DOTAMAの“ジャイアントキリング”が華麗に決まるのを見てみたい

2020.1.15
DOTAMA『社会人』

文=荻原 梓


下克上、あるいは大物食いとも表現される言葉、“ジャイアントキリング”。曲名「GIANT KILLING」は、Jリーグ・サガン鳥栖の応援ソングであり、ラッパー・DOTAMAによる書き下ろしだ。

ライターの荻原梓が、ラグビーや麻雀など2019年に起きた数々の華麗な“ジャイアントキリング”を振り返ると共に、「GIANT KILLING」収録アルバム『社会人』についても解説する。

※本記事は、2019年12月25日に発売された『クイック・ジャパン』本誌vol.147掲載のコラムを転載したものです。


人々を熱狂で包む“ジャイアントキリング”

人びとを熱狂させる“ジャイアントキリング”。下克上、あるいは大物食いとも表現される。

2019年のジャイアントキリングで一番に思い出すのは、やはりラグビーワールドカップにおける日本代表の活躍だ。

アイルランドやスコットランドといった格上と思われていたチームに必死に食らい付き、団結して勝利をもぎ取っていく姿に胸打たれた者も多いはず。

「自分たちだけが勝つと信じていた」と強調する彼らの言葉に、ニワカながら筆者もどこか忘れていたものを思い出させられた一年だった。

麻雀のプロリーグ・Mリーグにおいても稀に見る劇的な展開があった。10月29日の試合。この日はプロ歴たった2年のルーキー丸山奏子選手のデビュー戦。

しかし、相手は麻雀界の顔である多井隆晴、滝沢和典、佐々木寿人というスター3人。さすがに分が悪いかと思われた紅一点の卓上で、彼女はトップを獲るためのわずかな可能性に賭ける選択肢を選び、見事終盤で大逆転。

控え室に戻るや否や発した「トップ獲りたかったんだもん!」は一躍麻雀界の流行語に。筋力や身長差関係なしに老若男女が同じ土俵で戦える競技だからこそ起きた“ジャイアントキリング”に、素直に感動してしまった。

“社会人讃歌”の詰め合わせ

Jリーグ・サガン鳥栖応援ソング「GIANT KILLING』はDOTAMAの書き下ろし。J1残留が危ぶまれているサガンを独特のリリックで奮い立たせる。

そんな一曲も収録された新作『社会人』は、いわば“社会人讃歌”の詰め合わせ。毎日大人しく働く現代人をほめ称える「社会人」、残業しながらも家に帰りたい気持ちを歌う「おうちへ帰ろう」、朝の通勤ラッシュを明るく歌い上げる「MORNING RUSH」と一見見栄えは応援歌的だが、聴けば聴くほど皮肉じみていて非常に気持ちが悪い(ほめ言葉です)。

ラップミュージックのイメージを覆すようなスーツ姿も、“栃木県佐野市PR大使”や“とちぎ未来大使”といった肩書も、どれもこれも社会人的で、彼にまつわるすべてが体を張った風刺のよう。

サガンの残留争いも熾烈だが、今季就任したチーフ・ラップ・オフィサー(CRO)の契約継続も佳境のようで、グッズの売れ行きによっては続投可能らしいが、なぜ栃木出身が佐賀のチームを応援するのかという痛い指摘もあり、現状は非常に厳しいという。

考えてみれば、社会人ほど“ジャイアントキリング”から遠い存在はない。だからこそ、今後の活動で彼の“ジャイアントキリング”が華麗に決まるのを見てみたい。




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荻原 梓

(おぎわら・あずさ)日本の音楽を追いつづける88年生まれのライター。『クイック・ジャパン』、『リアルサウンド』、『ライブドアニュース』、『オトトイ』、『ケティック』などで記事を執筆。

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