ドラフトは振り返って味わう時代。『野球太郎・ドラフト答え合わせ号』の謝罪力を評価する

2021.2.28
オグマサムネ

プロ野球開幕まで1カ月。書店の野球コーナーが選手名鑑で賑わう季節だ。データ重視か、寸評やエピソードの細かさ重視かで選ぶ名鑑も変わってくるだろうが、今年、画期的な切り口の「副読本」が登場した。『別冊野球太郎 <完全保存版>ドラフト答え合わせ1998-2020』。ドラフトは、ついに答え合わせをする時代になったのか。

エポックメイキングだった98年ドラフト

『別冊野球太郎 <完全保存版>ドラフト答え合わせ1998-2020』は野球雑誌の中でもかなりマニアックな部類、でおなじみ『野球太郎』の新シリーズ。1998年“松坂世代”から2020年まで、23年間のドラフトを総ざらいし、「指名当時のドラフト評価」と、「その後の結果(途中経過)」にどのような変化があったのかを総ざらいしよう、というものだ。

98年からの振り返りである理由は、『野球太郎』の前身雑誌である『野球小僧』が松坂世代のムーブメントを受けて創刊されたから。70年代、東海大相模のスター球児・原辰徳の存在が雑誌『輝け甲子園の星』を生み出したように、ひとりのスター、ひとつの世代が野球人気の趨勢を変えてしまう歴史的流れまで見えてきて非常に興味深い。

『野球小僧』創刊号/白夜書房

そして、この23年はまさに野球界にとって、ドラフト制度にとって激動の時代でもあったことが改めてよくわかる。球界再編あり。逆指名制度・自由獲得枠の撤廃あり。高校生ドラフトあり。そして、育成ドラフト制度の始まり……。観客を入れたショーアップ・ドラフトになったのも2009年からと、比較的最近の「改革」だった。

誰がいつ・どの球団に入ったのか、といった振り返りはもちろんのこと、上述した「変化」がドラフト指名にどのような影響を与えてきたのか。この四半世紀における野球界の大きなうねりまで感じ取れる一冊、と言っても過言ではない。

どこを切り取っても濃密過ぎる本書の中でも、やはり特筆すべきは98年だ。

「松坂世代」の球児たちは言うに及ばず。大学球界からは上原浩治(巨人1位)や二岡智宏(巨人2位)が、社会人からは福留孝介(中日1位)や岩瀬仁紀(中日2位)が入団。松坂を引き当てた西武と共に、巨人・中日の3球団は「振り返り採点」で100点満点を獲得。3球団も100点満点、という年は掲載23年間でほかにはない(そもそも100点満点がめったにない)。

本書では、ドラフトがその後のチームに与えた影響度で競う「チーム・オブ・ザ・イヤー」と、最も“結果”を残した「プレーヤー・オブ・ザ・イヤー」を選出しているのだが、98年はこの100点3チームからどの球団が「チーム・オブ・ザ・イヤー」を獲得し、誰が「プレーヤー・オブ・ザ・イヤー」に選ばれたのか? そして、98年以外の受賞チームと受賞選手は? 『野球太郎』編集部の見解と共に確かめてほしい。

「見る目がありませんでした」と詫びなければならない

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