『パラサイト』だけじゃない韓国芸能パワーと「モッタイナイ」日本(ブルボンヌ)

2020.2.21

若者は国籍問わず、可能性の玉手箱

同時期にグラミー賞では、リル・ナズ・XのパフォーマンスにBTS(防弾少年団)が参加。音楽シーンもまぐれでブレイクしたわけじゃなく、最初は損をしてでもK-POPを根付かせようと根気よく展開してきた戦略の力が大きい。世界を視野に10年以上がんばったからこそ、映画と音楽の二大ジャンルで、世界の最高峰アワードで名を馳せることができた。そこは素直に「お見事!」って言うしかないと思うの。

IZ*ONEの話に戻るけどね。秋元康さんが巨大なキャバクラよろしく握手券と親近感で青少年やおじさんを虜にしたAKB48のシステムは、まさに国内ビジネスとしてはスゴ腕の商売だったと思うの。うちらだって新宿2丁目のアイドル好きオネエたちと「スカート、ひらり」のころからちゃんと愛でてもいましたよ。でも日韓合同オーディション番組で、デビューしていない韓国人練習生と、すでにミリオンヒット連発のAKB組が合流したときに、誰の目からも明らかに韓国の練習生たちのほうが、何もかも上だったのよね。鬼瓦みたいな韓国人トレーナーのねえさん(大好き)が「あんたたちそれでほんとにデビューしてんの?」って怒ってたし、半ベソになったAKBの子たちがボイストレーニングのシーンで「やったことないし」って言ってたのにはこっちも驚いたわよ。そういう歌で毎回ウン100万枚売れちゃってたのね。

でもそんなやりとりも含めて晒して、AKBの子たちを韓国のスパルタトレーニングに参加させてみた秋元さんはやっぱりチャレンジを忘れない人だと思うし、何よりそこでメキメキ頭角を現していくAKBメンバーに惚れ惚れしたの。宮脇咲良ちゃんのきれいさとか、矢吹奈子ちゃんのソツなさとか、それまで一般的には知られていなかった本田仁美ちゃんのシンデレラストーリーっぷりとか、観てるだけのおじさんがまた感情移入してなんだか本当に誇らしくなれた。

IZ*ONEには入れなかったけど、NMB48の村瀬紗英ちゃんのエロいダンスに釘付けになったし、高橋朱里ちゃんは別のK-POPグループRocket Punchの最新MVで超かっこよく弓矢を射ってる。当たり前なんだけど、若者たちはどこの国の子たちだって可能性の玉手箱なのよね。ちゃんとスキルを育ててセンスよく見せてあげれば、ひけをとらないんだって。そして政治とか関係なく、同じチームで両国の子たちが友情を育む姿にも、ババアは何度ももらい泣きしたよ。

Rocket Punch「BOUNCY」

日本が「次のカズ・ヒロ」を生むために

アタシは雑食だから、ノリノリのK-POPにやられるのが多いってだけで、洋楽でもJ-POPでも刺さればなんでもいいの。IZ*ONEの「FIESTA」に惚れ込んでるけど、Juice=Juiceの「Fiesta! Fiesta!」も好きよ。段原瑠々ちゃんの歌声は誰にも負けてないのに、MVの制作費は100分の1くらいっぽいのが残念だけどね。K-POP流で生まれた日本男子グループJO1だって、すごいポテンシャルがあったって気づかされるし。

Juice=Juice「Fiesta! Fiesta!」

つまり出てくる言葉は、ワンガリ・マータイさんよろしく「モッタイナイ」ってこと。日本にも、ものすごい映画を作れる子や、世界に通用するアイドルやアーティストになれる子が本当はいっぱいいる。でも、その種を育てるべき大人たちの業界がすっかり内向きで縮こまってる。そういうチンコじゃモテないんだよ! もっとギューンと! てか音楽や映画の業界に入った人たちなんだから、自分が子どものころは「夢を信じないで小さくまとまる大人なんてカッコ悪い」って思ってたほうなんじゃないの?

つまり業界人自身だってみんな、もったいない。次世代のカズ・ヒロさんが才能を無限大に発揮して夢をツカメる、そんな場が日本にもどんどん増えてほしいわ。あきらめないで日本全体を再プロデュースしとくれ~!

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ブルボンヌ

女装パフォーマー/ライター。1971年生まれ、岐阜県出身。早稲田大学文学部在学中の1990年、ゲイのためのパソコン通信を立ち上げる。ゲイ雑誌『Badi』の主幹編集と同時に女装パフォーマー集団を主宰し、現在は新宿2丁目のセクシュアリティフリーMIXバー「Campy!bar」グループをプロデュース。20..

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