もはや東京で開催する必要はない。ネット時代の東京オリンピック事件簿(中川淳一郎)

2021.4.5

麻生大臣の「呪われたオリンピック」発言

麻生太郎財務大臣が「呪われたオリンピック」と言った。この発言には多数の批判が寄せられたものの、現状を見ると完全に呪われている。今年開催した場合、海外からの観客は受け入れない方針のようなので、インバウンド需要も完全に吹っ飛んだ。

東京都にとっては赤字になることだろう。それはすべて税金で賄われる。どうしようもないイベントである。

そして、一連の五輪で重要だったのが、「超民主主義」の誕生である。その発端は2015年の「東京五輪エンブレム騒動」に遡る。

当初発表された佐野研二郎氏が作ったエンブレムに対し、ベルギーのデザイナー、オリビエ・ドビ氏が「私のデザインをパクった」とネットで物言いをつけた。これを受けて佐野氏へのバッシングが開始し、ドビ氏のフェイスブックには「佐野は韓国人なので日本を悪く思わないでください」などと書くバカも登場した。

佐野氏の年収が5億円であるといった説のほか、佐野氏はこのエンブレムにより100億円をもらう、といったネットの書き込みも登場。結局、佐野氏は貧乏人による嫉妬により大炎上し、このエンブレムは撤回された

全てが「風」で決まる絶望的状況

これが実は「権威を引きずり落とす快感」につながったのでは、と私は考えている。前出の五輪関連の「呪い=騒動」についてはネットに書き込まれた意見が多分に影響している。森喜朗氏の更迭などその最たるものだろう。

鎌田ジャーナル0606

エンブレム騒動で「決定したものを覆す快感」を世論が持ってしまったところから色々おかしくなったのかな、と私は分析している。結局、今の日本は議論ではなく「風」ですべてが決まるという絶望的状況にあるのだ。その「風」が正しいかはさておき。ただし、白血病の手術から復帰した池江璃花子の五輪代表内定により、一気に興奮が高まり、突如としてテレビが五輪歓迎ムードになったのは「風」の変化といえようか。

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