配信で観られる日本未公開映画4選!グッチーズ・フリースクール推薦

2020.1.18

まさかの登山映画『トリプル・フロンティア

暴力と黒い血=石油、骨太なアメリカ物語『アメリカン・ドリーマー 理想の代償』を撮った実力派J・C・チャンダー監督の麻薬犯罪もの。ベン・アフレック、オスカー・アイザック、チャーリー・ハナム、ペドロ・パスカルにギャレッド・ヘドランドという面々を見て、相変わらずゴリゴリで渋いアメリカ映画を撮っているなあ、と思ったのは前半までだ。
米陸軍特殊部隊だった仲間を集めて、麻薬王を襲撃。大金を強奪したのはいいが、札束が多すぎてヘリがアンデス山脈を越えられないという珍事から、マッチョ5人が重い札束をかついでボヤきながら登山するという展開に。ひたすらに重いブツとしての札束ひとつによって、手堅い活劇からシュールで滑稽なサバイバル劇への変貌は、監督の妙味か、気の迷いか。
実にヘンテコな映画で、チャンダー監督作の中で最もつかみどころのない本作は、その計り知れなさゆえに埋もれさせたくないと強烈に思わされ、大穴狙いで配給するのも一興だ(実のところNetflix映画のため配給は難しいが……)。こういう映画に限って、気づいたら監督の最高傑作なんて言われる日がくる……かもしれない。

『トリプル・フロンティア』(字幕版)

インディペンデント精神あふれるすべてのものたちへ『ルディ・レイ・ムーア

『ハッスル&フロウ』、『ブラック・スネーク・モーン』、『フットルース 夢に向かって』と、音楽で救われる人々を描き続けてきたクレイグ・ブリュワー監督の新作は、70年代に活躍した実在のミュージシャンでコメディアンのルディ・レイ・ムーアをエディ・マーフィが演じた伝記映画だ。ブリュワー監督作にとっては絶妙な題材で、これだけで配給!となるのだが、Netflixオリジナルだから打つ手なし(でも作ってくれてありがとう)。
ブリュワー映画の主人公である持たざる者たちは、貧者だからこそのアイデアによって、身の回りにあるものを組み合わせ、作り変え、オリジナルを生み出していく。だから始まりはいつも自宅だ。再起をかけて自らを作り変えるとき、自分のみならず世界が輝き出す幸福な瞬間こそ、インディペンデントがもたらす、なにものにも代えがたい恩恵だろう。このままでは終わるはずがないと野心を抱くインディペンデント精神あふれるすべての者たちとともに、ムーアが実際に監督した『ドールマイト』シリーズ映画祭の開催が待望される。

『ルディ・レイ・ムーア』予告編(字幕版)

この記事が掲載されているカテゴリ

グッチーズ・フリースクール_降矢聡

Written by

降矢 聡

(ふるや・さとし)映画上映団体グッチーズ・フリースクール主宰、『ムービーマヨネーズ』企画・編集。2020年3月7日に編著『USムービー・ホットサンド 2010年代アメリカ映画ガイド』(フィルムアート社)が刊行。また『DVD&動画配信でーた』にて、コラムを連載中。共著に『映画を撮った35の言葉たち』、..

ツートライブ×アイロンヘッド

ツートライブ×アイロンヘッド「全力でぶつかりたいと思われる先輩に」変わらないファイトスタイルと先輩としての覚悟【よしもと漫才劇場10周年企画】

例えば炎×金魚番長

なにかとオーバーしがちな例えば炎×金魚番長が語る、尊敬とナメてる部分【よしもと漫才劇場10周年企画】

ミキ

ミキが見つけた一生かけて挑める芸「漫才だったら千鳥やかまいたちにも勝てる」【よしもと漫才劇場10周年企画】

よしもと芸人総勢50組が万博記念公園に集結!4時間半の『マンゲキ夏祭り2025』をレポート【よしもと漫才劇場10周年企画】

九条ジョー舞台『SIZUKO!QUEEN OF BOOGIE』稽古場日記

九条ジョー舞台『SIZUKO!QUEEN OF BOOGIE』稽古場日記「猛暑日のウルトラライトダウン」【前編】

九条ジョー舞台『SIZUKO!QUEEN OF BOOGIE』稽古場日記

九条ジョー舞台『SIZUKO! QUEEN OF BOOGIE』稽古場日記「小さい傘の喩えがなくなるまで」【後編】

「“瞳の中のセンター”でありたい」SKE48西井美桜が明かす“私の切り札”【『SKE48の大富豪はおわらない!』特別企画】

「悔しい気持ちはガソリン」「特徴的すぎるからこそ、個性」SKE48熊崎晴香&坂本真凛が語る“私の切り札”【『SKE48の大富豪はおわらない!』特別企画】

「優しい姫」と「童顔だけど中身は大人」のふたり。SKE48野村実代&原 優寧の“私の切り札”【『SKE48の大富豪はおわらない!』特別企画】

『Quick Japan』vol.180

粗品が「今おもろいことのすべて」を語る『Quick Japan』vol.180表紙ビジュアル解禁!50Pの徹底特集

TBSアナウンサー・田村真子の1stフォトエッセイ発売決定!「20代までの私の人生の記録」