『あの頃。』の松坂桃李に伝えたい、ハロヲタ「一体感」の秘密<ミラーではなくコピー>
“ハロヲタ”青年の甘く切ない日々を綴った、劔樹人の自伝的マンガ『あの頃。男子かしまし物語』が、松坂桃李主演で『あの頃。』のタイトルで映画化される。監督を務めるのは今泉力哉、脚本は冨永昌敬が手がける。公開は2021年の予定だ。
モーニング娘。、アンジュルム、Juice=Juiceなどが所属する女性アイドル集団、「ハロー!プロジェクト(ハロプロ)」。20年以上の歴史を持つハロプロのファンとして、一般的な“アイドルヲタ”とは異なる文化を持っているといわれるのが“ハロヲタ”だ。映画の中でもその独自性をしっかりと再現すべく、ハロプロのファンクラブを通じて観客役のエキストラを募集している。まさに、ハロヲタにハロヲタを演じさせることで、リアルなハロプロの世界を描こうとしているのだ。
では、その独自性とは一体どんなものなのだろうか。ここでは、20年以上にわたってハロプロを追っている筆者が、コンサート現場におけるハロヲタの独自性について紹介していきたい。
とはいえ、長い歴史があるハロプロなので、時代によって現場の雰囲気もそれなりに変遷しているのも事実。そのすべてを網羅するのはあまりにも大変なので、ひとまず本稿ではここ数年の現場の様子について解説する。
目次
アイドルの定番“ミックス”はハロプロにはない
ハロヲタを象徴するキーワードのひとつとして「対応力」がある。たとえば、こぶしファクトリー(※1)の和田桜子が2020年1月26日に更新したブログにも、「対応力」という言葉が登場している。和田は、コンサートで新曲『スタートライン』を初披露したときの様子についてこう綴っている。
そう、それでね
スタートライン!♡。 和田桜子
昨日初披露した時に
1番、2番、間奏、ラストサビって曲の中で
1番の終わりくらいからもう皆さん声を出してくれてて!!!
対応力が凄すぎて!!!
(※1)2015年に結成されたユニットで、同年「第57回日本レコード大賞」最優秀新人賞を受賞。2020年3月30日をもって活動終了の予定。
観客全員が聴いたことがない曲であるにもかかわらず、なぜか応援のコールが入ってくる。初めて聴いた曲にコールを入れてしまうほどの「対応力」を持っているのが、ハロヲタなのだ。
しかも、ハロプロ現場では、どんなアイドル曲でもハマるような汎用性の高い定番コールはほとんど使われないという特徴もある。イントロで叫ぶ“ミックス”(※2)はハロプロでは絶対に入らないし、アイドル曲のサビでよく使われる“フッフー…フワフワ”というコールも、つばきファクトリー(※3)の数曲でしか使われない。
そもそもハロプロの楽曲には、定番コールがハマるような“アイドル曲らしいアイドル曲”が少ない。だからこそ、フォーマットに落とし込むのではなく、楽曲それぞれに合ったコールをするのだ。
(※2)有名なミックスは「タイガー ファイヤー サイバー ファイバー ダイバー バイバー ジャージャー!」。グループによってさまざまな派生系が存在する。
(※3)2015年、こぶしファクトリーに続いて結成されたユニット。2017年に「第50回日本有線大賞」新人賞、「第59回日本レコード大賞」最優秀新人賞を受賞。
「ソロ以外ではメンバーの名前をコールしない」理由
ちなみに、曲中でメンバーの名前をコールするのは、ソロパートに対してのみとなっている。ふたり以上で歌っているパートのあとに明らかにコールが入りそうなタイミングがあったとしても、ハロヲタはそこで沈黙する。
このような暗黙のルールができあがったのは、「メンバーの名前を呼ぶヲタの数に多い少ないがあるのはよくない」という理由からだともいわれている。たしかに、複数人パートでのコールがOKならば、「私の名前を呼んでいるファンの人が少なすぎる……」などと傷つくメンバーが出てきてしまう。そんな悲劇を生まないための暗黙のルールなのかもしれない。
また、Bメロ以外のボーカルが入っている部分には極力コールを乗せないという傾向もある。あくまでもハロメン(ハロプロメンバー)の歌を堪能するのがハロヲタ。ステージ上のハロメンこそが主役であるということは、絶対に忘れないのだ。
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