友の死をきっかけに小説家の夢をあきらめたギグワーカー・馬車道ハタリによる破天荒なロード・トリップ作品だ。
「犯罪が犯罪として扱われない」郊外の不条理な世界観、読む手を止めさせないアクションシーンの緊迫感と疾走感、主人公・馬車道ハタリの痛快かつクリティカルなセリフの数々……。松本清張賞で高い評価を受けたエンタメ性とユーモアにさらに磨きをかけ、「原発×未確認生物×パワフルガール」が織りなす郊外文学の最高傑作となっている。
波木銅コメント
今回の小説では、「原発」が大きなモチーフとして描かれています。私自身もともと北関東の原発近くの町の出身で、小学生のころは遠足で原子力科学館に連れていかれたり、作文を書いたりしていたのを覚えています。今になって思い出すと「とんでもないことをしていたな」と思うんですけど、当時は無邪気だったし、変だとも思わなかった。それから小学生のころに東日本大震災を経験して、都市部で使う電力を作るために、地方の人たちにリスクを押し付けるのはどうなんだ?という思いも生まれました。
ほかにも本作のなかでは、主人公の馬車道がたびたび世の中の搾取の構造を批判しています。その大きな搾取の象徴として「原発」というモチーフを描いたという側面もあります。あとは主人公が日銭を稼いでいるフードデリバリーの仕事もそうですし、主人公のファストファッションに対する批判もそうです。世の中に自然に組み込まれている搾取の構造は今も普通に存在している。それに対する反発をテーマに描きました。もちろん、その構造に取り込まれざるを得ない人たちの視点も描いたつもりです。
今でも現実にそういう搾取がある、というのはまだ解決できない問題ですし、そういう問題を考えたりするのは大変なことですが、文章を書く立場にいる以上、考え続けるべきだと思います。それで、少しずつマシな世の中にしていければ、と思っています。
波木 銅(なみき・どう)
1999年生まれ、茨城県出身。大学在学中の2021年、『万事快調(オール・グリーンズ)』(文藝春秋)で第28回松本清張賞を受賞しデビュー。2024年1月に『ニュー・サバービア』(太田出版)を刊行予定。
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太田出版 山本大樹 [email protected]