2020年<ラジオ神回>5選。霜降り、メガネびいき、久米宏…「世の中が変わっても、ラジオは変わらない」(奥森皐月)



お菓子への異常な愛情(『爆笑問題カーボーイ』8月11日)

あまり深く考えずラジオを聴いていると、不意に笑わされることがある。その最たるものが8月11日放送の『爆笑問題カーボーイ』(TBSラジオ)だった。

この日はハライチがゲストで「お菓子王子決定戦」の第2回が開催された。田中(裕二)さんと岩井(勇気)さんのお菓子の趣向が対立したことが発端となった企画で、「誰が最もお菓子を愛しているか」を決める内容。文字にすると改めて笑える。小学校の話ではない、大の大人が真剣にお菓子愛を競うのだ。深夜ラジオとは思えないファンシーさがおもしろい。

「利きうまい棒」や「遠足に持っていくお菓子のプレゼン」などの種目で激戦が繰り広げられた。随所に現れる、田中さんの異常なお菓子愛と強烈なやる気には狂気を感じてしまう。

この放送のときに限り、太田さんはまともで普通の人になるし、田中さんはお菓子王子としての威厳を見せつけてくる。『ハライチのターン!』(TBSラジオ)と違い、窮地に立たされる岩井さんも、振り回される澤部さんも最高。

大人になってもこんなに無邪気でいられるのか、と明るい気持ちになれる大好きな放送だ。

全員のコント愛が爆発(『コント村のオールナイトニッポン0』9月22日)

今年一番「新しさ」を感じた番組は、9月22日放送『コント村のオールナイトニッポン0(ZERO)』(ニッポン放送)。

ゾフィー、ハナコ、ザ・マミィ、かが屋によるコントユニット「コント村」が担当した放送である。コントの猛者たちは、1時間半の本編で18本ものラジオコントを披露した。しかし、放送のために用意していたコント数は23本、当初作った数は53本だったという。放送が決定してからあまり時間もないなかで作ったというこの本数が、彼らのコント変態さを表している。

コント村メンバーに加え、作家のポテンシャル聡さんやオークラさんが書いたネタが混ざっていることも楽しめるポイントだった。ネタが数本流れるごとに、コントを解説するパートが入るのも新しい。

誰が書いたネタかを当てながら聴く、というコア過ぎる味わい方も推奨されていた。さすがに無理だと思ったが、聴いていくうちに誰のコントか判別できるようになったのが忘れられない。

トークパートがほとんどなく、矢継ぎ早にコントを流すスタイルの番組が今まであっただろうか。まるで曲紹介をするかのようにコントが始まる展開は新鮮。次第にリスナーから「トークはいいから、早くコントを出せ!」というメールが続々と届くようになる。

パーソナリティ、スタッフ、リスナーの全員がコント愛を爆発させており、ワクワクしながら聴ける放送であった。

緊急事態で知った「大切なこと」(『おぎやはぎのメガネびいき』)

今年はラジオ界でも多くの事件が起きていたが、その中でも『おぎやはぎのメガネびいき』(TBSラジオ)では緊急事態が何週間もつづいた。

トンツカタン森本とchelmico
おぎやはぎのいない『メガネびいき』に出た話(森本晋太郎)|おぎやはぎの代打として『メガネびいき』に出演した、トンツカタン森本晋太郎とchelmico

小木(博明)さんが偏頭痛の手術を受けるために休むことになった(通称へず休み)期間は、矢作(兼)さんと共にさまざまなゲストが訪れる展開。いつもと違う放送は、リスナーとしては高揚するものだ。

しかしその後、小木さんのがん発覚と矢作さんのコロナ陽性により、ついに「おぎやはぎのいない『おぎやはぎのメガネびいき』」が2週つづく。どの放送もそれぞれに個性があって楽しかったけれど、ようやくおぎやはぎのふたりが帰ってきた回は強く胸を打たれた。

他愛ない話をゆったりとするのも、ゴシップ話に花を咲かせるのも、すべてはラジオにおぎやはぎのふたりがいてのこと。当然のように毎週好きなラジオ番組を聴いているけれど、それは本当に特別で幸運なことなのだと気づかされた。

メガネびいきに訪れた緊急事態が、大切なことを教えてくれたと思っている。

魂の叫びと“ラジオ文化の継承”に立ち会った番組


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