君は“ぷにぷに電機”を知っているか

2020.1.15
ぷにぷに電機

文=荻原 梓


あいみょんや“ヒゲダン”など、最近は不思議な名前のアーティストがヒットチャートを席巻する。2019年夏、ライター・荻原梓さんの心を奪ったのは、ぷにぷに電機という名前のシンガー/音楽プロデューサーだった。

インターネットを中心にマルチに音楽活動をつづけるぷにぷに電機、通称“ぷに電”は、ゆるい名前に反し高い音楽センスを感じさせる。今回は、2019年6月にリリースされ、同年10月にはレコード化された「君はQueen」から、その魅力を紐解いていく。

“女王”に魅せられて

全英女子オープンで優勝したスマイルシンデレラこと渋野日向子選手に夢中になり、近ごろ女子ゴルフの放送をよく見ている。

無欲の勝利と評される彼女の優勝。帰国後の会見でパットのコツを聞かれると「決めたら打つ」、今食べたいものは「梅こんぶ」、世界のトップ選手から学んだことは「なにを学んだんだろう……学びに行ったんですけどね、優勝しちゃったんで(笑)」と爆笑をかっさらう。飾らない姿勢がまったく痛快だ。

ミスを恐れず攻めまくる彼女のプレイスタイルを見ていると本当に気持ちが良い。意志の強さ、自由な姿勢、取り繕わない言葉。まさに彼女こそ“女王”にふさわしい。

この夏ネットでバズった「君はQueen」。ガールでもウーマンでもなく、あるいはシンデレラでもなく、クイーンなのがいい。侵しがたい魅力を持った強い女性という感じがする。

『ボヘミアン・ラプソディ』の熱もちょうど冷めてきたころに火が点いたのはなにかの巡り合わせか。電気グルーヴの電気ではない。ヤマダ電機の電機である。ぷにぷにの電機である。

そんな脱力させられる名前とは打って変わって、洗練された音作りは今後の飛躍を大いに期待させる。無駄に鮮明な、最高に赤い、マジで簡単に、かなり強烈な……と歌詞に程度の副詞と形容詞をふんだんにまぶすことでトレンディ感を演出。低めの歌声もセクシーでいい。

特に印象的なのが歌い方だ。映すを“ふつす”と発音させて耳を誘惑するボーカルにグッとキてしまった。夏の夜、茹だる暑さを和らげる冷却剤として最良のBGMであった。

話を戻そう。今の日本の女子ゴルフ界は渋野選手をはじめとする98年度生まれ、俗に言う“黄金世代”の新人たちが盛り上げている。大会では必ず若手が上位争いに食い込み実力者たちを脅かす。ゴルフ界のレジェンド・樋口久子をして“新人類”と言わしめるほど型にハマらない選手たちが続々と登場しているのだ。

そしてなにより見ていて華がある。退屈だったゴルフ中継が彼女たちの活躍や笑顔によって、いつしか毎週の楽しみになっていた。タレントが年々減っている感のある音楽業界に身を置く筆者は、そんな状況を素直にうらやましく思う。

音楽シーンにもちょっとずつだが新しい波が訪れている。あいみょん、ヒゲダン、そして“ぷに電”……最近は不思議な名前のアーティストが多いが、そんな若手が飄々と人気を勝ち取っていく様子がなんともキヨキヨしい。



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荻原 梓

(おぎわら・あずさ)日本の音楽を追いつづける88年生まれのライター。『クイック・ジャパン』、『リアルサウンド』、『ライブドアニュース』、『オトトイ』、『ケティック』などで記事を執筆。

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