【第2回】窪塚洋介 「環境=神様」なんです(2003年12月収録)

2020.1.15

大切なカードを自分の中で手に入れた――水の話

窪塚 TV番組『地球維新』の中で水の共鳴現象の実験をしたんですよ。その実験が自分にとってすごく大きくて。例えば「ありがとう」と言った水と、「死ね」と言った水では味が違うんですよ。電子顕微鏡でみると、水の結晶の出来が違うという。

もしこれが事実なら、人の思いや言葉が水に伝わるということ。今まで何となく感じてたこととか、信じてたことが、やっぱりそうなっていたんだと、実験をして確認をして、「間違いない」と思ったから、俺はちゃんと伝えようと思った。人間の体の70%を水が占めているのなら、世界に平和をもたらす鍵になるんじゃないか。大切なカードを自分の中で手に入れたという感じがしましたね。そのカードは誰にでも出せるカードだから、ジョーカーみたいなものなんです。

――「水」って何かな?

窪塚 水は命でしょ。生命の光。地球は水の惑星。こういう惑星。他にないものね。一千億分の一だって。そういうところに俺たちが生きている、今この時間をシェアできてるという事実は、やっぱりものすごくかけがえのないことだよね。で、その水が「思い」によって変わるとういうこと自体がすごいと思う。「ありがたい」って、漢字で「有り難い」と書くじゃないですか。

――「ほとんどない」ってことだよね。

窪塚 「ありえない」みたいな。地球がここにあって、太陽があそこにあって、月が太陽と同じ大きさに見える状態のポイントにあって。それは一千億の星が銀河にあって、そん中の一千億分の一。それから、水がこの状態で存在することも特別で。他の惑星では、凍ってるか水蒸気か。本当に“バランス”ですよね。バランスのどんぴしゃなところでしか、水は水としてこの状態では存在できない。やっぱりここにいると当たり前に思うんだけど、ガイアの目線というか、惑星規模の目線でものごとをみるのもすごく大切だと思う。

――宇宙から地球をみつめるんだね。

窪塚 「みえない世界」はこの目線からではとらえられない。だからといってみえる世界を否定したいわけでもないし、ただ、何か融合していって欲しいということをすごく感じてる。みえる世界とみえない世界でひとつだけと感じるから、水の存在は、そういうことを確認できるし基礎とすることができる。例外が存在しないからね。地球にいるすべての人が水の循環の中に生きているから。

――これは水の話ではなくて、ハートの話だな。思いが世界を変えていくんだっていう。思いが世界を変えていくんだったら、僕たちにも世界を変えられるってことにつながる。

窪塚 相似象(※8)になってる。細胞から銀河まで。例えば、自分の中にある「陰」とか「陽」が、表にあらわれてるわけだし。日本で起きてる小競り合いの、大きい相似象が戦争だったり。

――宇宙で起きていること、自分の内側で起きていることが同時進行なんだ。

窪塚 先日、雑誌の取材があったんだけど、ライターの女の子に「窪塚さんが言っていることは大きすぎます!」と言われて。よく言われるんですよ、「それはキレイごとだ」って。だけどその時も、「本当にそうだから」と言ったんですよ。サイズが違うだけで、本当に隣の人との話だと思って聞いてもらってもいいんだけど、形は変わりませんと。これは絶対間違いない。すべてが陰陽のマークになってるから。

いいことも悪いことも全部ガイダンスすれば、全部がバッチリっていうか。ホントに、「俺は今、ここにしか存在しないんだ」という感覚がすごくある。未来の、明日の心配に今を使いたくないし、昔の後悔に今を使いたくない。だから今、この瞬間を生きる。まあもちろん、考えごとしてる時はあるけどね(笑)。

――今ここにあること。基本的には仏教が伝えてることも結果的にはそこだと思うんだけど。結局、思い煩うなってことだよね。

窪塚 うん。今を生きながらね。

融合していく。和していくこと――地球維新

――「地球維新」のテーマである石油中心の世界ではない、もうひとつの未来というのを、少し具体的に話してもらえますか。

窪塚 自分を成り立たせている命の循環を敬い、大切にし、生態系の和を守ること。今の世界は石油経済中心システムって感じで。分かりやすく言えば、エネルギーが石油で廻ってる文化、バビロンシステム(※9)

