コンビニおでんから考えるデフレ脱却(中川淳一郎)

2020.1.22
nakagawajunichiro

ネットニュース編集者の第一人者として『ウェブはバカと暇人のもの』などの著書を多数持つ中川淳一郎。ネットで話題のニュースを編集し続ける彼が、最新のネットニュースから私たちの生活を考える。
第1回は、コンビニのおでん、時短営業などで2019年末話題になった「もの言うオーナー」騒動から読み解く、デフレ脱却の鍵とネットの「風」。


コンビニおでんの常識を覆すファミマの新おでん

一部のファミリーマートが電子レンジで温めるおでんパックと、おでん鍋を併設して販売するようになっているが、これに対する理解の声がネットでは多い。元々コンビニおでんは「ホコリが入るのでは?」「レジ脇に置いてあるからツバが入るのでは」といった衛生面での懸念があった。さらには、「おでんツンツン男」がネット上にその様を動画投稿したり、店員がアツアツおでんを口にして悶え苦しむ様を周囲の同僚が笑う動画なども投稿された。

コンビニおでんはダイエットにもいいし、おいしい、といった評価はあったものの、客から見た場合の衛生面と、店員からすれば同じ種類のおでん種をきれいに並べる、客の注文を聞き、一つひとつ取ってあげて汁の量を加減する、などの手間が問題視されていた。しかもあの巨大な鍋を洗浄しなくてはならないうえに、廃棄処分にする量も多かったという。

今回ファミリーマートでは、つゆと共に袋に入った「4個入り」か「6個入り」を容器に移し、電子レンジで加熱する形となったが、これで明らかに手間は減ることになっただろうしフードロスも減らせる。4個入り(税抜249円)は「大根」「ちくわ」「こんにゃく」「さつま揚」で、6個入り(税抜332円)はこれに「昆布」と「たけのこ」が加わる。

電子レンジ加熱の際の爆発を懸念しラインナップから外された「玉子」や、「牛すじ」「ロールキャベツ」「厚揚げ」もないことは個人的には残念だが、今回の判断は妥当なものだろう。

ファミマのおでん「6個入り」 大根、ちくわ、こんにゃく、さつま揚、昆布、たけのこ

お客様は神様ではない

ここ数年、日本の「お客様は神様です」的サービスがやり過ぎだったことを認め、もっと簡略化するかカネをもっと払うべきである、といった論調にネット上ではなりつつあるように感じられる。

だからこそロイヤルホストが2018年元日の営業を中止すると発表したときは拍手喝采だった。2018年末に中華そばチェーンの幸楽苑が、2018年12月31日と2019年1月1日に営業をしないことを宣言する新聞広告で「2億円事件」と表現したが、意味はこの2日間の休業で2億円の機会損失があるということ。これがメディアに取り上げられ、「従業員に優しい」「英断」とSNSで話題となり営業再開後は売り上げが激増したという。

あとは同性カップルが仲良くしている様がイヤだとスーパーの「お客様の声」的な投書をした人物に対し「あなたは客ではないのでもう来なくていい」といったことをビシッと書いた店が称賛された。食べログにあることないことを書く客に対して「食べログやくざは来ないでくれ」といったことを書いた九州料理の店も同様だ。いずれも「客だからって不当な意見を主張したり、営業妨害したら許さねーぞ!」という強い意志を感じる。

こうした背景があったからこそ、ファミリーマートのおでんへの取り組みも一定の評価が得られたのだろう。それは、24時間営業に異議を唱えたコンビニオーナーへの応援の声が出たことにも表れる。

次ページ「なんらかの主張を政治活動に転換させた途端」につづく

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中川淳一郎

(なかがわ・じゅんいちろう)ネットニュース編集者。1973年東京都出身。1997年博報堂入社、CC局(現PR戦略局)配属。2001年退社。以後無職、ライター、雑誌編集者などを経て現在はウェブメディア中心の編集者に。ひたすらネット上の珍騒動や事件を毎日テキストファイルに記録する生活を長年つづけている。

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