【第4回】窪塚洋介 「真理」に触れた体験を語る(2003年12月収録)

2020.1.15

この社会をどれだけ俺が今のチューニングで楽しみながらやれるか――PIECES OF PEACE(※4)

――世界がひとつであるという感覚をみんなが共有すること、それを「ピーシズ・オブ・ピース」という言葉であらわしていると思うんだけど。これは窪塚洋介の世界を知るための最重要キーワードだよね? でも、本当にひとつの大きなピースになるのかな?

窪塚 それはもうなっていると思うようになった。実はもうすでに完成していて、そのことを忘れている。だから、文字通りリメンバー(※5)、思い出す作業だと思うんですよ。もともと、生命がひとつだったことは、細胞が知ってるからさ。自分自身が反応できる、共鳴できるということは、そういうことなんじゃないかな。宇宙はもともとひとつで、今はバラバラだけど、水は記憶しているし、原子も覚えている。『PIECES OF PEACE』で言いたかったことは、その宇宙のジグソーパズルのことなんです。

――私たち自身が、宇宙という大きなパズルの一片(ワンピース)にすぎない、ということだよね。それを感じるためには、直感的に生きる、ということなのかな。

窪塚 直感的だけじゃなくて、俺はどっちも必要だと思う。今、「右脳が大事だ」みたいなこと言うじゃん? でも左脳はダメなわけじゃなくてさ。左脳はもう十分にイケてる文明になってきてるから、そろそろ右脳もバランス取ろうよってことだと思うんですよ。だからそういう意味で、「知る」ことは左脳的なことだし、「感じる」ことは右脳的なことだよね。でも、両方回ってるのが一番バランスがいいんですよ。だから「まるじゅう」(※6)じゃないけど、色んなことのバランスを取っていくっていう。取りやすくなってきてると思うし。

――「まるじゅう」について説明して欲しいんだけど。

窪塚 まるじゅうというのは自分と天と地のライン、自分と人のラインっていうのがちょうど縦と横に交わるその真ん中。宇宙や大地とつながりながら、人の為にできること、地球の為にできることをする、というシンボル。日本古来のシンボルで、北米先住民も同じ意味で使っているんだけど。もっと簡単に言えば、自分が楽しみながら世の中がよりよくなっていくっていうポイントだったりする。

俺ある時期、仕事なんかやめて、山にでも行っちゃおうかなと思ってた時があったんですよ。それもアリだなと。そんな時、ちょうど子供が生まれたんですよ。ハッピーなことなんだけど、もう予期せぬことというか。それで、実際、現実的に子供の世話をしたり、生活していくうちに、「あっ、俺はここにいたい」って思った。

ブッ飛んだ世界もいいけれど、この世界で、自分のチューニングを表現していきたいと思った。だんだんとそんな感じになってきた。山に行くのも楽しいけど、行っちゃうことは自分にとって逃げることだと思ったから。もっと楽しいこと今ここにあるんじゃないかと。この社会をどれだけ俺が今のチューニングで楽しみながらやれるかということを考えるようになりました。

――行かずに踏み止まった。だから、子供の名前は「愛流(アイル=I WILL)」なんだね。最後に読者に何かメッセージありますか? もう全部がメッセージだけど、あえて一言。

窪塚 ……クイックジャパン!

――ずこーんと来たね。やっぱり日本を憂いているね。

窪塚 大和から。和(ピース)していく。クイックって言っても、あくまで、マイペースにだけど、自分の意識を開いてつなげて目覚めるってことを一言で、クイック・ジャパンみたいな(笑)。


*注釈

※1:シャクティパッ
チベット系の密教などで用いられる、言葉を一切用いずに「秘伝の伝承」を行う技法。光の働きと本質を、その対象に伝える精妙な技法である。窪塚の体験がそういったものであったかどうかは本人しか分からない。ちなみに窪塚は坂本龍一の紹介で03年に来日したダライ・ラマとも謁見を果たしている。チベット仏教に縁があるのだろうか。

※2:フラワー・オブ・ライフ
おそらく窪塚のみたヴィジョンは回転する正四面体を観想する瞑想法「フラワー・オブ・ライフ」の「マカバ瞑想」に近いものと思われる。瞑想の入口に図形のヴィジョンを用いることは密教などでも一般的で、月を観想する「阿字観」などが有名。「マカバ瞑想」は最終的には自らの身体を光の身体、すなわちUFOにすると言われている。

※3:『コンタクト』
97年に公開されたジョディ・フォスター主演、ロバート・ゼメキス監督のSF映画。地球外生命体の存在を信じていた女性天文学者が未知なる世界への旅に出るというストーリー。

※4:PIECES OF PEACE
窪塚のフォト・エッセイ集のタイトルでもある「PIECES OF PEACE」。愛、平和、宇宙、子供のこと、自分自身の心情、信念の核にあるひとりひとりのピースが結びつき、大きな宇宙的なピースとなっていくことを示す。

※5:リメンバー
リメンバーという言葉の語源には、「RE:MEMBER」すなわち「ふたたびメンバーとなる」という意味が隠されており、「ふたたびひとつになる」という意味が含まれている。

※6:まるじゅう
日本古来のシンボルのひとつ。天と地を結ぶラインと、左右を結ぶライン。それを調和を表す○の中に描きこんだ「まるじゅう」。十は完成を表す神秘的であるとともに、位があがる、次元がひとつあがるという象徴でもある。九州の島津藩の家紋であり、北米先住民ホピ族のシンボルとも共通する。

※愛流ちゃん(【第三回】の注釈より)
平成15年10月3日午後8時4分、2915gの元気な男の子が誕生しました、母子共に絶好調です。ていうか最高ですっていうかっていう。いきなり親バカフルスロットルの窪塚より。みんなで愛のポジティブヴァイブスをつないでいこう、感謝。和。(子供の誕生を報告する公式WEBサイトのメッセージより)


窪塚洋介 (くぼづか・ようすけ)
俳優・アーティスト。1979年5月7日生まれ。神奈川県横須賀市出身。1995年に俳優デビューし、映画を中心に舞台でも活躍。2002年『GO』で日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を最年少で受賞。2017年にはマーティン・スコセッシ監督作『Silence-沈黙-』でハリウッドデビューを果たし、BBC×Netflix London連続ドラマ『Giri/Haji』にも出演するなど、海外にも積極的に進出。レゲエDeeJay“卍LINE”として音楽活動を行う他に、モデル、映像監督、カメラマン、執筆など幅広く活動中。
Netflixにて『Giri/Haji』独占配信中。

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