「ミソジニー野郎」とカリスマ編集者を妖怪が一刀両断
第2話に登場するのは、澪に仕事をチラつかせつつ就活セクハラで肉体関係を求めるカリスマ編集者・宗像公介(蕨野友也)。「こうすけ」ってどこかで聞いた名前だな。
所帯持ちのくせに多くの女性を泣かせてきた彼の悪事を調べ上げたぬらりひょんは、「要するに、宗像はパワハラ、セクハラの権化。ミソジニーこじらせ野郎」と一刀両断。妖怪が「ミソジニー」なんて言うのがおもしろい。
さらに『番町皿屋敷』のお菊(佐津川愛美)が登場(かつては皿が足りなくて折檻されたが、今は在庫管理のエキスパート)。許嫁がいたお菊は殿様や家来からセクハラを受けつづけて鬱となり、井戸に身を投げた過去を持っていた。最後は本性を丸出しにして澪に迫ってきた宗像に、澪と妖怪たちが皿を投げつけて制裁を加える。「権力持つなら人格磨け!」という座敷童子の叫びがリアル。
ほかにも、婚活詐欺師を成敗したり、後妻業の女が悪事を暴かれたりと、澪と妖怪たちが大活躍する。令和の大スター、アマビエ(片桐仁)が登場してSNSでのバズの功罪を考えるエピソードなんてのもあった。アマビエを実写化したのはこれが史上初なんじゃないだろうか。普段は凛々しい神主だが、妖怪たちにこき使われている水岡譲(フジテレビ『教場』でキムタクに反抗する訓練生役を好演した味方良介)もいい味を出している。
「アップデートされてる感」がちゃんとあるドラマ
とはいえ、あくまでも澪が編集プロダクションで働きながら自立しようとするお話が本筋。編プロの社長、原島(大東駿介)に恋心を抱く澪を手助けしようと、超ポジティブなファッションアドバイザー、ヤマンバギャルの山姥(長井短)もやってくる。
ずっとギャル語を言っているのに突然、「ガチなのは、結果じゃなくて、積み重ねた自信だよ。人生の支えになる日がきっと来るから!」などと澪を励ます山姥(通称「やまちょす」)は視聴者から熱い支持を得た。
山姥のサポートを得て、初めて食事に出かけた澪だが、原島が既婚者であり、妻に離婚を切り出されていると打ち明けられると、「原島さん、本当にそれでいいんですか? 人と人が出会って結ばれるって奇跡なのに」とピシャリと言い切る。うーん、ちゃんとしてる。それでいて、最後はメインキャスト全員がヤマンバメイクになってパラパラを踊ったりする。
なんだか「アップデートされてる感」がちゃんとある『妖怪シェアハウス』。脚本は『ケイゾク』『SPEC』(共にTBS)などの西荻弓絵。監督は高橋一生主演のカルトドラマ『怪奇大家族』(テレビ東京)の豊島圭介と『おっさんずラブ』や『女子高生の無駄づかい』などのテレ朝夜11時台のドラマを支える山本大輔。妖怪たちの過去を描くために使われる「ゲキメーション」(一枚絵や切り絵を動かす表現方法。映画『燃える仏像人間』の宇治茶監督が担当)も楽しい。
「人情長屋」ならぬ「妖怪長屋」の面々は、みんな大人で、優しくて、常識があって、距離感がほどよくて、すごいスキルもあって、それでいて楽しいから、何もかも失って自己主張も自立もできなかった澪は、彼らと一緒に過ごしながら笑顔で成長していく。そうそう、ごはんがおいしそうなのも忘れちゃいけない。
妖怪たちが登場する設定だけでなく、こんなに行き届いていて、ちゃんとしている人たち(妖怪だけど)が集う場所が日本にあること自体がファンタジーなのかもしれないが、そんなことは言いっこなし。未見の人はぜひ一度ご賞味を。
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