性教育ドラマ『17.3』に撃ち抜かれる。アセクシャルって何?新時代の性常識に取り残されるな
「人と違うのが変? 変って誰が決めるの?」新時代の性教育ドラマ『17.3 about a sex』が攻めている、今なら配信中の7話で追いつける。ドラマを愛するライター大山くまおの緊急報告。
「17.3」は「初体験」の世界平均年齢
今、日本での性教育のあり方が問われている。
もともと日本の小中学校では性行為や避妊はほとんど扱われていない。「性教育はセックスについて教えるもの」という誤解がはびこり、性教育そのものを否定する人たちもいる。一方で、性に関する情報は氾濫し、望まない妊娠や性被害、性暴力の問題はあとを絶たない。足立区議の発言に代表されるような性的マイノリティに対する差別や偏見も根強い。
そんななか、注目を集めているのがAbemaTVで配信中のオリジナルドラマ『17.3 about a sex』だ。タイトルの「17.3」は「初体験」の世界平均年齢のこと。ありていに言ってしまえば、女子高生たちを主役にした「性教育ドラマ」である。
とはいえ、性教育の名をかたってセクシャルな話題や場面で目を惹こうとする内容ではなく、真正面から現在の若者が抱える性の問題に取り組んでいる。それでいて堅苦しさはなく、エンタテインメントとしてしっかり楽しめるのがポイント。
なんでそんなに男子に合わせるの?
主人公の女子高生3人組を演じるのは、雑誌『Seventeen』専属モデルで女優の永瀬莉子、田鍋梨々花、秋田汐梨。彼女たちの学生生活を通じて、恋愛とセックスに揺れるリアルな心情を描く。データに基づく正しい知識とフラットな視線、ポジティブな態度が特徴だ。
第1話では、ピュアな主人公の清野咲良(永瀬)が、初体験を焦った挙げ句、同級生の恋人に誘われて部屋を訪れるが、ひたすら身体を求めてくる男への拒否感で部屋から飛び出してしまう。すると翌日、学校で身体についての噂を広められ、さらに男が仲間たちと「ヤレるかヤレないか」を賭けていたことが露見する。最低だ。
悔しさで涙を流す咲良に「あいつらバカだよね」と声をかけるのが生物部の朝日悠(水沢林太郎)。「あいつらのセックスの知識ってAVからしか来てないし、あの中に出てくるのって男が都合よく作り上げた女性像に過ぎないからね」とさらっと言ってのける。「でも、女子も、なんでそんなに男子に合わせるの?」という問いかけも忘れない。
女子とのセックスを賭けの対象にして喜んでいる男子たちが古い男の価値観に縛られているのに対して、朝日の発言はとても今っぽい。ホモソーシャルな笑いに対する「お笑い第七世代」のような感覚かも。咲良は初体験を焦っていた自分を恥じ、性について学んでいこうと決心したところで第1話は終わる。
第2話ではアセクシャル(無性愛)の原紬(田鍋)にスポットが当たる。幼なじみから告白されてデートするが、帰り道にキスされると嘔吐してしまう紬。同級生たちと異なり、恋愛にもセックスにも興味が持てない自分をつまらない人間だと悩む紬だったが、ジェンダー学に詳しい生物学教師・城山奈緒(ソニン)の「人と違うのが変? 変って誰が決めるの?」というアドバイスで心を落ち着かせる。