麦は本棚に『ヤバい集中力』『東大院生が考えたスマートフォンFX』など即物的な本も置くべきだ
麦の家の本棚を見て、絹が「だいたい私の本棚じゃん」と喜ぶシーンがある。その本棚には私が持っている本もいくつかあったのだが、あまりにすべてがヴィレッジヴァンガード然とし過ぎていて信用できないと思った。私のように『人の心を操る技術』『東大院生が考えたスマートフォンFX』『カイジ』『ヤバい集中力』『ダンベル・トレーニングの基本がわかる!』などの本も置くべきだ。あと聴いていても必ずしも人から趣味がいいと言われないであろうバンド、たとえばトリプルファイヤーなども聴け。
しかし、そんな私も誰かに「カルチャー的な趣味に加え即物的なものへの好奇心も隠さない自分が好きなだけだろ」などと言われたら「まあ、そうっすね」と言うしかない。そういえば私も気の利いたひと言で「私、あなたみたいな人好きだわ〜」と魅力を見出されたいと思っていた。
後半になると、就職した麦がサブカル的趣味に次第に興味を失い、自己啓発本を読み始める。そういう人に嫌悪感を抱いたことは過去に何度もあるが、前半で描かれている麦よりは心が反発しなかったのは、人は自分と全然違う人間よりも、重なっている部分が多い人間のほうに差異を見出したくなってしまうからかもしれない。
最後のファミレスのシーンにグッときた
全体を通して身につまされる部分が多々ある。このような自分にとっての「あるある」が多い作品はシーンごとにはおもしろくとも、最終的に「で、結局なんなの?」と言いたくなってしまうことが多い。その点『花束みたいな恋をした』を観終わったあと素直に「おもしろかった」と思えたのは、最後のファミレスのシーン、麦が絹に恋愛や結婚の価値観を伝える場面に、普通に同意してグッときたからかもしれない。
作者は前半のサブカル趣味的な人間像を単純に肯定はしていないだろうし、100%否定もしないだろう。ただの悪ではない絶妙に癪に障る部分も、批判したいわけではなく、人間の業の一部として俯瞰している態度だと私は感じた。
音楽をやっている人間にしては特別映画に明るくないこの私が『花束みたいな恋をした』を集中力を切らさずに最後まで観られたのは、作品がおもしろいおかげか、それとも私の映画に対する耐性が昔よりはついたからかはまだよくわからない。とりあえずもう少しいろんな映画を観てみようと思った。まずは過去に3回TSUTAYAで借りたのに、まだ一度も観ていない『マトリックス』を観ようと思う。
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映画『花束みたいな恋をした』
2021年1月29日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか、全国公開
脚本:坂元裕二
監督:土井裕泰
出演:菅田将暉、有村架純、清原果耶、細田佳央太、オダギリジョー、戸田恵子、岩松了、小林薫
配給:東京テアトル、リトルモア
(c)2021『花束みたいな恋をした』製作委員会関連リンク
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