絶望的な暑さとマスク生活、律儀に耐える日本の国民性はどこから来たか?

2021.8.14

文=中川淳一郎 編集=田島太陽


今年も連日のように日本各地で熱中症警戒アラートが発令されているが、新型コロナウイルスの新規感染者数の増加もまた留まることを知らない。酷暑のなかでもマスクの装着を求められる日々がつづくが、多くの日本人は感染症対策に従い、マスクを着けつづけている。

そこから見えてきた日本人の国民性と暑さ対策の成り立ちを、日本の過去30年の夏から考える。

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律儀な国民性と暑さ対策

今年も暑い夏になっているが、日本人は暑さに強いのでは、と思うようになってきた。東京の暑さに五輪選手がクレームを入れたり、五輪のマラソンはIOCにより札幌に変更させられた。

もう、日本は相当暑い国なのである。今の中高年にとって「地理」の授業では日本は一部の地域を除き「温暖湿潤気候」と習ったが実際は「亜熱帯」なのではないか、と思うほど暑い。総務省消防庁のデータによると、熱中症で搬送された人々は2020年7月19日~7月25日は3606人だったが、今年の同時期は8122人となり、大幅に増えている。

過去の7月を見てみると、観測史上(当時)最も暑かった2010年は17750人で、冷夏だった2009年は1182人。今年よりは涼しかった2020年は8388人だった。気温と搬送される人数は明確に関連がある。今年の7月は集計が出たら、明らかに昨年を上回ってくるだろう。

そんな猛暑の2021年夏、日本人は律義にマスクを着けて屋外を歩きつづけている。私は現在佐賀県唐津市在住だが、多くの人々が周囲に誰もいないにもかかわらずマスクを着けているのだ。もちろん、「密」過ぎる東京の99.8%という屋外マスク率よりは少ない85%ほどだが、よくぞここまで耐えられるものだ、と汗っかきの自分は毎日思っている。

そして、我々は暑さにどう対峙してきたかを考えると、案外原始的だったことがわかる。東京五輪についても、暑さ対策として登場したのは「打ち水」「浴衣」「よしず」「かぶる傘」「塩飴」などだった。

このとき、ネットでは「アホかw」という声が多数出た。それなりに暑かった過去の日本を振り返ると、今では考えられない。それでも日本人は暑がりつつも、普通に生きている。

エアコン導入の遅さに培われた暑さへの耐性

筆者(1973年生まれ)は、小中学校と大学は日本で、中学の一部と高校はアメリカだった。アメリカではエアコンが完備されていたが、小中学校(1979年~1987年)にはエアコンがなかった。夏の暑いときはただ窓を開けていただけなのである。当然、家にもエアコンはなく扇風機が1台あるだけだった。

1986年、中学に入ってもエアコンがない状態は変わらなかった。体育館も当然エアコンはないため、体育系の部活生は暑過ぎるなか、汗をダラダラ流して運動をしていた。そんな状態なだけに、生徒たちは、エアコンの効いた職員室に行くときは案外楽しいと感じていた。

そんな状態を経てセントラルヒーティングのアメリカに1987年に渡り、1992年7月に日本へ帰ってきたが、本当に家の中が暑かった。バルセロナ五輪が開催されていたが、4DKの2階建ての一軒家である我が家はついにエアコンを1台、1階の和室に導入した。2階の部屋3つはノーエアコンである。

これにより、母と姉と私はこの1階の部屋でバルセロナ五輪を観戦し、「川の字」になって寝た。エアコンをつけるときは毎度3人で罪悪感を抱いた。高齢者が熱中症で亡くなることが時々あり、その際の記事の記述では「なお、エアコンはつけていなかった」となることもあるが、この罪悪感を持っていたのだろう。

そして1993年に大学に入るのだが、私が通った大学も、古い講義棟はエアコンは一切なかった。しかも、1994年になると夏は37℃も当たり前といった状況になるが、それでも大学当局は頑なに私の在学中(1997年)まではエアコンを導入しなかった。

今回五輪で日本にやってきた外国人記者のツイッターを見ると、その暑さに辟易している様子も見受けられたが、日本人は平然とマスクをして歩いている。これは、かなり「暑さに強い国民」ということになるのでは……。ただ、オレはついていけねぇ。暑過ぎだよ、と思う2021年の夏である。

たぶん、マスク生活は日本では何年も終わらないのでは、とこの耐久性の高い国民を見ていて絶望的な気持ちになっている。

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中川淳一郎

(なかがわ・じゅんいちろう)ネットニュース編集者。1973年東京都出身。1997年博報堂入社、CC局(現PR戦略局)配属。2001年退社。以後無職、ライター、雑誌編集者などを経て現在はウェブメディア中心の編集者に。ひたすらネット上の珍騒動や事件を毎日テキストファイルに記録する生活を長年つづけている。

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