【正統派】『エンド・オブ・ライフ』「命の閉じ方」にまつわるノンフィクション

「在宅での終末医療」をテーマに、訪問診療のチームに長く密着し、そのチームのひとりが癌で余命宣告されてからの日々の過ごし方を中心に、これまで一緒に看取った人々のエピソードや、自らの父が母に施していた献身的な介護など、「命の閉じ方」にまつわる話を紡いでいく。非常にまっとうなノンフィクションらしいノンフィクションで、題材も内容もよく、ぐっとくる場面も多々あるのだが、賞レースとなるとほかの作品の個性が強過ぎてちょっと霞んでしまっている印象がある。いや、この本単体で見れば本当にいい本なのだが……。
個人的な感想になってしまうが、自分自身が今病気もしておらず、家族の介護もしておらず、この問題をそれほど身近に感じていない、というのもあるかもしれない。この本を必要としている人にとっては、きっとかけがえのない本になるだろう。
【場外乱闘】『サガレン』歴史的に曖昧な場所を、列車で旅する

そしてこの本である。まったくほかの5冊と違い過ぎて、どう読んでいいのか戸惑ってしまう。いや、そんなことを考えず、こちらもこの本はこの本として読めばいいだけなのだが……。
サガレンとは樺太ともサハリンとも呼ばれる、北海道の上に位置する島である。「うーん……あんまり興味ないな」というのが読む前の率直な感想。正直、この賞にノミネートされていなければ手に取らなかった本だと思う。
ジャンルとしては紀行文である。たしかにサガレンは北方領土や満州以上に歴史的に曖昧な立ち位置の場所であり、そのような地を夜行列車で北上するというのはちょっとおもしろそうではある。著者の興味が向いているのは主に鉄道、歴史、宮沢賢治であり、3つ共にそこまで興味がない自分にとっては、唯一興味がある「旅」の部分をおかずに(?)読み進めていくことになる。
著者は本好きの間では密かに注目されている書き手であり、文章は心地よく、サガレンの地に魅せられ思考の羽を広げていく描写はとても素敵なのだが、自分の力不足ゆえ後半のメインとなる宮沢賢治愛に全然ついていけていない。読むべき人が読めばきっと素晴らしい本だろう。だがそれは自分ではないと感じた。
しかし負け惜しみではないが、たまにはこんなふうに自分向けではない本を読むこともおもしろい。これも「賞」がもたらしてくれる貴重な読書体験である。
さて、全作品をざっと紹介したが、これはあくまでも私個人の感想に過ぎず、読む人によって感想もまったく異なるものになるだろう。大賞作品の発表は11月、公式サイトはこちら。
もし気になった本があればぜひ書店で手に取ってみてほしい。
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