結局、そこにいってるのはアメリカだったり国際的な資本のある一部分だっていう話もあったりする。結局。何億円とかかけて地球が生成してきた、地下にあるものを掘り起こして、一瞬で消費してしまう。それをめぐって戦争を起こしていく。環境を破壊し貧困が繰り返される。世界の貧富の差を作り出している。それで、その権益をめぐって争い、その他の人たちがみんな、歯車になっていく。

――それは、変えられると。

窪塚 ていうか、知れば出られる。それがなんか温故知新だなって。そこも「維新」(スーパーニュー)という言葉を使ったのは、革命(レボリューション)は全とっかえだけど、維新は今あるもののいいところを残していこうという考え方。古いものと新しいものの合体がスーパーニューだから。

今は一部の人間が握っている世界だから△(さんかく)(※10)になってるんだと思う。でも本当は○(まる)で。今の石油システムに変わるシステムをどんどん取り入れていくことで和していく。そこでもレボリューションじゃなくて、「石油をやめよう!」という戦いじゃなくて、融合していく。和していくこと。全部同じテーブルに乗せることがやりやすい時だと思うんだよね。方法もあるしさ。

――具体的に、変わるシステムとは?

窪塚 例えば、それは自然エネルギー(※11)バイオマス(※12)。天然循環資源と言われるもので、植物や地上資源でまかなっていく社会。藻とか、麻とか、太陽が源になっている循環する資源のもの。

――オルタナティブな世界がちゃんと作れることを分かれば、未来が自分たちで選択することができるって思えるよね。

窪塚 俺の中では環境=神様なんです。目に映るのも、口にするのも、匂いも、全部。あらゆるものが俺の中で「神様」なんです。


*注釈

※1:ガイダンス
辞書的な定義で言えばある事柄についての「指導」「助言」「援助」のことである。窪塚の生き方は「すべての出来事をガイダンスとしてとらえていく」という考え方がベースにある。すなわち、この世界で起こるあらゆる出来事をスピリチュアルな「指導」「助言」「援助」として受け取っていこうという考え方である。いいことも悪いことも「指導」「助言」としてとらえれば、感じ方も変わってくる。

※2:ポジティブ・シンキング
どんなに最悪に思えることでも、その中に必ず肯定的な側面がある、という考え方。結果、現実もプラスの方向に変わっていく。窪塚は常にポジティブ・シンキングの状態にチューニングを合わせておくポジティブ・チューニングを提唱している。

※3:陰陽
この世の中すべては陰と陽のふたつからなるという中国古来の易学に基づく考え方。光と闇、男と女、右と左、善と悪、天と地など。陰の中にも陽があり、陽の中にも陰がある。窪塚の言う「最悪と思われる中にも、いい流れが必ずある」というガイダンスのとらえ方や、「己の中に敵がいる」という考え方のベースになっている。

※4:ワンネス
「生命は離ればなれではない。私たちは一体である」という考え方。すべてをエネルギー、あるいは波動ととらえることで、時間、空間も含めて宇宙は一元的にとらえることができる。森羅万象をひとつの神性としてとらえる自然観、北米先住民のグレイトスピリット、宇宙全体をひとつの生命としてとらえるホーリズムを経て、80年代のニューエイジ思想の中で生まれた考え方。

※5:水の結晶
水に対して優しい言葉を投げかけると美しい六角形の結晶ができ、逆にののしると崩れた結晶ができるという。人の思いや言葉の力が、水の分子に作用するという実験だ。自ら企画した番組「地球維新」の中で「水の共鳴現象」の実験に参加した窪塚は、「ありがとう」という言葉に思いをこめて、水を氷結させる。水は美しい六角形の結晶となった。そして窪塚は、ある確信にいたる。それは「思いは伝わり、世界を変える」ということだ。

