m-floと宗教と曲作り「大切なのは<違ったもの>をいかに取り入れるか」
1999年7月に「the tripod e.p.」でメジャーデビューを果たした3人組ユニット、m-flo。コロンビア人の母親と日本人の父親を持つLISA、在日韓国人のVERBAL、インターナショナルスクール育ちの日本人TAKUという出自の異なる3人。
ここでは、1999年に収録したインタビューから、クリスチャンになった理由、それぞれの人生哲学などを赤裸々に語り尽くしたパートをウェブで初公開する。
【インタビュー前編】m-flo 差別とアイデンティティを語る
※この記事は1999年6月に発売された『クイック・ジャパン』vol.25に掲載されたインタビューの転載です。
「やっぱり俺、黒人じゃないし」というワナビー
―――みなさん、ちょうど24歳ぐらいですよね。小学校の時にラップとかヒップ・ホップとか出てきたと思うんですけど、その頃聴いてた曲とかフレーズで、残ってるものってあります?
VERBAL 僕、RUN DMCをはじめに聴いたんですよ。お母さんがアメリカの大学院に英語を習いに行ってて、僕なんかついて行くわけにはいかないから、僕と妹はYMCAのデイキャンプに行って、お母さんが帰りに迎えに来てくれてたんですけど、「自分以外みんな黒人」っていう中で、しかも日本から来て英語もしゃべれない。そんな状態だったんです。
その頃、バスでどこかに行った時に、みんなバスの中でRUN DMCの「It’s Tricky」を歌ってて。その時知ってた英語で、「これ、何歌ってんの?」って話したら、「おまえ、RUN DMCも知らねえのかよ?」とか言われて。その夜、お母さんに「僕もRUN DMC買いたい」とか言って、「どんな歌なの」って言うから、僕がそこでやり出したら、「えっ! 何それ?」とか言われちゃって(笑)。それが最初ですね。
僕、一番印象的だったのは、その歌詞の中の“I’m black & I’m proud”って言葉で。でも、その時、「えっ? 本当にそう思ってんの?」って思ったんですよ。自分は人種差別的なんだな、視野が狭い人間なんだなって思いましたね。そうじゃないですか。でも、彼らはそんなこと堂々とトラックの上で言えて主張してるから、やっぱ「うんうん」って、自分の韓国人のアイデンティティっていうのも考えたりとかして。
ラップを始めてからインスパイアされたのは、ギャング・スターの『Step In The Arena』っていうアルバムで、それを聴いた時に魅かれたのは、メタファーとかの使い方がうまい。ただ直接的に自分の現状を言ってるだけじゃなくて、いろんなアナロジーを使って、ものに例えて分かりやすく言ったりして、すごい詩的でかっこいいなーと思って、僕もこういうのだったらしたいなーと。その時までは、「やっぱり俺、黒人じゃないし」とか思ってたりとかして、ただのワナビー(なりたがり)だったような感じなんだけど。