鈴木杏樹の不倫に関して、どうしても伝えておきたいこと(九龍ジョー)

2020.2.13
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文=九龍ジョー 編集=森田真規


話題の本を編集者として手がけつつ、ライターとしても音楽、演劇、映画、プロレスなど幅広いジャンルのポップカルチャーをフォローし、さらに近年は伝統芸能に関する連載を数多く抱えているカルチャー界の目利き、九龍ジョー。

「芸能人の不倫ニュースなんて心底どうでもいい」という彼が、今回選んだニュースは「女優・鈴木杏樹の不倫」について。ポイントは逢瀬の相手のほうで――。


芸能人の不倫ニュースなんてどうでもいいと思っていた

芸能人の不倫ニュースなんて心底どうでもいい。たとえ、そう思っている人間であっても、他人から見ればどうでもいいようなトピックが気になって仕方ないということはあるだろうし、かく言う私が常日頃関心を寄せているあれやこれやだって、そのほとんどが、他人からすれば「知ったこっちゃない」というやつだ。そんなことはよく知っている。

それでも伝えたいことがあるのです。

驚いてしまいましたよ、このニュース。

鈴木杏樹(50) 宝塚トップスターから元歌舞伎俳優の夫を奪った『禁断愛』」(文春オンライン)

あの鈴木杏樹が……! ではない。写真の鈴木杏樹がパティ・スミス似だったからでもない。驚いたのは、相手の名前である。

「きたむら、ろくろう!!!!」

思わず声が出てしまった。

――喜多村緑郎。「元歌舞伎俳優」とある。「いや、そこは劇団新派を担う若き屋台骨だろ」というご通家の声もあるが、たしかに元歌舞伎俳優で間違いはない。

ただし、この事実を付け加えてほしい。

2016年に歌舞伎界から劇団新派へと移籍入団した喜多村緑郎は、同じく梨園からの越境で新派に加わった河合雪之丞とともに、いま新派に変革の芽をもたらし、それがようやく最初の実を結び始めたところなのだ。

これをお読みの皆さんには、そもそも「新派とはなんぞや」という前提が共有されていないかもしれない。

「新派」というぐらいだから新しい。何に対して? 歌舞伎である。

明治に入って演劇の近代化が図られるなかで、歌舞伎という「旧派」の演劇に対して登場した新しい演劇なのだ。だから「新派」。

もう少し言うと、自由民権運動をベースに持つ壮士芝居や書生芝居、正劇と呼ばれる翻訳物、尾崎紅葉や泉鏡花らの文芸作品の舞台化など、主義の異なるいくつかの新演劇の担い手たちが合流することで、「新派」は形づくられた。

現在も二代目水谷八重子や波乃久里子らが中心となり、精力的に活動している新派だが、そこにかつての「新しさ」はない。ただ、近代日本の風俗や生活、哀歓などを描いた多くのレパートリーは、これはこれで磨かれた古典の輝きを湛えている。

私が考える新派の一番の特徴を挙げるなら、それは「女優と女形(男性が演じる女性役)が同じ舞台で演技をすること」だろう。そこには歌舞伎とはまた異なる女形の芸のエッセンスが継承されている。

この新派草創期のリーダーのひとりが、初代喜多村緑郎。つまり、それほどの大名跡を継ぎ、新派の未来を託された男こそ、当代の二代目喜多村緑郎にほかならない。


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九龍ジョー

ライター、編集者ほか。編集を手がけた書籍・雑誌・メディア多数。著書に『伝統芸能の革命児たち』(文藝春秋)、『メモリースティック』(DU BOOKS)、『遊びつかれた朝に』(磯部涼と共著、ele-king books)など。『Didion』編集発行人。Errand Press相談役。

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