※6:ウラン弾
放射性廃棄物の劣化ウランで作られる弾丸。湾岸戦争では300トン以上の劣化ウラン弾が使用されたという。広島に落とされた原爆の1万4000倍から3万6000倍の放射能原子がばらまかれたことになる。標的に当たって燃焼する際、劣化ウランが微粒子となって飛び散り、土壌や地下水なども汚染。過去の使用例から、兵士や周辺住民に、がんや白血病を含むさまざまな健康被害が生じていることが報告されている。

※7:森住 卓
1951年、神奈川県生まれ。フォト・ジャーナリスト。世界の核実験場、原発、イラクの劣化ウラン弾被害・経済制裁、沖縄の米軍基地など多くの貴重な写真レポートを行なっている。全国でイラクの劣化ウラン弾被害の子供たちの写真展を開催している。『週刊少年マガジン』03年11月12日発売号に森住卓のイラク取材を描いたマンガ「汚れた弾丸」が掲載され大きな反響を呼んだ。森住卓ホームページhttp://www.morizumi-pj.com/

※8:相似象
すべての出来事は「相似象」になっている。「相似象」とは、天然、宇宙、自然界、人間界を通ずる森羅万象に相似の「象」があるという考え方。ミクロの宇宙とマクロの宇宙は相似している。ひとつの宇宙はそれぞれに主体性を持った無数の宇宙からなりたっているというアニミズムの世界観やカタカムナ(日本上古代民族の直感)に基づく。

※9:バビロンシステム
バビロンとは、新約聖書ヨハネ黙示録に登場する欲望の都。消費と退廃の象徴である。現代においてはアメリカのことを指すことが多い。また富を独占する一部の権力と黒幕をバビロンシステムと呼ぶ。ボブ・マーリィがアメリカ式市場経済のことをバビロンと指摘したことから、ラスタファリアンやヒッピーたちの間で重要なキーワードとなった。もともとバビロンは、ユーフラテス川の東岸に位置するバビロニアの古代都市で、現在のイラク、バクダットの南方に位置した。イラク戦争は新しいバビロン(アメリカ)が旧バビロン(イラク)へ石油利権をめぐって攻撃をしかけるという構図であったわけだ。

※10:△(さんかく)
一部の者が富を独占することから、バビロンシステムはピラミッド、あるいは三角形で表される。20世紀後半以降、世界での貧富の差はますます拡がり、例えばアメリカで最もおカネ持ちであるビル・ゲイツひとりの年収は、アメリカの低所得者一億人分の年収に匹敵する。

※11:自然エネルギー
太陽を源としたエネルギー全般を指す。風力、太陽光、太陽熱、バイオマス(※12)など。

※12:バイオマス 
生物資源(bio)の量(mass)を表す言葉であり、「再生可能な、生物由来の有機性資源(化石燃料は除く)」のことを呼ぶ。具体的には、農林水産物、稲わら、もにがら、食品廃棄物、家畜排せつ物、木くずなどで、現在、最も注目されているエネルギーのひとつ。農業廃棄物として廃棄されてるものを効率良くバイオマス発電に使えば、それだけで日本の総電力がまかなえると言われている。


【第3回】窪塚洋介  世界が変わる仕組み(2003年12月収録)に続く

窪塚洋介 (くぼづか・ようすけ)
俳優・アーティスト。1979年5月7日生まれ。神奈川県横須賀市出身。1995年に俳優デビューし、映画を中心に舞台でも活躍。2002年『GO』で日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を最年少で受賞。2017年にはマーティン・スコセッシ監督作『Silence-沈黙-』でハリウッドデビューを果たし、BBC×Netflix London連続ドラマ『Giri/Haji』にも出演するなど、海外にも積極的に進出。レゲエDeeJay“卍LINE”として音楽活動を行う他に、モデル、映像監督、カメラマン、執筆など幅広く活動中。
Netflixにて『Giri/Haji』独占配信中。

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